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小学生になってもおねしょが治らない。夜尿症で自尊心が傷ついていく子どもたち

  • 2024.5.27
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——周りに相談しづらい「小学生や中学生になってもおねしょをしている」というお悩み。「成長するにつれてだんだん治っていくもの」と言われても、寝具を洗ったり乾かしたりする側からしてみれば、「いつになったら終わるの?」というのが本音ですよね。子どものおねしょはどこからが「夜尿症」と診断されるのか、日頃の生活で気をつけると良いこと、宿泊学習への対応についてなど、児童精神科医の宇佐美政英先生にお話を伺いました。

おねしょで悩む小学生は意外に多い! 宿泊学習の対策をお願いすることは、恥ずかしくない

意外かもしれませんが、おねしょで悩んでいるお子さんや親御さんはとても多いんですよ。でも子どものトップシークレットですから、みんな学校では絶対に言いません。単発的なおねしょではなく、「5歳以上で1か月に1回以上の頻度で夜間睡眠中の尿失禁を認めるものが3か月以上つづくもの」を「夜尿症」と呼びます。有病率は7歳で10%くらい。年齢を経るごとにだんだん割合は減っていきますが、10歳でも5%、15歳以上でも1〜2%はいると推定されています。夜尿症の原因としては、「睡眠中に尿意で目を覚ますことができない」という覚醒の問題が基礎にあり、そこに「夜間の尿量が多い」や「膀胱の容量が小さい」などの理由が重なった場合に起こります(※)。けっして育て方や性格の問題ではありません。※腎尿路疾患・神経疾患・内分泌疾患など、他の疾患が原因の場合もあります。よくあることで恥ずかしくはありませんから、学校の宿泊学習などでは先生に相談して、起こしてもらったり、こっそりオムツをはいたりして対策をすれば良いと思います。学校の先生たちも驚かないと思います。逆に「おねしょが怖くて宿泊学習に行けない」となることのほうが、先生方からしたら避けたい事態なのではないでしょうか。

ほぼ毎晩するなど、回数が多い場合はかかりつけの小児科医に相談を

「成長するに従って治りますよ」とは言っても、毎日毎日されると親のほうも参っちゃいますよね。回数が頻回だったりする場合は、かかりつけの小児科医に相談しても良いと思います。まずは生活リズムを整えるとか夜に水分摂るのを減らすとか、そういう生活の改善指導から入ると思いますが、いろいろと試して効果が乏しければ、お薬を使うようなこともありますね。薬は飲むものもありますし、点鼻薬でおしっこを作らせなくするようなものもあります。あとはアラーム療法と言われるものですね。パンツにアラーム機器を入れておき、少しの濡れを感知すると音や振動や光で目を覚ましてくれる、という行動療法です。このアラーム機器はamazonなどで販売されているんですが、そのことからも、夜尿症で悩んでいる子どもがたくさんいるとわかりますよね。

問題なのは、夜尿が子どものこころと親子関係に与える影響

私たち児童精神科医にとっては、夜尿症自体よりも「おねしょをしてしまうことで子どもの自尊心がどんどん傷ついていく」ことが気になります。おねしょをするたびに朝から怒られちゃう、もしくは不機嫌なお母さんの顔や寝具の片付けなどに奔走する姿を見るわけですから。あと問題なのは親子関係の悪化です。僕のところに来る患者さんたちの中には「夜尿がきっかけで親子でもめてる」ということもあります。しょっちゅうお布団を干したり洗ったり、寝具がおしっこ臭かったりすると、親のほうもしんどいんですね。共働きの親御さんなんて、毎日おねしょされたらブチ切れちゃいますよ。小学校の2、3年生くらいまではまだいいんですけど、高学年になってくるとオムツのサイズもなくなります。オムツはないのに尿量が半端ないので、破壊力が増すんですね。大人用だと大きいし、まぁ中途半端で困るわけです。思春期に入ってもおねしょをしていたら親に反抗もしづらいし、子どもの精神発達の面を考えてもだいぶ苦しい。なので、夜尿自体は待っていれば基本的に治まるんですけど、それまでの間に親子の関係があんまり悪くなるようであれば、「じゃ、少しお薬を使ってみようか」となることはあります。アラーム療法はじっくり取り組む必要がありますが、薬は即効性がありますから、飲むとおねしょをしなくなるんですね。それで自信がつく子も多いです。いずれにせよ、本人の意思でどうにかできる問題ではないので、ガミガミ言っても変わりません。子どもにとってもおねしょをしてしまうことは大きなストレスですから、夜尿症を引き金に親子関係が悪くならないように気をつけて欲しいですね。

悩みのある子どもが親の目を引きたくて無意識におねしょをしてしまう場合も

またこれは別の例ですが、学校のことで悩みがあったり友達とうまくいっていなかったり、心がさみしいときに、そのストレスが夜尿という症状に現れることもあります。なかなか治らない夜尿に目を奪われがちですが、実はその背景に理由がある場合もあるんですね。「ちょっと聞いて」や「助けてほしい」をうまく言えない子によくあります。もちろん意識的ではありませんし、本人はそんなこと認めません。でもまぁ見ていると「そういう感じだろうな」っていう子はいますよね。親の注目を自分に集めたくて出る症状なので、例えばお母さんに外来に連れてきてもらって、ふたりきりで時間を過ごすだけですごく満足する子もいます。そんな感じでいろいろな子がいますが、夜尿で悩んでいる子は多いです。とくに小学生のうちはたくさんいます。中学生になっても、1回くらいおねしょしちゃう子は結構いますよね。みんな絶対言わないだけで。夜尿症は「大きくなればどんどん減っていく」ものではありますが、そうのんびり構えていられない深刻な場合や早めに治したいという場合は、受診を検討してみてください。——「おねしょをされると大変」というのは簡単に想像がつきますが、「夜尿が原因で子どもの自尊心が低下している」ということは、「言われてみて初めて気づいた」という方も多いのではないでしょうか。また、「夜尿症で悩んでいる子どもは意外に多い」ということも印象的でした。治療方法も色々あるようなので、悩んでいる方は気軽に小児科医に相談してみるのも良いかもしれませんね。次回は「デジタル依存と子どもたち」について宇佐美先生にお話を伺います。

【PROFILE】宇佐美 政英(うさみ・まさひで)

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児童精神科医。国立国際医療研究センター国府台病院 児童精神科診療科長、子どものこころ総合診療センター長、心理指導室長。日本児童青年精神医学会認定医・代議員、日本ADHD学会理事、精神科専門医・指導医、子どものこころ専門医・指導医、厚生労働省認知行動療法研修事業認定スーパーバイザー。

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