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棚橋弘至が『ライド・オン』で共感した、父と娘の関係性。もしジャッキー・チェンとリングで対決するなら?

  • 2024.5.29
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5月31日(金)よりジャッキー・チェンの映画人生の集大成ともいえる『ライド・オン』がついに日本公開となる。本作でジャッキーが演じるのは、自身の人生を反映させた老スタントマン。疎遠となっていた娘との絆と、共に暮らしてきた愛馬とのやり取りを描いた作品となっている。

【写真を見る】尊すぎる笑顔…棚橋弘至、ジャッキー・チェンとの貴重なツーショット

そんな本作の公開に合わせて、プロレス界随一のジャッキーファンを自認する、新日本プロレスの社長にして現役プロレスラーの棚橋弘至が、ファントークという名のリングに登場!ベテランの域に入ったプロレスラー生活のなかで、重なる部分が多かったという本作の感想から、「もしジャッキーとリングで対決するなら?」という夢の対戦シミュレーションまで、ジャッキーへの熱い想いを目一杯語ってもらった。

「ジャッキーの“いま”の全力を見せてくれているところが非常に尊い」

棚橋弘至がジャッキー・チェンの魅力を語りまくる! 撮影/興梠真穂
棚橋弘至がジャッキー・チェンの魅力を語りまくる! 撮影/興梠真穂

――最初に『ライド・オン』をご覧になっての率直な感想をお願いします。

棚橋「まずは、ジャッキーが元気でうれしかったです!昔に比べると、公開されるジャッキー映画の本数も少なくなったということもあって、観る機会も減っていたんですが、久しぶりに映画で活躍される姿を見たらとてもお元気で。『あ、ジャッキーだ!』という安心感がありましたね」

――これまでのジャッキー映画とはまた違った味わいがある映画でもありますね。

棚橋「ベテランの妙を見ましたね。疎遠になってしまった娘さんとの物語であり、愛馬との物語でもありながら、そこにジャッキーの往年のアクションやスタントという要素がミックスされていて。『上手いな』と思いました。僕もプロレスラーとして若いころは、力やスピード、勢いで行けていた部分も多々ありましたが、ケガの影響や年齢を重ねた最近だと、キャリアを積んだからこそ可能なテクニックやそのほかの巻き込み要素で試合に臨むことも増えました。今回の映画では、70歳を迎えたジャッキーの“いま”の全力を見せてくれているところが非常に尊い。自分と同じようなキャリアを重ねたからこその妙技を見せてもらえた感じもありました」

今年で70歳となったジャッキー。アクションのキレは健在! [c]2023 BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO., LTD.,BEIJING HAIRUN PICRURES CO.,LTD.
今年で70歳となったジャッキー。アクションのキレは健在! [c]2023 BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO., LTD.,BEIJING HAIRUN PICRURES CO.,LTD.

――そこには、演技派としてのジャッキーの印象もあるかもしれませんね。

棚橋「そうですね。本作の『娘の幼少期から仕事ばかりで、家族に無関心だった』というシチュエーションは、僕自身にも当てはまる部分があって。僕はいま、大学に通う20歳と18歳の子どもがいるんですが、小さくて育児がたいへんだったころ、家族に迷惑をかけていた自負があるんです。当時は僕の年齢が30歳前後で、新日本プロレスのチャンピオンとして、試合とプロモーションで全国を回っていて、ほとんど家にいなかったんです。だから、子どもたちとの距離感の難しさというのはとても共感しました。

いまは、子どもたちも大人になって、僕の仕事を理解してくれているんですが、映画でもそうした父と娘の関係性が描かれていたんですよね。その描写から、僕自身、希望を持つことができましたし、また再び『ジャッキーのようになりたい』と思わせてくれる内容になっていました。あと、僕も子どものころには、カッコよくユニークに戦う姿を観て『ジャッキーになりたい』って思っていたんですが、この歳になって『ライド・オン』を観て、違う意味で『ジャッキーのようになりたい』って思いましたね」

一人娘と愛馬とのドラマが描かれるのも特徴的な『ライド・オン』 [c]2023 BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO., LTD.,BEIJING HAIRUN PICRURES CO.,LTD.
一人娘と愛馬とのドラマが描かれるのも特徴的な『ライド・オン』 [c]2023 BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO., LTD.,BEIJING HAIRUN PICRURES CO.,LTD.

