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これでは小学校から私立に通うのと同じ…「塾と家庭教師に月40万円」中学受験"課金沼"にハマった母親の悲鳴

  • 2024.5.29
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中学受験にはお金がかかる。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「受験勉強は長期間に及ぶケースが多く、最後は何が何でも受かりたいと熱くなってしまいがちだ。塾や家庭教師に月40万円を使っている家庭もあった。受験に使えるお金はあらかじめ別口座に移しておき、予算内で挑戦することを親子で話し合ったほうがいい」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんの元に寄せられた相談内容を基に、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

電卓を操作する女性
※写真はイメージです
塾代と家庭教師代で月40~50万円の家庭も

お金のプロとして仕事をしている私ですが、子どもの中学受験で、まさかの“課金沼”にハマってしまいました。周囲を見ても、「こんなに塾代を払ってるなら、小学校から私立に行っても同じだったのでは?」というケースが散見されています。

今回は、自戒を込めて、中学受験にかかるお金と、受験に向く家庭の傾向をお伝えいたします。

中学受験をテーマにした『二月の勝者-絶対合格の教室-』という作品がありますが、私の周りではまさに“リアル二月の勝者”が繰り広げられており、某有名私立中学1本で挑んだ佐藤家(仮名)では、6年生の1年間、有名塾と家庭教師をそれぞれ週5回で追い込みをかけ、月40~50万円を投じていました。

結論から申し上げると、佐藤家は第1志望にして唯一の志望校であった難関校に合格。見事に苦労が実ったわけですが、佐藤家のようなS級クラスではない中堅校を狙っていたご家庭も、最終盤でなんとかわが子を押し上げたいと、塾や家庭教師に月40万を使っていました。

追い込みの塾代に宿泊費用、面接の服まで課金…

私自身、1月の追い込み時期は、「志望校そっくり模試5本勝負」なる対策コースに7万円をバーンと課金。予定していなかった費用でしたが、その時は、子どもの頑張りに応えたい一心で……。ママ友の一人は、1時間5000円で教えてもらっていた家庭教師から、受験のプロと言われる1時間3万円の先生に変えたことで、子どもの成績が飛躍的にアップ。「背に腹は代えられない」と苦笑いで話していました。

そしていざ本番になると、塾や家庭教師代以外にもさまざまな費用が発生することもわかりました。まず、受験会場に前乗りするための宿泊費。通学範囲が広くなる中学受験では、志望校が他県であることは珍しくありません。1、2月の受験シーズンは天候・交通・体調といった面で不安要素が多いため、万全を期すべく、受験生を持つ各家庭が会場近くのホテルに前泊して試験当日に備えるのです。

加えて受験直前には、「ファストファッションブランドで面接に行くと落ちる」「体操服袋は百均NG」といった“お受験情報”が飛び交い、デパートの高級ブランドで家族分の“お受験ルック”を買い求めるご家庭も多数でした。

親の世帯年収は600万円以上が約7割

文部科学省の調査では、私立中学に通う子どもを持つ親の世帯年収は600万円以上が約7割を占めており、平均より世帯年収が高い傾向があります。(東証マネ部!「私立中学に通わせる親の年収はいくら?」2023年7月20日)

先程の佐藤家も世帯年収1000万円超でしたが、途中からお母さんが子どもにつきっきりとなったことで片働きとなり、世帯年収は700万円台に。もはや、「怖くていくら受験に使ったか確認したくない」と話しています。また、夫の年収が400万円、妻が300万円という別の知り合いのご家庭は貯金を切り崩して受験戦争に挑んでいて、平均より世帯年収が高くとも、その内実はさまざまです。

ではここで、実際に中学校・高校で私立を選んだ場合の学費を見てみましょう。文部科学省の調査によると、学費の総額は、私立中学3年間で約430万、私立高校3年間で約316万となっており、6年間で約750万円となっています。ちなみに、私立小学校の学費は6年間で約1000万円でした(文部科学省「令和3年度子供の学習費調査」2022年12月21日)。

