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映画『E.T.』徹底考察&評価レビュー(1)スティーブン・スピルバーグによる画期的な宇宙人の描き方とは? 演出の魅力

  • 2024.5.28
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監督のスティーブン・スピルバーグ【Getty Images】
スティーブン・スピルバーグ監督

『ジョーズ』(1975)の巨大ザメ、『ジュラシック・パーク』(1993)の恐竜、そして『未知との遭遇』(1977)のUFOと、スピルバーグはこれまでヒトとヒト以外の生物との「ファーストコンタクト」を描き続けてきた。そういう意味では、この『E.T.』は彼のフィルモグラフィのひとつの到達点といえるかもしれない。

本作は孤独な少年と謎のエイリアンとの心の交流を描いた作品。脚本はハリソン・フォードの妻として知られるメリッサ・マシスンで、主人公のエリオットを『レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い』(1994)のヘンリー・トーマスが演じる。

1982年に公開されるや世界中で大旋風を巻き起こした本作。公開時は、アメリカ国内で映画史上最大となる3億ドルの興行収入を記録し、世界歴代興行収入も『スター・ウォーズ』(1977)の記録を更新。日本国内でも、『もののけ姫』(1997)に抜かれるまで15年間に渡り最高配給収入記録を保持し続けた。

作品に対する評価も高く、第55回アカデミー賞では、作曲賞、視覚効果賞、音響賞、音響編集賞の4部門を受賞。1994年には「文化的、歴史的、美学的に重要な作品」として米国議会図書館のアメリカ国立フィルム登録簿に登録されており、「史上最高の映画」の一つと謳われている。

本作はなぜそれほどまでに評価の高い作品となったのか。それは、ひとえに宇宙人を「共生できる存在」として描いていることに尽きるだろう。

H.G.ウェルズのSF小説『宇宙戦争』(1898)以来、人類は、宇宙人を恐怖をもたらす未知の存在として描かれてきた。本作の脚本も、当初はグレムリンのような地球外生命体がとある農場を侵略するというもので、実際に起きた事件(ケリー・ホプキンスビル事件)がもとになっていた。

しかし、スピルバーグは宇宙人の描き方が排他的であるとして、脚本のアイデアのほとんどを廃棄。「仲間から疎外された宇宙人が地球人の少年と友達になる」という展開のみを残して大幅にリライトしたという。

本作に登場するエイリアンE.T.はお世辞にも見目麗しいとは言えない。特に、シワの入った顔つきや長く痩せ細った指はどちらかというとグロテスクで、ゆるキャラのような「かわいい」モンスターとは一線を画している。

しかし、エリオットは、そんなE.T.に対してあくまで「友達」として接し、心の交流を図ろうとする。そして、最後には仲間たちと力を合わせ、E.T.を捕縛しようとする大人たちから彼を守るために奮闘するのだ。

私たちが歩み寄ればどんな相手とでも仲良くなれるー。本作は、大人たちが忘れてしまった大切なことを、改めて思い起こさせてくれる作品なのだ。

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