「弱い部分や情けない部分に『頑張れ!』って応援が集まる」

――アクションシーンに関してはどのような感想を持たれましたか?

棚橋「アクションシーンもよかったですね。特にロッキングチェアを使って相手を倒すシーンがあったので、こういう日常のなかに置いてあるものを工夫して戦うのがジャッキー映画の醍醐味だなと改めて感じました。そういう”ジャッキーイズム“を観ることができてよかったです。それから、ジャッキー映画恒例のエンドロールでNG集が流れるのもしっかりと踏襲されていましたね。昔のジャッキー映画だと、スタントなしで危険なアクションをやって、そこで大ケガをしたシーンなんかもエンドロールで流れたりして。『こんなにも身体を張って映画を撮ってくれたんだ』という感謝の念もありながら、『こんな大ケガをして大丈夫なのか?』って心配することも多かったです。でも、今回はそんな危険なスタントはあまりない作品だったので、エンドロールは安心して観ることができました」

愛馬、チートゥとのコンビで迫力のスタントを繰り広げる [c]2023 BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO., LTD.,BEIJING HAIRUN PICRURES CO.,LTD.
愛馬、チートゥとのコンビで迫力のスタントを繰り広げる [c]2023 BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO., LTD.,BEIJING HAIRUN PICRURES CO.,LTD.

――ほかに劇中で気になったところはありましたか?

棚橋「ジャッキーがあえてやっていると思うんですが、衰えた部分を見せる勇気が印象的でした。僕らプロレスラーは、常に虚勢を張っていたい、強い部分だけを見せたいと思ってしまうんです。でも、ジャッキーは強い部分だけじゃなく、弱い部分を見せることができる心の強さがあるなと。プロレスラーも若いうちは強く、カッコよくありたいという気持ちが先行するんですが、それだと観ている側はあまり感情移入できないんですよね。むしろ弱い部分や情けない部分に『頑張れ!』って応援が集まる。ジャッキーもそういった部分は理解していて、この映画を観ていると感情移入しちゃうんですよね」

――どんなシーンで、そうしたジャッキーの機微を感じられましたか?

棚橋「愛馬に乗ってジャンプするスタントを演じる場面で、走馬灯のように若いころを思い出して、スローモーションで突っ込んで止まるシーンですね。あれは実際だと数秒の出来事ですが、僕も同じように思うことがあるんです。例えば、試合中に若いころにできたことができなくなっていることに気づく時ですね。膝が曲がらないとか、トップロープを飛び越えたらフラついたとか。そこは重なるところがありました。さらに、CGを使わないことに誇りに思っていたジャッキーが、あの決断をする瞬間は、映画のなかのハイライトシーンでもあるなと思いました」

“新しいものを受け入れる”ことに学びがあったと語る 撮影/興梠真穂
“新しいものを受け入れる”ことに学びがあったと語る 撮影/興梠真穂

――変わらないといけない部分があるし、受け入れないといけない部分もあるということですよね。

棚橋「変わるのは怖いんですよ。そこにかつての成功体験があるから。それはプロレスもほかのことも一緒です。成功体験を否定して新しいものを作るのは、キャリアを重ねれば重ねるほど難しくなってくる。でも、ジャッキーが70歳にして新しいものを受け入れるというね。もう本当にいろんな年齢、男女を問わずに変わらずエネルギーをくれる人だなと思いました」

「カッコいいと可愛いが同居するのは、僕とジャッキーの共通項です(笑)」

笑顔でピースがとってもキュート! 撮影/興梠真穂
笑顔でピースがとってもキュート! 撮影/興梠真穂

――棚橋さんのジャッキーとの出会いはどれくらいのタイミングですか?

