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「枕草子」と清少納言のイメージが一変、神回にSNS号泣【光る君へ】

  • 2024.5.30
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平安時代の長編小説『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマでの名前はまひろ)の人生を、吉高由里子主演で描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。5月26日放送の第21回「旅立ち」では、まひろが清少納言の『枕草子』誕生の、大きなきっかけを作ることに。あの有名な冒頭文に込められた悲しくも崇高な思いに、涙する視聴者が続出した(以下、ネタバレあり)。

定子(高畑充希)のために文章を書き始める清少納言(ファーストサマーウイカ)(C)NHK

■ 生きる気力を失っていた定子だったが…

遠流を拒んで逃走した藤原伊周(三浦翔平)は結局捕縛され、大宰府に流された。さらに、一条天皇(塩野瑛久)の中宮でありながら出家した、伊周の妹・定子(高畑充希)が住まう二条第が火災に遭う。生きる気力を失い、炎のなかで死ぬ覚悟をした定子だったが、ききょう(清少納言/ファーストサマーウイカ)の「お腹のお子のため、お生きにならねばなりませぬ」という説得で生きながらえた。

「お腹のお子のため、お生きにならねばなりませぬ」と、定子(高畑充希)を説得する清少納言(ファーストサマーウイカ)(C)NHK

ききょうはまひろの元を訪れ、定子を元気づける方法を相談する。まひろは、かつて天皇と定子に献上された高価な紙が、結局はききょうに譲られたという話を思い出し、その紙に定子のための文章を書くよう提案。ききょうは四季折々の風景を記して、寝たきりの定子の枕元に置くようになる。やがて定子は起き上がってその文章を読むほどに回復し、ききょうはひそかに喜びの涙を流すのだった。

起き上がって清少納言(ファーストサマーウイカ)が書いた文章を読む定子(高畑充希) (C)NHK

■ まひろの提案にするとは…いろんな学説や考察を集約

数多くの人が「春はあけぼの」と言われれば、反射的に「夏は夜」と続けることができるほど、日本人の心に深く刻み込まれている『枕草子』の第一段。とはいえ、この日本一有名なエッセイ集は、どういう目的で書かれたのか? 話題にまとまりがないのはなぜなのか? 美しい思い出話の時間軸がバラバラなのはどういうことか? など、今も解けない疑問があふれている。この第21回は、それらの謎を一部回収しただけでなく、これから『枕草子』を涙なくしては読めなくなる創作秘話まで盛り込んでしまった。

定子(高畑充希)のために清少納言(ファーストサマーウイカ)が書いた『枕草子』の第一段 (C)NHK

『枕草子』の名前の由来は、実は諸説分かれているのだけど、今回ききょうがまひろに語った「定子様に『この紙に天皇は「史記」を写したけど、私はどうしましょう?』と聞かれて『枕にしちゃいましょう』と答えたら、その紙をもらえた」という、『枕草子』にも記されているやり取りが元ネタというのが有力視されている。

『光る君へ』はその説を採用したわけだけど、その意味が「史記物(敷き物)に並べるなら枕(ことば)」という、非常にハイセンスなダジャレだったことを、まひろの口から解説させるというのは、さり気なくも上手いやり方だった。

定子のためになにか文章を書くよう、ききょう(ファーストサマーウイカ)に提案するまひろ(吉高由里子)(C)NHK

さらにその次にまひろが提案した「『史記(しき)』に対抗して『四季(しき)』について書けば?」というのも、清少納言が定子にそう答えたという説がある。つまり、まひろが『枕草子』誕生のきっかけになったという今回の流れは、本作執筆にまつわるいろんな学説や考察を集約して、まひろに一本化して発信させた・・・という形なのだ。

ここ最近は父・為時(岸谷五朗)の出世に一役買うなど、絶好調ターン継続状態のまひろだが、ここでも主人公無双を発揮するとは。しかしそれが無理なく、ごく自然な展開に見えたのは、ききょうとの「才女同士でしか築けない絆」を、折に触れて丁寧に見せてきたおかげだろう。

■ もう1人の「光る君」の物語、枕草子誕生の背景に涙

そうして執筆が開始された『枕草子』。これは前回のコラムでも書いたが、これまでほとんどの人が『枕草子』を「清少納言がリア充な日常+自分の感性と知性の高さを、自慢とユーモアを交えて書いたエッセイ」と解釈してきただろう。

しかし実際は、定子の後宮は嫌がらせが頻発して結構な地獄だったし、ステキな公達が集まるサロンも長くは続かなかった。その真実を嫌と言うほど見せつけたからこそ、『枕草子』は失意のどん底にある中宮を励ますための、渾身のラブレターだった・・・という、この解釈が最大限に生きることになった。

起き上がって自分が書いた文章を読む定子(高畑充希) に驚く清少納言(ファーストサマーウイカ)(C)NHK

寝込むほど絶望している推しに、「世界はこんなにも美しいんだから死なないで!」という一心で文章を綴りつづけ、それを読んだ推しがついに元気を取り戻す・・・。特に「強火担」と言えるほどの推しがいるオタクにとっては、起き上がった定子の姿を見て涙する清少納言に、もらい泣きするほどの共感を覚えたのではないだろうか。実際SNSも「『春はあけぼの』にこれほど泣かされるとは」「美しきシスターフッドに涙」などの号泣状態となっていた。

起き上がった定子(高畑充希)の姿を見て涙する清少納言(ききょう/ファーストサマーウイカ)(C)NHK

史実のなかに、ほんの短いフィクションを挟み込むことで、視聴者の歴史認識をガラリと変化させることができるのが大河ドラマの醍醐味だけど、この『枕草子』爆誕のエピソードも、清少納言と『枕草子』のイメージを大きく揺るがしたのは間違いないだろう。

「かつて光輝いていたあの人」に捧げた、もう1人の「光る君」の物語は、間違いなく中盤のヤマ場と言える神回だった。そして、このシーンのためにむちゃくちゃ書道の特訓をしたというファーストサマーウイカには、特にお疲れ様の言葉を捧げたいと思う。

『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。6月2日放送の第22回『越前の出会い』では、まひろと為時が宋(中国)人たちとふれあいながら越前生活を送っていく姿と、定子の懐妊を知った一条天皇の反応が描かれる。

文/吉永美和子

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