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長谷川博己の決め台詞に見られた“ある変化”とは? 江越を演じるのは誰…? 日曜劇場『アンチヒーロー』第7話考察レビュー

  • 2024.5.28
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『アンチヒーロー』第7話より ©TBS
『アンチヒーロー』第7話より ©TBS

『アンチヒーロー』第7話より ©TBS

第6話では、無実の沢原麻希(珠城りょう)が被告とされた「週刊大洋」個人情報流出事件の審理を通し、明墨正樹(長谷川博己)らの真の敵は、検事正の伊達原泰輔(野村萬斎)ではなく、判事の瀬古成美(神野三鈴)ではないかという疑念が出てきた。

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糸井一家殺害事件で、志水裕策(緒形直人)に死刑判決を言い渡したのも、衆議院議員・富田誠司(山崎銀之丞)の息子・富田正一郎(田島亮)が起こした傷害事件で、無実の松永理人(細田善彦)に懲役2年の判決を下したのも瀬古である。さらには、個人情報流出事件で、明墨らが集めた証拠を「GPS発信器を不正に使用した」といった理由で全面不採用としたのも彼女だからだ。

赤峰柊斗(北村匠海)と紫ノ宮飛鳥(堀田真由)も、明墨の真のターゲットは、瀬古なのだと気付き始める。

瀬古は、伊達原とバーで親しげに酒席を共にし、伊達原から「明墨はしぶといですよ。尻尾をつかまれないよう」と忠告されるほどズブズブの関係にあることも分かっており、検察と裁判所との癒着も伺わせている。

つまり瀬古は、上記の事件のカギを握っており、国家権力をバックに、恣意的な判決を下すことで、伊達原とともに出世を続け、特に12年前の糸井一家殺害事件の真実を握っている、いわば“ラスボス”ともいえる存在なのだ。

『アンチヒーロー』第7話より ©TBS

『アンチヒーロー』第7話より ©TBS

明墨は、「ターゲットは瀬古。あいつの闇をあぶり出す」と赤峰と紫ノ宮に宣言。2人ともその考えに共鳴し、いよいよ司法の“タブー”に斬り込んでいく。最終目標は、瀬古を弾劾裁判にかけることだ。

一方、明墨が志水と面会し、「私があなたを必ず無罪にしますから」と志水に伝えるが、志水は「罪を犯したんです」と震えながら呟く。ようやく事件の闇に辿り着く手前で、志水の事件を再審に持ち込もうとする明墨が壁に突き当たる。

明墨らは、「週刊大洋」個人情報流出事件の被告・沢原の無罪を勝ち取るために動き出す。その裏には法務副大臣を務める政界の大物・加崎達也(相島一之)の存在があり、加崎の法務大臣就任には、瀬古にもメリットがあった。そのことに気付いた明墨は、瀬古も出席していた加崎の政治資金パーティーに姿を見せる。

そして、その場に意外な人物が現れる。息子・正一郎が起こした暴行事件が原因で失脚した富田だ。富田はこの直前に釈放され、瀬古と明墨に恨みの言葉を叫びながら暴れ回る。

明墨は、これを好機とばかりに、富田の秘書・小杉和昭(渡辺邦斗)を取り込み、加崎の数々の悪行、さらには、息子の正一郎が起こした傷害事件の裁判で、金銭授受があったことを証言することを約束させるが、その動きを察知した伊達原が阻止し、小杉は態度を一変させる。そして小杉は加崎の秘書となる。政界と司法の癒着を分かりやすく表現した場面だ。

『アンチヒーロー』第7話より ©TBS

『アンチヒーロー』第7話より ©TBS

今度は荒れ狂う富田に近付く明墨。そこには沢原も同行し、「やられる前にやるんです。例え刺し違えても…」と富田をけしかけ、加崎、そしてその裏にいる瀬古や伊達原と対峙することを勧める。

明墨は再び瀬古の前に現れ、児童養護施設でボランティア活動をする瀬古を褒め称える一方で、「子どもたちに同じことが言えますか?」と瀬古に問うが、「私は裁判官。罪を犯すことはない」と自信満々に語る。

ところが富田は予想だにしない強硬手段に出る。瀬古への金銭授受の事実をネット動画に告白しアップしたのだ。一気に形勢は逆転し、瀬古は訴追請求される流れになる。

泣きついた伊達原には「無罪の人間を有罪にしてきたせい」と突き放される。瀬古は伊達原に「12年前のことを明かす」と脅すが、瀬古と伊達原の亀裂は決定的となる。利害関係だけで繋がっていた関係性は、かくも脆いものだった。

瀬古は明墨に、「女だからこそ、力が欲しかった」と、振り絞るように語るが、明墨は沢原の事件を持ち出し、女性の味方にならなかった瀬古を責め、公正の象徴である八咫の鏡(やたのかがみ)を象った判事のバッジを付ける資格はないと断じる。かくして、沢原は無罪となり、さらに松永の無実も証明される。瀬古が担当した裁判の判決が次々と覆されていく。

