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恩田陸のバレエ小説ほか、いま読みたい注目の4冊。

  • 2024.5.27

構想10年、天才を描き続ける作家が挑んだ渾身のバレエ小説。

『spring』

恩田 陸著 筑摩書房刊¥1,980

直木賞を受賞した『蜜蜂と遠雷』でピアノコンクールに挑む若き才能を描いた作家が、構想10年、最新作のテーマに選んだのはバレエだった。萬春(よろずはる)は両性具有的な魅力を持つ男性バレエダンサーにして才気あふれる振付家。彼にしか見えない「この世のカタチ」を追い求めていく。才能とは何か。ライバルの深津純、叔父の稔、幼なじみで作曲家の七瀬、破格の天才と出会ってしまった人間がそれぞれに春を語る、その光と影に惹き込まれる。

この本の一体どこがヘイトなの?ジェンダークライシスの現状を知る。

『トランスジェンダーになりたい少女たちSNS・学校・医療が煽る流行の悲劇』

アビゲイル・シュライアー著 岩波 明監訳

村山美雪・高橋知子・寺尾まち子共訳 産経新聞出版刊¥2,530

差別を助長するとしてKADOKAWAが出版中止に追い込まれ、かえって注目を集めた一冊。近年、欧米では女の子としての生き辛さの突破口としてトランスジェンダーを自認する10代の少女が急増しているという。娘の突然の変化に戸惑う家族。身体的な違和感を解消するため手術も辞さないとあっては切実だ。性自認の問題は確かにデリケートだけれど、具体的な事例が満載の良書。何が問題かをよく知ることは決して差別を助長しない。

あの島で見知らぬ男に抱かれたい、ガルシア=マルケスの未完の遺作。

『出会いはいつも八月』

ガブリエル・ガルシア=マルケス著 旦敬介訳 新潮社刊¥2,420

ガルシア=マルケスの遺作と聞いては手に取らないわけにはいかない。『百年の孤独』でラテンアメリカ文学の魅力を世界に知らしめた作家が最期に記したのは、幸福で満ち足りているはずの女性の秘密の逢瀬だった。46歳のアナは指揮者の夫との間にふたり子どもがいる。毎年8月、母の命日に訪れるカリブ海の島で彼女は一夜限りの出会いを重ねる。もう若くはない女性が秘密の過ちによって新たな扉を開く冒険譚、未完なのが惜しまれる。

ドリーミーな色彩で菓子を描いた、アメリカの巨匠の作品集。

『デリシャス・メトロポリスウェイン・ティーボーのデザートと都市景観』

松本千登世著 牧かほり画 BOOK212刊¥5,500(3/28発売)

カップケーキとドーナツ、アイスクリームコーンにパイ。彼がドリーミーな色彩でカフェのスイーツを描いた時、画商は彼をクレイジーだと思ったという。アンディ・ウォーホルがキャンベルのスープ缶をアートにするより前に現れたアメリカの巨匠は、2021年に101歳で亡くなるまでカリフォルニアの風景を描き続けた。本国では「ポップアートの先駆者」と言われながら、日本ではほとんど知られていなかった画家の本邦初の作品集。

*「フィガロジャポン」2024年7月号より抜粋

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