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セフレの「フレ」の部分すらない… マッチングアプリのリアルを描く共感必至の実録マンガ

  • 2024.5.30
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現代では、一般的な男女の出会い方として受け入れられつつあるマッチングアプリ。しかし、マッチングアプリの利用者の中には、真剣な交際ではなく「性行為」だけを目的としている人も存在する。

『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみたヤバい結果日記』(松本千秋/幻冬舎)では、38歳の女性がマッチングアプリでさまざまな男性と出会った日々が描かれている。本作は、性行為を主目的として利用されることもあるマッチングアプリのリアルを知ることができる作品だ。自分に価値がないと感じている人や、寂しさを埋めるためにマッチングアプリを利用している人には特におすすめしたい。

主人公のチアキは、38歳のバツイチ独身女性。友人の死をきっかけに、寂しさが振り切れてマッチングアプリを再開する。そのアプリは、婚活や恋活などさまざまな用途がある中でも割り切った関係の性行為を主目的として利用する人が多いことが特徴だった。

チアキのマッチングアプリエピソードの中で特に印象的なのは、18人目に出会ったファッションモデルの「先生」だ。先生は欲に忠実。モデルができるほどスタイルも顔も整っているが、女性の扱いはとにかく淡泊である。さっきまで性的なことをしていたイケメンに「名前なんて覚えても仕方ないもんね」といわれる気持ちを想像してみてほしい。精一杯の強がりで、全く気にしていないフリをしながら「そうだよね」と返事をしてしまいそうになる。

先生との関係は続き、セフレのフレ抜き「セ」になっていく。「セ」だけの関係に価値はあるのかと思いながらも、寂しさを埋めるために肌を重ねるしかない、なんとも虚しい関係性。チアキが感じる心の空白がそのまま自分の心に移ってしまうほど共感できるのが本作の魅力といえる。

チアキが出会った人の中でも、とびきりの虚しさを教えてくれるのが17人目に出会ったSEの男性だ。1度目のデートでは、Wブッキングのために1時間だけで解散していた。そうして迎えた2度目のデート。本当なら外で会うはずだったのに、体調を崩したといって突然家に呼び出されてしまう。

体調不良などもちろん嘘で、自宅で性行為しようと誘ってくるのだ。「分かった! とりあえず俺ら付き合お!?」という17人目の男性。性行為をするためなら、その一瞬だけでも付き合おうとする。

性行為に同意させるためだけの「付き合おう」は完全な「嘘」であることを証明するかのように、男性は行為後のチアキを放置する。まるで道具のように女性を扱い、目的を果たした後はもう用なしだといわんばかりの態度なのだ。思わず家を飛び出したチアキは、散歩中の犬と自分を比較し「大切にされて生きてなさ過ぎだわ」と気づく。肌を重ねる瞬間は寂しさを埋められるかもしれないが、終わった後の心の穴はますます大きくなってしまうのだ。

本作は、マッチングアプリの体験談だけではなく、チアキというひとりの女性の心の内面まで描かれた作品だ。マッチングアプリを再開する前は、友人の死もあり「自分に存在価値はない」と感じていたチアキ。しかし、アプリで出会った男性とのエピソードをSNSで発信したことがきっかけでマンガ家になることが決まり、その感情が変わっていく。作家として作品を作っていく中で仲間やファンをはじめとした「かまってくれる人」が増え、次第に寂しさを感じなくなっていく。

「生きるの趣味なんで」という男性に対し「あたしもソレ趣味にしようかな」と返すチアキ。寂しさを埋めるために知らない男性と性行為していた彼女の変化に安堵する。マッチングアプリを再開したころのチアキと同じように心にぽっかり穴が空いている人にこそ、ぜひ本作を読んでほしい。

文=ネゴト/ 押入れの人

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