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「親バカだと思われたくない」から?わが子の自己肯定感を下げる“親の謙遜”

  • 2024.5.26
(C)あべゆみこ
(C)あべゆみこ

子育て本著者・講演家である私は長年、幼児教室で先生をしていましたが、保護者の送迎時に必ず、お子さんが成長したことを伝えるようにしていました。そのとき、全ての保護者がそうとは限りませんが、多くの保護者が、わが子の行動に対してへりくだります。

私「◯◯くんはきちんと整理整頓ができていますね。素晴らしいです」保護者「そんなことないですよ。家では散らかし放題なんですよ(笑)」

私「◯◯くんは友達に優しくできますね」保護者「えー、そうなんですか。家ではきょうだいげんかばっかりしてるんですよ」

私「授業終了後、私のお手伝いをしてくれるんですよ」保護者「家ではゲームばっかりして、お手伝いなんか全然してくれないんですよ(笑)」

…などです。せっかく子どもの前で褒めたのに、なぜかそれを否定する人がとても多かったです。

保護者は、心の中ではわが子を評価してもらってうれしいと感じているのだと思いますが、「親バカだと思われたくない」という気持ちがあるのか、子どもの前で素直に喜べないようでした。そのため、「ありがとうございます。うれしいです」と言う人はほとんどいませんでした。そして、否定された子どもはとても悲しい顔をしていました。

ちなみに、教室にはアメリカで育ったという保護者がいましたが、その人だけは素直に「ありがとうございます。家でもよく手伝ってくれます」と答えていました。

日本には「謙遜の美徳」という文化が深く根付いていて、謙譲語という言葉もあります。自分をおとしめること、へりくだることによって相手を敬う文化です。

他の家にお邪魔するとき、手土産を持っていき、「つまらないものですけど、お口に合いますでしょうか」と渡すことがあります。手土産に「粗品」と書いてある場合もあります。でも、開けてみたら老舗和菓子店のようかんで、「老舗に対して悪いじゃないか」と思います。そもそも字面通り捉えると、「つまらないものを持っていく」なんてことは、相手に失礼なことなのではないでしょうか。

また、「そのバッグ、すてきですね」と言われて、「いえいえ、安物なんですよ」と返したら、相手はどう思うでしょうか。もしかしたら、相手は「私に見る目がないってこと?」と感じているかもしれません。

子どもには謙遜の文化が理解できない

「スレンダーですね」「何か秘訣(ひけつ)はあるんですか」と言われて、実はエステに通っているのに、「しっかり栄養を取って、睡眠を取っているだけですよ」。

「お肌がきれいですね。何か秘訣はあるんですか」と聞かれて、美容皮膚科に行っているのに「特に何もしていませんよ。そんなにきれいじゃないですよ」。

そんなふうに、自分のことを褒めてもらったときに、うそをついてしまう人もいます。努力を知られたくないという思いがあるのかもしれません。でも、相手からすれば「秘訣を聞きたい」と考えての言葉なので、ちゃんと真実を伝えた方が正直な人と思われますし、相手にとってもよいことなのではないでしょうか。

相手の前でへりくだることについて、自分自身のことについてはまだよいのですが、わが子にそれを言うのはやめた方がいいと思います。なぜかというと、まだ人生経験の短い子どもには、その文化が理解できないからです。せっかく他人が褒めてくれたのに、一番褒めてほしい親から否定されたら悲しいですし、「本当に自分はダメな人間だ」と思ってしまうかもしれないからです。

他人の親に、「◯◯くんは本当に落ち着きがないわね、だらしがないわよね」とは絶対に言いません。他人の子どもだからです。でも、自分の子どもだって、自分とは違う一人の人間です。もっと気持ちを大切にしてあげましょう。

日本、アメリカ、中国、韓国の高校生を対象に行われた「高校生の心と体の健康に関する意識調査」(国立青少年教育振興機構、2017年度)によると、「自己評価」について、「私は価値のある人間だと思う」と回答した割合は、日本が44.9%だったのに対し、アメリカが83.8%、中国が80.2%、韓国が83.7%となりました。何だか悲しい結果ですね。日本の子どもの「自己肯定感の低さ」が浮き彫りとなった形です。謙遜の文化を子どもに使うのが、その一因かもしれません。

「自分自身は価値がある」「自分が好き」でいられることは、困難を切り開いていくための大きな力、財産になります。他人が評価してくれているのに、それを親が否定するなんて、もったいないことはしないようにした方がよいのではないでしょうか。

皆さんはどうお感じになりますか?

子育て本著者・講演家 立石美津子

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