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人生の充実度は生きがいで決まる? 母の思い出を共有した三姉妹と九吾(齋藤潤) 『9ボーダー』6話

  • 2024.5.29

19歳・29歳・39歳。節目の年齢を目前にした三姉妹が「LOVE」「LIFE」「LIMIT」の「3L」について悩み、葛藤し、それぞれの答えを見つける過程を描くヒューマンラブストーリー『9ボーダー』(TBS系)。第6話では、行方不明だった大庭家の父が帰ってきて……?

明かされた“謎の少年”の正体

行方不明だった大庭家の父・五郎(高橋克実)が帰ってきた。一度、おおば湯の様子をうかがっていた“謎の少年”も一緒だ。彼の名は品川九吾(齋藤潤)で、多くの視聴者も予想したと思うが、三姉妹の弟だった。

自由奔放な五郎に愛想を尽かして出ていった母は、長野の実家に移ったあとに妊娠に気づき、九吾を出産。おそらく祖母・母・九吾の三人暮らしだったのだろう。九吾の話によると、心臓を悪くしたという母は三年前に他界している。そして最近、祖母も亡くなったそうだ。

六月(木南晴夏)、七苗(川口春奈)、八海(畑芽育)の大庭家三姉妹にとっては、まさに寝耳に水の話だろう。母が出ていった当時、自分だけ海外へ飛んだ六月や、母から「一緒に来るか」と問われ断った七苗に比べると、物心のついていなかった八海にとっては、とくに青天の霹靂(へきれき)だったはず。

しかし、九吾にとってはどうか。

彼にとっての家族は、祖母であり、母だった。たとえ、どこかに血のつながった父や姉たちがいると知っていたとしても、九吾にとっては、祖母や母の助けにはなってくれなかった存在だ。母を亡くした彼にとって「誰の世話にもならない」と頑なになる理由としては、十分に思える。

それでもきっと、七苗たちから誕生日を祝ってもらった瞬間の嬉しさは、本物だった。八海と三日違いだとわかった九吾の誕生日は、彼が望む・望まないに関わらず、大庭家のさまざまな記念日のうちに組み込まれるのだろう。

今後は大庭家と関わりながら生きていくのか、それとも、一人で生きていく道を選ぶのか。九吾がどんな答えを出すのかはわからないが、それは彼にとって、そして大庭家の面々にとっても「これからの生き方を問う」きっかけになるに違いない。

六月が見いだすセルフハッピーな生き方

離婚してバツイチとなった六月は、身軽だ。まるで憑(つ)いていた幽霊が祓われたかのように、表情もどこかスッキリとしているように見える。それにはきっと、職場の部下・松嶋朔(井之脇海)の存在が関係しているのだろう。

客観的、主観的に見ても、二人が惹かれ合っているのは確実。しかし六月は、あえて自らをセーブしている。これ以上は前に進まないように、と。

その理由は、相手が職場の部下である以上に、「また誰かに期待して、裏切られるのがつらい」から。

バツイチとなり、重たい荷物を下ろせた開放感と拭いきれない寂しさから、一定の距離を置くことができているのは朔のおかげだ。だからこそ、また自分以外の誰かに寄りかかるのが怖い。また代え難い存在をつくって、仮に離れざるを得なくなったとしたら、再び心が耐え切れるかどうかは未知数。

前にも進めなければ、後ろにも引きにくい六月が見出したのは「セルフハッピー宣言」。「私はセルフで幸せになる!」と、一人の足で立ち、自分で自分を満たす道を選ぼうとしている。

晩婚化が進み、生涯未婚率も上昇している世の中で、結婚は絶対的な幸せの象徴ではなくなりつつあるようだ。まだまだ結婚制度そのものの存在感は根強いが、一人で過ごす楽しさを感受している層も厚いと感じる。

最終的に六月がどんな答えを出すかはわからないが、誰かとともに生きる人生も、一人を満喫する暮らしも、自分が納得してさえいれば幸せに値する、と堂々とした態度を貫いてほしい。

離れて暮らした母は救われていた?

大庭家を出ていったあと、実家で九吾を産み、働き通しで苦労した母の心境はいかなるものだったのか。三姉妹は、川の字で床につきながら、三年前に亡くなった彼女の思いを想像する。

三姉妹にとって、母は長らく、どこで何をしているかもわからない存在だった。人知れず弟の九吾を産み育てていたことを知り、六月は「お母さん、生きがいみたいなものができたんじゃないかな?」「そう思うと、ちょっと救われない?」と口にする。

母は、幸せだったのか。九吾の存在は生きがいになっていたのか。生きがいがあったことで、救われていたのか。

本当のところはわからない。父の話や、九吾の口にする思い出から、はかることしかできない。それでも、九吾は言っていた。「朝、太陽に向かって、こうやって拝む。みんな元気でありますように、って」と、母の癖について触れていた。そんな母の姿は、七苗にとっても馴染みのあるものだった。

母の思い出を共有できたことは、三姉妹と弟を、家族に近づけていくだろう。今すぐとは言わずとも、いつかは“四姉弟”になれるはず。

母にとっての生きがいは、九吾だけじゃない。遠く離れて暮らすことになってしまった三姉妹も、彼女の人生を充実させる生きがいに違いなかったはずだから。

■北村有のプロフィール
ライター。映画、ドラマのレビュー記事を中心に、役者や監督インタビューなども手がける。休日は映画館かお笑いライブ鑑賞に費やす。

■モコのプロフィール
イラストレーター。ドラマ、俳優さんのファンアートを中心に描いています。 ふだんは商業イラストレーターとして雑誌、web媒体等の仕事をしています。

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