棚橋「子どものころに『ドランクモンキー 酔拳』や『スネーキーモンキー 蛇拳』を観たのが出会いですね。僕は、ブルース・リーを観ていなくて歴史上の人物という感じなので、カンフー映画は完全にジャッキー世代です。だから、好きな映画も初期の拳法もので、最初は敵にコテンパンにやられるけど、独特の風貌の師匠に特訓してもらって、強くなってリベンジするという王道パターンが好きですね。ジャッキー映画を見続けるなかで印象に残ったのは、ハリウッドへの進出作になる『レッド・ブロンクス』ですかね。香港ですでに成功しているけど、ハリウッドに向かうチャレンジ精神は見習いたいです」

――棚橋さんは俳優として映画などにも出演されていますが、役者という立場から見たジャッキーの魅力はどこにあると思いますか?

棚橋「やっぱり、表情の豊かさです。喜怒哀楽の表情がすてきで、カッコいいシーン、怒っているシーン、『ライド・オン』だと娘と理解し合えないせつない表情とか、人を惹き付ける魅力があると思います。もちろん、ジャッキーらしい屈託のない笑顔も好きです。あと、カッコいいと可愛いが同居する表情ができる人は強いですね。ここは僕とジャッキーの共通項でもあると思っています(笑)。齢70でそれができるというのは、まだまだ希望を貰えます。

“ジャッキーイズム”の魅力という点では、見ている人に楽しんで貰おうという心意気も惹かれますね。自分のためだったら無茶はできないけど、誰かのため、映画を楽しみにしてくれる人がいるからこそ自分のリミッターを外せる。プロレスも自分のためだったら『ここでギブアップかな、3カウントかな』と諦めるかもしれないけど、会場が盛り上がっていて、声援が聞こえると息が上がっていてもまだ動けてしまう。そういう人のために頑張るエネルギーは、もしかしたらジャッキーの映画から学んだのかもしれないです」

ジャッキー映画からは頑張るエネルギーがもらえる [c]2023 BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO., LTD.,BEIJING HAIRUN PICRURES CO.,LTD.
ジャッキー映画からは頑張るエネルギーがもらえる [c]2023 BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO., LTD.,BEIJING HAIRUN PICRURES CO.,LTD.

「グラウンドでコツコツ有利なポジションを取りながら、打撃や関節技で攻める…」

――そんなジャッキーと俳優・棚橋弘至として共演するとなれば、どんな役をやってみたいですか?

棚橋「ジャッキーとのタッグチームがいいですね。刑事の凸凹コンビもので、ジャッキーはすごくできる刑事で、一緒に悪の組織を壊滅させるんだけど、僕はいつも足手まとい。ジャッキーと一緒に鍛えたりして、バキバキの武闘派でいきたいけど、僕はついつい食べちゃって、どんどん太っていって、コンビ解消みたいになってしまって。でも、最後にジャッキーが悪の組織と一人で戦うことになって、ジャッキーのピンチにバキバキに仕上がった僕が現れる…みたいな(笑)」

ジャッキー×棚橋弘至の凸凹コンビは観たすぎる…(『ラッシュアワー3』) [c]EVERETT/AFLO
ジャッキー×棚橋弘至の凸凹コンビは観たすぎる…(『ラッシュアワー3』) [c]EVERETT/AFLO

――それは、なかなか見応えがある刑事コメディ映画になりますね。一方で、夢の対決的な話になりますが、ジャッキーとプロレスのリングで対戦するとなったら、どんな戦い方をしたいですか?

