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【内田彩仍さん連載:明日もいい日になりますように】 「第17回 辛いときは空を見上げて」

  • 2024.5.31
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丁寧な暮らしぶりやセンス溢れる素敵な着こなしで人気を集める内田彩仍さん。日々のなかで内田さんが見つけた小さな幸せや、暮らしの工夫をお届けします。新緑の季節。この1か月は内田さんにとって辛い期間でもあったそうですが、少しずつ穏やかな日常に戻りつつあるようです。「明日もいい日になりそう」と、皆さまが穏やかに前を向けますように。

内田彩仍さん Profile

福岡県在住。夫と愛猫そらと暮らす。雑誌などで紹介される丁寧でセンスのある暮らしぶりが人気。 『内田彩仍さんと作った 白のキャンバストートバッグBOOK』(宝島社)、『幸せな心持ち』(主婦と生活社)など著書多数。 新刊『変えること変わらないこと: 人生後半を機嫌よく過ごせるよう見直した毎日の暮らし』(主婦と生活社)が発売中。

春から夏へと変わりゆくこの頃。皆さまいかがお過ごしでしょうか。
私が住む福岡でも、爽やかな五月晴れの日が多かったのですが、この5月は、私にとって人生で最大に痛かった月でした。

例年なら、5月前半に夫と2、3日一緒に休めるので、どこに出かけようかと考えたり、衣替えや、初夏の庭の手入れをスケジュールに組み込んだり。仕事でも梅雨前にできる撮影は終わらせておこうと、カメラマンさんと予定を合わせて撮影したり。もう20年ほどこんな感じで過ごしていたのですが、今年は全く違いました。

5月に入って早々、2月に足の指を骨折した右足ではなく、左足が熱を持って浮腫んで痛くなりました。その日のうちに病院へ行ったのですが、以前足を悪くしたときに入院していた大学病院を勧められて、その日に予約をとったところ、連休明けの予約になりました。

痛みに強いので、勝手に大丈夫だろうとゆったり構えていたら、日に日に痛みが増して、激痛で足を床に着くこともできなくなり、ちょうど夫が休みだった5日に、車で救急病院に行くことに。
歩けず車椅子で移動しつつ診てもらったら、脚に何らかの菌が入って腫れる蜂窩織炎らしく、結構腫れているので「敗血症になると大変だから入院したほうがいい」とのこと。
それでも、「このまま私が入院したら、入院準備はどうする?」「寂しがりやの愛猫そらは大丈夫だろうか」と、あれこれ余計なことを考えてしまい、「今よりも赤みが上に上がってきたらすぐに病院に来る」という約束を先生として、痛み止めと抗生剤をもらって帰宅することにしました。

そうしたのには理由があって。私は、アトピーだったり、皮膚が荒れやすかったりして、菌に弱いらしく、以前に一度、長年訪れたかった温泉宿に行ったときにもなったことがありました。そのときには薬を飲んで2、3日もしたら治ったから、休み明けに大学病院に行くから、もし入院するなら自分で入院準備を整えて、通い慣れたところで入院をと、思いました。

それでも、あまりの痛みに這って移動するような状態で、一人でいるとちょっと不安になることも。何かをはいて移動した方が楽だから、トイレに行くのにも「あのスリッパまでどうやって移動しよう」とか、「薬を飲むために昼ごはんはどうやって食べよう」とか。日常生活もままならない状態に、我ながら手を焼きました。

連休明けに大学病院へ行き、薬の量を増やしてもらい引き続き自宅療養することに。
足を挙上(きょじょう)して冷やしつつ、早く治すには安静第一なので寝て過ごしながらも、痛みや腫れは全く引かず、歩けないし、足も地に着けないままの毎日。
そんななかでもこの状態に慣れてきたのか、痛いからほかのことが考えられないのか、窓から見える若葉が日差しを受けて眩いばかりの美しさに、「綺麗だなあ」と思ったり、気分転換にリビングで横になりながら、2階の窓から風にそよぐ青葉を眺めて癒やされたり。「ここに越してきて本当によかった」と何度も実感して、同時に救われた気持ちにもなりました。
辛いときでも、美しいものに心動かされる。人間って逞しいなあと思います。

そんな状態が20日ほど続いて、少し歩けるようになってきた頃、ふと掃除していなかったことに気づき、簡単に掃除をしました。夫が時折、床を拭いてくれていたので、そんなに汚れていなかったのか、あまりの痛さに全く気になっていませんでした。
毎日掃除をするのが当たり前で、掃除すると気持ちが整うと日々思っていたから、やらなくて済んでいたことに自分でも驚き。家事は健康だからできるものだと心得ました。

とはいえ、食事はそうともいかず。出来合いのものに一週間ほどで飽きてしまい、仕方がないので、椅子2脚を連ねて足を挙上して、夕食の支度を。毎日食べているサラダは夫に任せて、私は冷凍野菜に頼りつつ、カレーや野菜炒め、焼きうどんなどの簡単にできるものを作ることに。足は痛くてもお腹は空くから、「食べることは生きること」本当にそう思います。

この5月、残念だったのが楽しみにしていた東京出張に行けなかったこと。いくつか予定も立てていたので本当に申し訳なくて、仕事先や会う約束をしていた方にご連絡して素直に病状をお話ししたら、皆さん快くご理解くださり、ホッとしました。
東京で行うはずだった撮影も、今週自宅でさせてもらい、無事終えました。
この1か月、いつもそばにいて支えてくれた夫と、病院の皆さま、あたたかく見守ってくださった方々には、感謝しかありません。ありがとうございます。
今は、椅子に座りオットマンに足を上げて冷やしながら、パソコン作業ができるようになりました。やっぱり健康が第一ですね。皆さまもどうぞお健やかな毎日をお送りくださいませ。
私が寝ながら眺めていた、新緑の画像ととともに、
皆さまも私も明日もいい日になりますように。

photograph: Kyoko Omori text: Ayano Uchida
※ 画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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