子供の人形と硬貨の入ったビン
※写真はイメージです
小学校から私立の場合と費用面の差はほとんどない

月40~50万円を塾代などに充てると、小学6年生の1年間だけで500~600万円程度の支出となります。難関校を目指す場合、小学3年生頃から塾に通い出す子が多く、「怖くて確認できない」と言っていた佐藤家の場合、中学受験トータルで700~800万円かかっていると見ていいでしょう。さらに佐藤家では、中学入学後は東大を目指す名門塾に入るということだったので、大学受験に向けてもまた“課金”が生じそうです。

仮に中1から高2年までの塾代を月3万円、ラストスパートの高校3年時には年間100万円とすると、6年間で約300万円。そこに、中学受験費用800万円と私立中高の学費をプラスすると、大学入学までにかかる教育資金は1850万円になります。

一方、小学校受験をして高校までエスカレーター式の私学に通った場合、学費はトータルで約1750万円。ここに塾代は含まれていませんが、小学校から私立に通った場合と、ハードな受験を経て私立中学に入った場合では、費用面における差はほとんどなくなっています。

受験費用を”見える化”しておくことが大切

さて。では一体どんな家庭が「受験向き」と言えるのでしょう? たしかに佐藤家は世帯年収も高く、子どもも第1志望に合格し、目標を達成できたことに違いはないですが、その陰では、お母さんが仕事を辞め、夫婦の老後資金が削られています。合格後は塾代だけでなく、裕福な周りの友人との交際費がかさむ可能性もありますし、きょうだいがいるご家庭なら、下の子どもたちに我慢を強いかねません。また、個人的にはどうかと思うのですが、子どもに“投資”することで、将来の出世を見返りとして期待している親御さんの話も聞きます。自分の老後を子どもに背負わせるとは、まるで“見えない奨学金”のように思えます。

緑の自然を背景にシニア夫婦の人形と積み上げられた硬貨、豚の貯金箱
※写真はイメージです

私が子どもの中学受験を体験して痛感したのは、受験費用を“見える化”しておく大切さです。ママ友の中に、2月1日の試験開始からなかなか合格が出なかったことで、受験校を際限なく増やし続けたご家庭がありました。1週間、午前・午後と受験し続けた結果、受験料だけで30万円もかかった、と嘆いていました。

受験用のお金は別口座に移し、その範囲内で挑戦をする

私も最終模試では課金をしてしまいましたが、受験校については事前に子どもと綿密に話し合い、「この学校がダメだったら第2志望のあそこは受けるけど、そこがダメならチャレンジは終了」と、線引きしていたおかげで、受験料は予算内に収めることができました。つまり、親子で受験費用を「見える化」していたと言えます。

受験勉強は長期間に及ぶケースが多く、かけた時間や努力の蓄積から、最後は何が何でも受かりたいと、親子で熱くなってしまいがち。そこに歯止めをかけるための具体的な方策が、「見える化」です。月5万円でも年間100万円でもいいので、あらかじめ受験に使えるお金を別口座に移し、その範囲内でどんな挑戦ができるか、ぜひ親子で話し合うことをおすすめします。

お金を積めば積んだだけ成果が出やすいのはたしかで、子どもの頑張りに応えたい親は無理をしがちです。しかし、その負担が結局子どもの将来にのしかかってしまったり、他のきょうだいに影響を及ぼすようでは、本末転倒。

「受験向き」の家庭か否かは、世帯年収の高さではなく、受験に使えるお金を把握し、その中で頑張る体制を家族で作れるかどうか、ではないでしょうか。互いに自立し、幸せに暮らし続けられる家計の視点を忘れることなく、受験に挑んでほしいと思います。

高山 一恵(たかやま・かずえ)
Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士
慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演・執筆活動・相談業務を行い女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。著書は『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)、『やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)など多数。FP Cafe運営者。

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