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80年代と現代ではデザインも着こなしも役割も変化した「テーラードジャケット」【お洒落さんのためのファッション用語辞典 vol.77】

  • 2024.5.27
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80年代と現代ではデザインも着こなしも役割も変化した「テーラードジャケット」【お洒落さんのためのファッション用語辞典 vol.77】
出典 FUDGE.jp

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連載『お洒落さんのためのファッション用語辞典』では、トラッドファッションから最新のファッションまで、FUDGEでおなじみのファッション用語についてわかりやすく解説します。第77回目は「テーラードジャケット」のルーツを探ります。この連載を読んでファッション用語の背景や起源を知れば、毎日のお洒落がより楽しくなること間違いなし!

 

【用語解説】まずは「テーラードジャケット」を知ろう。

80年代と現代ではデザインも着こなしも役割も変化した「テーラードジャケット」【お洒落さんのためのファッション用語辞典 vol.77】
出典 FUDGE.jp

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「テーラードジャケット」とはかっちりとした仕立てた上着のことをいいます。そもそも「テーラー」とは洋服屋、仕立屋のことで、特に紳士服をオーダーメードできる店のこと。そのため、「テーラードジャケット」はテーラーで仕立てられたジャケットという意味になります。実際には、テーラーで仕立たように見える、きちんと感のあるジャケットをさして使われることが多く、男性用スーツの生地でかっちりと仕立てられているものから、現代では、テーラードカラー(襟)、簡潔なラインとすっきりとしたディテールであれば、そこまで本格的な生地や仕立てでないものでも、そう呼ぶことが多くなりました。

 

【歴史】英国紳士のファッションにルーツあり

80年代と現代ではデザインも着こなしも役割も変化した「テーラードジャケット」【お洒落さんのためのファッション用語辞典 vol.77】
出典 FUDGE.jp

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「テーラードジャケット」のルーツは1850~60年代のイギリスの「ラウンジジャケット」にあります。当初はイブニングコートやフロックコートのようなフォーマルとは違った気負わずに着られる男性が着るジャケットとして位置付けられていました。しかし、時代が進むにつれて「テーラードジャケット」はよりカジュアルにあるいはデイリーに着られるものや、女性用のジャケットをも指すようにもなっていき、現代では、シャツやカーディガン感覚ではおれるような薄手の素材やニット素材のものまで登場しています。

 

【雑学】1980年代、女性の社会進出に欠かせないアイテムだった?!

80年代と現代ではデザインも着こなしも役割も変化した「テーラードジャケット」【お洒落さんのためのファッション用語辞典 vol.77】
出典 FUDGE.jp

今でこそ、「テーラードジャケット」はジェンダーを超えたベーシックアイテムになっていますが、40年ほど前までは、紳士用の上着のイメージでした。それがわかる、1988年公開のハリウッド映画、『ワーキング・ガール』をご紹介します。

舞台は1980年代、アメリカ・ニューヨークの証券会社。メラニー・グリフィス演じる主人公のテスはその証券会社で女性上司の秘書として働いています。テスは仕事への強い意欲を持つ女性。けれども、当時のビジネスシーンではまだ男性が主役、また学歴によってポジションが左右される風潮であったため、テスは希望どおりの職種に就くことができず、昇進も望めそうにありませんでした。それでも一発逆転を狙ってあらゆる策を講じ、奮闘するテス。この映画は、そんなテスが夢をかなえるまでの姿が描かれるサクセスストーリーです。

物語と並行して、注目すべきは時代背景がよくわかる出演者たちのファッション。テスはしだいに活躍の場を増やしていくのですが、金融業界で公の場に出る機会を重ねるうち、ヘアスタイルもよそおいもどんどん洗練されていきます。男性陣が着用する背広を意識したとしか思えない、「テーラードジャケット」とスカートのセットアップはその筆頭。中に上質そうなシャツブラウスを着て、ストッキングに《リーボック》のスニーカーでさっそうと出勤する姿は、今見てもかっこいい!

着たい服、自分らしい服ではなく、男性と対等に働けるということを主張するために「テーラードジャケット」を着なければならなかった、女性がまだ生きづらさを抱えていた時代ではありましたが、そんな背景を知る意味でも一見の価値ありです。「テーラードジャケット」がきちんと感を演出したい時に「テーラードジャケット」に手を伸ばす人も少なくないと思いますが、きちんとした雰囲気のルーツに女性の社会進出に欠かせないアイテムであったことを思い出してみてくださいね。

 

監修:朝日 真(あさひ しん)

文化服装学院専任教授、専門は西洋服飾史、ファッション文化論。早稲田大学文学部卒業後、文化服装学院服飾研究科にて学ぶ。『もっとも影響力を持つ50人ファッションデザイナー』共同監修。NHK『テレビでフランス語』テキスト「あなたの知らないファッション史」連載。文化出版局『SOEN』他ファッション誌へ寄稿多数。NHK「美の壺」他テレビ出演。

 

illustration_Sakai Maori
edit & text_Koba.A

 

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