沢原は東京中央新聞の記者に転身し、明墨にあいさつに行くのだが、さっそく明墨は沢原を利用し、死刑囚の志水が冤罪だったというスクープを世に放つ。

しかし志水は、面会に行った明墨に「静かに死のうと決めたのに…」と抗議する。これに対し明墨は、成長した志水の娘の紗耶(近藤華)の写真を突きつけ、しつこいくらいに再審請求を求める。

『アンチヒーロー』第7話より ©TBS

『アンチヒーロー』第7話より ©TBS

「私が必ずあなたを無罪にしますから」。このドラマで何度も出てくる明墨のセリフだが、この時だけは、それまでの不気味な語り口ではなく、目を真っ直ぐ見据え、懇願するかのように感情的に叫ぶのだった。

紗耶に対しても、「これまでのことは全て、自分のせいだった」と詫びる明墨。志水さえ首を縦に振れば、明墨の弁護士人生を賭けた闘いが始まることになる。

一方、事務所では紫ノ宮が「糸井一家殺害事件」というファイルを見付け、その中に「明墨君へ」と書かれた手紙を見付けるが、中身を確認する前にパラリーガルの青山憲治(林泰文)に声を掛けられ、思わず落としてしまう。青山が紫ノ宮の怪しい動きを監視していたかのようだ。

場面が変わり、殺人事件の被告から無罪を勝ち取った後、明墨の右腕として情報収集の役目を与えられた緋山啓太(岩田剛典)が「弁護士が見つかりました」と明墨に電話で報告する。しかし、そんな緋山に近付く人物がいた。それは赤峰だった。

しかも赤峰は、緋山が廃棄物処分場に捨てた、血の付いたジャンパーを持っていた。赤峰が処分場から回収し、緋山への脅しの材料として利用したのだ。ジャンパーを手に赤峰は「江越って誰なんですか?全て話してください」と詰問する。まるで、明墨がやりそうな方法で、緋山を追い込んでいく。

次回の予告では、検事時代、恫喝まがいに志水を取り調べる若き日の明墨、「私が社長を殺しました」と告白する緋山、何者かを尾行する青山、さらに紗耶の前で涙を流す明墨の姿も映し出されている。

さらに、伊達原の「あなたと私は似た者同士だからねぇ」という呟きが、不気味さを際立たせている。瀬古が力を失ったことで、やはり“ラスボス”は伊達原なのだろうかと思わせる映像となっている。

『アンチヒーロー』第7話より ©TBS

『アンチヒーロー』第7話より ©TBS

放送開始前の会見で、主演の長谷川博己は、「かなり斬り込んだ問題作になる」と語っていた。この言葉を額面通りに受け止めれば、1人のアウトロー弁護士が、検察・警察・裁判所といった権力全てを敵に回すストーリーが想起される。現時点では、「国家権力=悪」という明墨の思いを視聴者に刷り込ませることには成功している。

明墨のような元検察官の弁護士(いわゆる“ヤメ検”)は少なくないが、その理由として、検察官は国家公務員であるため、プレッシャーや激務に耐え、どれだけ出世したとしても、最上級の等級の年収は3000万円にも満たない。当然のことながら副業など厳禁で、地方に転勤になることもザラだ。

こうした事情から、検事時代に培った裁判ノウハウを糧に独立し、自分の希望の地域に根を張り、公務員時代には得られなかった高収入を目指す弁護士が多いのも確かだ。

しかし明墨は、このような理由で検察を辞めたとは思えない。おそらくは、ムラ社会と揶揄される検察の世界に絶望し、転身を決意したのではないだろうか。そのきっかけが、自らが検察官を担当し、志水を死刑判決に導いてしまった糸井一家殺害事件だったのだろう。

ドラマ冒頭から検事正の伊達原から敵視され、“明墨は危険な男”という見方をされていたことも、優秀な検察官だった明墨が、弁護士としてこの事件の真相を突き止めようとしているからだと想像できる。

これまで明かされなかった検事時代の明墨が次回、いよいよ回想シーンとして登場する。明墨はどんな検事で、なぜ検事を辞すことになったのかも、徐々に明らかになっていくだろう。検事時代の伊達原との関係性も含めて、本作のカギを握る重要なシーンとなりそうだ。

さらに、視聴者にとって見どころは「江越」とは何者で、物語にどう絡んでいるのかだ。加えて、誰が演じるのかも興味をそそるところだ。現時点、公式HPで発表されているキャストの中で役名が付いていないのは迫田孝也のみだが、江越役を迫田が演じると100%断じることはできない。

藤木直人など、思わぬ場面で予告にないキャストが登場した例もあったからだ。次は一体どのような手段で、製作陣は我々視聴者を驚かせるのか。気になるところではある。

(文・寺島武志)

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