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「絵本って、本当にできる人じゃないと作っちゃダメっていう意識があって」。ヨシタケシンスケさんと柴田ケイコさんが対談!

  • 2024.5.29
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kodomoe6月号では、最新の第16回MOE絵本屋さん大賞2023でともに第1位&第2位、絵本界のトップランナーのおふたり、ヨシタケシンスケさんと柴田ケイコさんが初対談! 貴重なお互いの作品の魅力を熱く語っています。
kodomoe webでは、本誌に掲載されなかった、おふたりの絵本の作り方についての話をご紹介します!

本当にできる人じゃないと、絵本を作っちゃダメっていう意識がありました

ヨシタケ 以前、柴田さんのインタビュー記事で読んだのですが、自分のお子さんにいろんな絵本を読んでいたことが、後の絵本づくりにすごく役に立ったと。

柴田 そうですね。「子育てで、自分ができることってなんだろう?」って考えたときに、外でボール遊びとかはできないけど、イラストレーターだったので「あ、絵本の読み聞かせぐらいだったらできる」と思ったんですよ。寝る前に読んだらすぐ寝てくれるっていうのもあって(笑)。それでずうっと読んで、その蓄積で絵本づくりがなんとかできた感じです。

ヨシタケ 柴田さんの本は、絵本としての大事な部分、要所を全部押さえている完成度があって、そこに個性というか、けれん味みたいなものも入ってる。その基礎体力みたいなものをすごく感じます。とても絵本らしい体裁になっていることが、僕にはすごく憧れというか。
でも、前からずっと絵本を目指していたわけではない?

柴田 全然やってないです。ヨシタケさんと同じようにイラストレーターで、そもそも絵本って、本当にできる人じゃないと作っちゃダメっていう意識があって。

ヨシタケ そうそう。僕もすごくそれがありました。今でもあるんですけど(笑)。

自分が「楽しい」って思える方向に

ヨシタケ 僕は最初、絵本ができるとも思ってなかったし、絵本作家になれるとも思ってなかったんです。でもいくつか絵本を作って、ある程度経験ができてくると、「じゃあ、あれをやっても大丈夫なんじゃないか」って。自分の子どもたちが大きくなる中で、また別のテーマが自ずと出てくるし。「あ、こういうこともできるんじゃないのかな?」っていう可能性は、どんどん増えてきますよね。

柴田 うんうん、そうですねえ。でも、その時々でちょうどいい問題を拾い上げてるっていうのが、ヨシタケさんだなあと思って。

ヨシタケ 僕は今なら、子どもが巣立っていくとか、自分が年をとっていくとか、そうした方向に目が向いていますね。

柴田 私も結構、自分が「楽しい」って思える方向に集中してやっている感じですね。

ヨシタケ 結局、自分が楽しみながらやらないと。ちゃんとテンションが上がってるかどうかって、すごく大事だから。

柴田 そうですね。「自分の描きたいものって、一体なんだろう?」って自問自答して。自分は今、何に興味があって、何がやってて楽しくって、何を描けば自分らしくて、みたいな。やっぱりそこに行っちゃいますよね、ベクトルが。「子どもが喜ぶためにはどう描けばいいか」って意識しすぎて、視野が狭くなったり、路線が違っちゃうと面白くないので。

基本的にはエゴサーチとかしないです(笑)

柴田 ヨシタケさんはたくさんの本を出されていて、その分ものすごいプレッシャーもあるんじゃないでしょうか。

ヨシタケ いや、僕の場合は、基本的にはエゴサーチとかしないですし(笑)。好意的なご意見だけを、後で編集者の方から聞くだけに留めているので。

柴田 あ、できるだけシャットアウトして(笑)。

ヨシタケ もう、一生懸命シャットアウトしてますねえ。僕は絵本を「子どもの頃の自分だったら、こういうの喜んでくれるかなあ」っていう基準で作っているので、そこからなるべくブレないように、他の方のご意見を聞かないようにしてますね。その作り方で「もう要らない」って言われれば、それはもうしょうがないので。

柴田 うん、そうですよね。その潔さも必要だなと思います。私も「何部売れましたよ!」とか言われても、ハハハって聞き流しちゃうんです。それで何か描けなくなってしまったら嫌だと思って、あんまり心に溜めないようにして。でも私、エゴサはします(笑)。

ヨシタケ アハハハハハ。

子どもからのお手紙はすごい大事にしています

ヨシタケ そう、すごく聞きたいんですけど、作品をほめてくれる人もいるけれど、「思ってたのと違う」みたいなご意見もあるじゃないですか。そう言われて、どうしてます? 「つまんない」って言われても、自分にはこれしかできないので。

柴田 そうですねえ。私、あんまり気にしないんですよね。次の日に忘れちゃうこともあるので。でも、いいことも忘れちゃうからいけないんですけど(笑)。

ヨシタケ ああ、でもそれなら、エゴサーチできますね。いいですね、いろいろリセットできて。

柴田 だから、エゴサとかSNSのご意見はあまり気にしないけれど、子どもから来るお手紙はすごい大事にしています。それが活力になっているので。

ヨシタケ ああ。あれはうれしいですよね。申し訳なくなるぐらい。

柴田 はい、本当に。1歳、2歳の子が一生懸命、まだ絵になっていないけれど、「パンどろぼうかきました」という絵とか。

ヨシタケ もう、あんなにダイレクトなごほうびをいただけるって、こんなやり甲斐、他にないですからね。あのお手紙につながるかと思うと、「やらいでか」ってなりますよね。

柴田 はい。もうそこを大事にして、モチベを上げてる感じです。基本だなあと思って。「文句言って作業してちゃダメだな」とか思っちゃう。で、そうしたお手紙を読んで自分も感動するわけですよ。この感動する気持ちは、なくさないようにしようと思っていて。

ヨシタケ えらいっ! 美しい!

柴田 いえいえいえ(笑)。それがなくなったら、もう終わりだなと思っています。

ヨシタケ 自分を原点に戻してくれる、そうしたものがあり続けるっていうのは、すごく幸せなことですよね。

ヨシタケシンスケ
よしたけしんすけ/1973年神奈川県生まれ。2013年の絵本デビュー以来、MOE絵本屋さん大賞第1位を7回受賞。新刊に『おしごとそうだんセンター』(集英社)。

柴田ケイコ
しばたけいこ/1973年高知県生まれ。「パンどろぼう」シリーズ(KADOKAWA)が累計300万部を突破。新刊に『パンダのおさじと ふりかけパンダ』(ポプラ社)。

撮影/大森忠明 ヘアメイク/中村曜子(柴田ケイコ) 編集協力/原陽子

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