いつも使っている言葉のなかに、実は略語がけっこうあります。そんな意外な略語をご紹介。今回は、「パンツ」です!
【実は略語】vol. 16
「パンツ」って、なんの略?
多くの人が履いている「パンツ」。ボトムスとして着用するパンツのほかに、下着を指す場合もあり、使い分けが微妙に悩ましい言葉のひとつです。
そんな「パンツ」も、実は略語。さて、いったいなんの略でしょう?
パンツ、もともとは…?
パンツ(英語:pants)は、「pantaloons」の略でした!
百科事典によると、パンツは英語pantaloons(ズボン)の省略形。pantsのもともとの意味は「膝丈ぐらいの男子用半ズボン」で、1840年代以来、おもにアメリカで使われてきた言葉です。
パンツの語源は聖人の名前!?
パンツの語源を調べていくと、聖人にたどり着きました。
言葉の来歴が載った『フランス語 語源こぼれ話』(田桐正彦著・白水社)と、アメリカの辞書出版社が運営するサイトを参考に、内容をまとめてご紹介します。
パンツの歴史は、まずイタリアの喜劇とつながっています。
16世紀から18世紀にかけて人気のあったイタリア喜劇の登場人物に、「パンタローネ(Pantalone)」という名の好色で貪欲な老人がいました。
このパンタローネの名前は、ヴェネツィアにあるサン・パンタレオーネ教会の守護聖人、「聖パンタローネ」に由来していました。
舞台に出てくるパンタローネ老人は、元商人で長ズボンの衣装がトレードマーク。なぜなら、当時のヴェネツィア商人がよく長ズボンを履いていたからです。
パンタローネ老人の長ズボンスタイルはヨーロッパで人気となり、パンタローネをフランス語化したパンタロン(pantalon)や、英語化したパンタルーンズ(pantaloons)がズボンを指すファッション用語として定着。
さらに、19世紀になるとアメリカ人がpantaloonsを省略したpantsを「男子用半ズボン」の意味で使うようになり、またpantiesやpantyが「女性・子ども用パンツ」となりました。
ブルマーは女性の名前!?
ついでに、パンツ関連の類語もご紹介。
まずは、昭和時代によく使われた言葉「ズロース」。意味は、「女性・子ども用の下ばき」で、パンティーよりも丈が長くゆったりした形状のものを指します。
ズロースは、英語のdrawers(drawerの複数形)由来。だいぶ発音が違いますが、英語のdrawersには「ズボン下、パンツ」の意味があります。
もうひとつ、女性の下着つながりで「ブルマー」も調べてみたところ、こちらの言葉はアメリカの女性解放運動家ブルーマー夫人が起源。女性服の改良を唱えたブルーマー夫人が、女性用のゆったりした下ばきを紹介したことから、それがbloomersと呼ばれるようになり日本にも伝わりました。
パンツは略語でした!
パンツは、英語「pantaloons」の略でした。まさかパンツがイタリアの聖人と結びつくとは思わず、この話が載っていた『フランス語 語源こぼれ話』を読んだときは心底驚きました。
意外な略語、次回もお楽しみに!
参考資料
・『フランス語 語源こぼれ話』(田桐正彦著・白水社)
・『世界大百科事典』(平凡社)
・『日本国語大辞典』(小学館)
・『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)
文・田代わこ