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あなたに足りていない感覚は? ストレスや不安を乗り越えるための“首尾一貫感覚”とは

  • 2024.5.30

落ち込んだり、イライラしたりすると、ストレスフルになり、自己肯定感が下がる。そんな時に役立つのが“首尾一貫感覚”。

仕事がうまくいかなかったり、人間関係に悩んだり…。特にこの時期は、環境の変化によりストレスを溜め込みがちになる。落ち込んだ時であっても自分らしくいられるようストレスや不安を乗り越える感覚を身につけておきたい。「そのために“首尾一貫感覚”を知り、自分軸を作ると、周りに振り回されることなく積極的に行動できるようになります」と、ストレスマネジメント専門家の舟木彩乃さんは話す。

「首尾一貫感覚は、別名『ストレス対処力』とも呼ばれ、ストレスが高い状況にあっても、それにうまく対処して、心の健やかさを保てる力のこと。この力が高いと過酷な状況に直面しても、それを自分の経験や成長に変えることができ、困難に立ち向かうモチベーションも高まります。すると人生全体を俯瞰してみた時に辻褄合わせがうまくできるようになり、自己肯定感も高まり、どんなことがあってもしなやかに生きられるようになるのです」

首尾一貫感覚は把握可能感、処理可能感、有意味感の3つの感覚からなる。

「まずは今の自分にいちばん足りていない感覚がどれかチェックし、その感覚を高めるワークを中心に取り組みましょう。3つの感覚は、お互いを補完し合うように繋がっているので、他のワークも併せてやってみてください」

首尾一貫感覚は後天的に磨かれるものなので、今からでもどんどん高められる。今後の人生を自分軸で歩んでいくために身につけよう。

首尾一貫感覚(しゅびいっかんかんかく/Sence of Coherence)

つらい出来事を自分の成長と人生の糧に変える力。
首尾一貫は、統一性、全体感という意味。首尾一貫感覚が高いと、壁に直面した時も傷つきながらも乗り越えていけるので、浮き沈みがあっても腑に落ちると思える人生にすることができる。

首尾一貫感覚はこの3つの感覚で養われます。

【把握可能感】自分の置かれている状況をだいたいわかったと思える。
自分の身に起きていることは、だいたい「想定の範囲内」、あるいは、ある程度予測できると思える感覚。

【処理可能感】ストレスや課題に対してなんとかなると思える。
自分に降りかかるストレスや障害に対処できると思う感覚。自分の持つ仲間や武器を活用することでなんとかなると思うことができる。

【有意味感】人生や自分に起こることはどんなことにも意味がある。
目の前に大きな困難があっても「これを乗り越えたら、私は成長できる」と意味あるものとして捉えることができる感覚。

CHECK! あなたに足りていない感覚はどれでしょう?

下記のA~Fの質問に対して、最も当てはまるものの数字にをつけてください。
※下記の質問は、首尾一貫感覚が具体的にどのようなものかイメージしてもらうために、本来の質問項目を減らし、適宜改変したものです。

【A】これまでに、よく知っていると思っていた人の「思わぬ行動」に驚かされたことがありますか?
1…全くなかった、2…ほとんどなかった、3…時々あった、4…よくあった、5…いつもそうだった

【B】これまでに「自分はダメな人間だ」と感じたことはありますか?
1…全くなかった、2…ほとんどなかった、3…時々あった、4…よくあった、5…いつもそうだった

【C】毎日していることを、つらく退屈だと感じますか?
1…全く感じない、2…ほとんど感じない、3…時々感じる、4…しばしば感じる、5…とてもよく感じる

【D】不慣れな状況にいると感じ、どうすればよいかわからない、と感じることがありますか?
1…全くない、2…ほとんどない、3…時々ある、4…しばしばある、5…とてもよくある

【E】あてにしていた人にがっかりさせられたことがありますか?
1…全くなかった、2…ほとんどなかった、3…時々あった、4…しばしばあった、5…いつもそうだった

【F】自分の周りに起こっていることがどうでもいい、という気持ちになることがありますか?
1…全くない、2…ほとんどない、3…時々ある、4…しばしばある、5…とてもよくある

各設問の数字を下記のように足して、合計点を出してください。合計点が高いほど、あなたはその感覚が弱いと思われます。目安として、7点以上の感覚は弱い、5点以下の感覚は強いといえます。

A+D=点 把握可能感が弱い…

B+E=点 処理可能感が弱い…

C+F=点 有意味感が弱い…

把握可能感を高める

今まで体験したことのない出来事に遭遇すると、何から手をつけていいのかわからなくなる。しかしそんな時、自分の置かれている状況をある程度理解し、今後の展開をだいたい予測できるようになると、混乱したり、悩んだりすることが減る。それが把握可能感。

「把握可能感を高めるには、少し広い視野を持つことが大切です。そのために自分がどんな価値観や考えを持っているのかを知ることが必要。なかには『~でなければならない』というマイルールに縛られて、柔軟な考え方ができなくなっている場合も。思考のクセを知れば、違う考え方や捉え方ができるようになります。また、ざっくり予測できるまで準備をすれば、目の前のことに振り回されることも少なくなるでしょう」

処理可能感を高める

イレギュラーなことが起こると、自分の中で対処できずに脳がフリーズして、パニック状態に陥りがち。それはできない部分にばかりフォーカスして、できることから目を背けているから。しかし逆を言えば、今の自分にできる部分にフォーカスすれば、「なんとかなる」と思えて乗り越えられる。それが処理可能感。しかしこの感覚がいちばん低い人が多いそう。

「それは相手の要求に完璧に応えなければいけないという、完璧主義の思考が根付いている人が多いからです。私たちは大小の差はあれ、今まで培ってきた人脈、知力、経験、お金、権力、地位といった資源を持っています。それをうまく活用して引き出していければ『こんなものか』『想定内だ』とアバウトに考えられるようになり、余裕が生まれ、どんな問題も乗り越えられるようになります」

有意味感を高める

最悪な事態に陥った時、「どうして私だけこんな目に遭わないといけないの?」と思ってしまいがち。しかし、自分に起こることは全て意味のある経験で、これを乗り越えた先に自分の成長があると意味づけできる人は強い。それが有意味感。3つの感覚の中でもこの有意味感が首尾一貫感覚のベースとなっている。

「たとえば災害や病気など、全く見通しが立たない状況に立たされた場合、高い把握可能感・処理可能感を持ち続けるのは難しい。しかし、そんな状況でも目の前の想定外の困難を意味があるものと捉え、有意味感を持つことができれば、前向きに生きられるようになります。その有意味感を高めるには、全てのことに何らかの意味があると思えるようになることと、自分は価値ある人間だと認めてあげることが必要不可欠です」

舟木彩乃さん ストレスマネジメント専門家、公認心理師。メンタルシンクタンク副社長。著書に『「なんとかなる」と思えるレッスン 首尾一貫感覚で心に余裕をつくる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

※『anan』2024年6月5日号より。イラスト・kame 取材、文・鈴木恵美

(by anan編集部)

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