棚橋「ジャッキーはタフだし、動きも早くて打撃もある。そうなると、組み付いて密着して、グラウンドでコツコツ有利なポジションを取りながら、打撃や関節技で攻める…というのは、現実的な戦い方過ぎますね(笑)。でも、ジャッキーとプロレスをするなら、やっぱりジャッキーのいいところを引き出したいです。ロープ際の攻防とか上手そうですよね。そうしたいい部分を見せてから、至近距離からスリングブレイドを決めて動きを止めて、トップロープからハイフライフローで決める感じですかね。でも、膝を立てて避けられそうだな〜」

ジャッキーとの対戦シミュレーションを語ってくれた 撮影/興梠真穂
ジャッキーとの対戦シミュレーションを語ってくれた 撮影/興梠真穂

――ジャッキーは状況判断が上手そうですからね。

棚橋「うちのヒールユニットが試合中にテーブルとかイスを出して攻撃してくるんですが、ジャッキーだったらそれを奪ってどう戦うのか見てみたいですね。きっとジャッキーだったら最大限に魅力的にイスや机を使うんでしょうね。うーん、わかりました!僕が、ジャッキーの要素を新日本プロレスのリングに持ち込んで、リングで華麗に戦ってみます(笑)。今後、急に酔拳を始めたりするかもなので、『ジャッキーが来た、ジャッキーが棚橋に降りてきている!』って実況してほしいです(笑)」

「ジャッキーと一緒に写真を撮れたのは、孫の代まで自慢できますね」

――プロレス好きになったことと、ジャッキー好きなところでの共通点はありますか?

棚橋「僕がプロレスを好きになったきっかけというのは、『そこまでする?』という激しさとか『この攻撃を受けてもまだフォールを返すのか』という、僕らの想像をちょっとずつ超えて行く試合の見せ方に惹かれたんです。ジャッキー映画も『それはムリでしょ?』という観客が想定しているイメージを更新し続けるところに魅力があった。そこは共通しているところではありますね。そこでジャッキーがすごいのは、映画の作品が増えるたびにみんなの免疫がついていくのに、それでも新しいアイデアを届けてくれる。常に想像を超え続けたとろこがジャッキーの一番の偉大なところだと思いますね」

【写真を見る】尊すぎる笑顔…棚橋弘至、ジャッキー・チェンとの貴重なツーショット 写真は棚橋弘至オフィシャルブログ「棚橋弘至のHIGH-FLY」より
【写真を見る】尊すぎる笑顔…棚橋弘至、ジャッキー・チェンとの貴重なツーショット 写真は棚橋弘至オフィシャルブログ「棚橋弘至のHIGH-FLY」より

――そんなジャッキーとのツーショット写真を、棚橋さんのブログに以前アップされていました。実際にお会いした際のエピソードを教えてください。

棚橋「10年くらい前なんですが、実は詳細を覚えていなくて…(苦笑)。お会いしてすごくうれしくてテンションが上がって、ツーショット写真を撮らせていただいたという記憶しかないんですよ。ただ一緒に写真を撮れたのは、孫の代まで自慢できますね。握手もしてもらったんですが、屈託のない笑顔が印象的ながら、握力が強かった記憶があります。握手って、熱量エネルギーの交換だと思っているんですが、ジャッキーもそういうのを理解されているなと思いました。最高の思い出です」

『ライド・オン』は5月31日(金)より公開! [c]2023 BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO., LTD.,BEIJING HAIRUN PICRURES CO.,LTD.
『ライド・オン』は5月31日(金)より公開! [c]2023 BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO., LTD.,BEIJING HAIRUN PICRURES CO.,LTD.

――では最後に、映画を楽しみにしているジャッキーファンの同志にメッセージをお願いします。

棚橋「この映画は、昔からジャッキーを知っている方は当然ながら楽しむことができますが、僕はいまの若い子たちにも観てほしいと思います。ぜひ、ちょっと興味のある人がいたら、誘って観に行ってほしいですね。劇中で、ジャッキーはいつものジャッキーでいてくれる安心感がありました。この映画を観て、皆さんもジャッキーから満タンのエネルギーを貰っていただければと思います」

取材・文/石井誠

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