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「開けちゃいけない気がする」誤配送で届いた怪しげな荷物。仕組んだのは夫の不倫相手でした―― 衝撃の不倫サスペンス『気がつけば地獄』

  • 2024.5.28
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不倫が発覚した場合、すべての家庭が離婚を選ぶわけではない。なかには、夫婦間の話し合いで解決する場合もあるかもしれない。子どもを理由に離婚をしないと決断する家庭もあれば、経済的な理由からそのままの関係を維持する家庭もあるだろう。不倫に目をつむって作り笑顔で家庭を維持する方がマシだと思う人もいるかもしれない。

『気がつけば地獄』(岡部えつ:原作、ゆむい:漫画/KADOKAWA)は、夫の不倫に気づきながらも離婚を選択しなかった“サレ妻”中屋紗衣の物語だ。

紗衣は夫・祐一に秘密で、5万4000円する美顔器を注文した。しかし、祐一の不倫相手・夏希の策略により、同じマンションの別の部屋の荷物を届けられてしまう。きれいになりたい一心で買った高額な美顔器が届かず、お金だけを失うショックは計り知れない。これだけの値段の荷物なら、簡単に諦められないに決まっている。そんな悲しみをTwitter(現X)で匿名の主婦「サニー」として発信したことにより、夏希の匿名アカウント「ナナ」と関わりはじめる。

夏希はSNSを使って紗衣に接触する。SNSの匿名アカウントで本妻に近づくとは、なんとも恐ろしい。そう思いつつも、不倫相手の本妻を監視して優位性を感じ、心を満たそうとする健気さは、思わず抱き締めたくなってくるほどだ。こんなことに労力を使って妻と自分を比べて傷つく必要なんてないくらい、あなたは可愛いし大切にされるべきなんだよと伝えたい。

夏希が誤配送した荷物にはどうやらヤバい物が入っていたようで、「円満」なはずの紗衣の日常を脅かしはじめた。単なる誤配送からはじまった出来事は、怪しい送り主や警察、マンションの管理会社を巻き込み、大きなうねりになっていく。想像を超えたスリリングな展開にハラハラさせられ、思わず「不倫」を忘れてしまうほど。そんな荷物の謎を紗衣と夏希が協力して解決しようとする展開は、主人公と敵が強大な敵に力を合わせて立ち向かう映画を見ているような気持ちになる。

本作のエピソードの中で最高なのは荷物の謎を通して、良い妻を演じていた紗衣が押し殺してきた自分の本当の気持ちに気づくことだ。幸せな家族であるために祐一の不倫もモラハラも我慢して演じ続けてきた良い家庭から解放され、「本来の自分」を取り戻していく。紗衣が解放されるシーンから、周りからの「幸せそう」という評価は自分の幸せにはつながらないのだと次元を超えて教えてもらえる。自分を本当に大切にできるのは自分だけだし、自分が幸せでないと周りも幸せにはできないのだ。

離婚するだけが不倫の結末ではない。さまざまな考え方があり、きっと何を選んでも正解ではないのだろうと思わされる。モラハラを受ける多くの人は、紗衣のように自分を抑圧してしまっているだろう。しかし、周りの誰のことも愛していないようなモラハラ人間のために、感情を抑える必要はない。夏希のように愛されていると信じて不倫をしている女性にも「どちらを傷つけてもかまわないと思っているような男と一緒になって本当に幸せになれるのか」と声を大にして伝えたい。『気がつけば地獄』を読んで「自分と同じだ」と感じた人は、どうか1度自分の心と向き合ってみてほしい。

文=ネゴト/ 押入れの人

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