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鶴見辰吾、優等生役に悩み引退も考えた10代 還暦を前に「目指すは元気なジジイ」

  • 2024.5.26
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鶴見辰吾 クランクイン! 写真:高野広美 width=
鶴見辰吾 クランクイン! 写真:高野広美

10代に数々の青春ドラマや映画で注目を集め、今やシリアスからコミカルまで多彩な役柄で魅力を放つ役者として、幅広い活躍を見せる鶴見辰吾。今年12月には還暦を迎える彼だが、「ついこの間まで30代だと思っていたのに! こんなに早く60代が来るのかと…あっという間ですね」と穏やかな笑顔を浮かべる。これまでのキャリアを振り返ってもらうと、10代の頃は優等生役を演じる機会が多かったことに悩んでいたことを告白。「役者を辞めようと思ったこともある」と打ち明けた鶴見が、役者業に邁進する転機となった3つの出会いや、出世作となったドラマ『3年B組金八先生』の仲間との絆。還暦の抱負までを、周囲への感謝をあふれさせながら語った。

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◆大ファンのミュージカル『ビリー・エリオット』に参戦

映画、ドラマ、舞台など、あらゆる作品で存在感を発揮している鶴見。7月からは、バレエダンサーを目指すひとりの少年と、彼を取り巻く大人たちの姿を描いた映画『BILLY ELLIOT』(邦題『リトル・ダンサー』)をミュージカル化したミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』に出演、ビリーのお父さん役を演じる。日本では2017年に日本キャストで初演され、2020年に再演が実現。今年、新たなビリーと共にパワーアップして再々演が行われるが、鶴見は2017年の初演を鑑賞し、「すごくいいミュージカルだった」と大ファンになったという。それだけに今回の参加は喜びもひとしおだ。

鶴見は「『観た方がいい』とすぐに妻にも勧めたくらい、どこを切り取ってもすばらしい作品だと思います。曲もいいし、家族の物語や夢に向かっていく心情など、描かれるテーマもとても感動的。大好きなミュージカルです。だからこそ今回、ビリーのお父さん役のお話があると聞いて『ぜひやらせてほしい!』と二つ返事でした」とにっこり。「演出家がイギリスの方で、まずはオーディションがあると聞いた時も『なるほど』と。芝居と歌、ダンスもお見せして、久しぶりにドキドキするような体験をしました。まるで、バレエダンサーを目指して試験を受けるビリーの心境と重なるよう。好きなミュージカルだったと同時に、自分自身で手繰り寄せたような役柄でもあるので、参加できて本当に幸せです」と噛み締めるように話す。

主人公のビリーは、1年以上に渡る長期育成型オーディションを経て選ばれた、浅田良舞、石黒瑛土、井上宇一郎、春山嘉夢一が演じる。鶴見扮するビリーの父親は、当初は「バレエは女がやるものだ」と反対しながらも、次第に息子の情熱と才能に気づき、彼の夢を応援していくようになる。鶴見は「苛烈な戦いを勝ち抜いてきた子たち」と4人のビリーに敬意を表し、「僕らの仕事は、作品に入ったところから擬似家族のようになるもの。本物の家族を超えるような固い絆を築き上げていきたい」と期待たっぷり。

また小学生の頃から宝塚が大好きで、俳優としての原点は「宝塚」だという鶴見にとって、「今回共演者に宝塚出身の安蘭けいさんがいらっしゃるので、本当に自分の夢が叶ったよう。そう考えると本作のビリーは、かつての自分のような気もしますね」と喜びの多い作品となった。

◆優等生役に悩んだ10代


バレエ教室のウィルキンソン先生に才能を見出されたビリーは、先生や家族、地域の人々などたくさんの人に励まされながら、バレエの道へと突き進んでいく。12歳で俳優デビューを果たした鶴見だが、その道を進む上で自身を支えてくれた出会いや転機はあるだろうか?

「たくさんの方にアドバイスや励ましをいただいた」と切り出した鶴見は、「なかでもデビューの頃に同じ事務所だった、鈴木ヒロミツさんにはものすごく可愛がっていただいて。いつも『お前は最高だ』『カッコいいね』といろいろなことを褒めてくださった。ヒロミツさんは60歳で亡くなってしまったのですが、今年、僕も60歳になります。本当に恩義を感じている方ですね」と感謝。「そして『3年B組金八先生』の武田鉄矢さん。あのドラマがあったから、僕の名前が全国区になったというのもありますし、あそこで出会った仲間とは今も交流があっていつも応援してくれます。もう一人は山崎努さんです。18歳ぐらいの頃、『俳優を辞めようかな、どうしようかな』と悩んでいた時に、山田太一さん脚本のドラマ(早春スケッチブック)でご一緒して。『こんなに俳優業に対して命懸けでやっている人がいるんだ』というのを目の当たりにして、自分もこの道をしっかりと進んでいこうと思いました」と宝物のような出会いについて明かす。

鶴見が中学3年生の時に出演した『3年B組金八先生』第1シリーズでは、杉田かおる演じる同級生の浅井雪乃と恋に落ち、雪乃の妊娠・出産を経て、父親になる宮沢保役で、視聴者に衝撃と鮮烈な印象を残した。その後も順調にキャリアを重ねていた彼が「俳優を辞めようか」と悩んでいたのは、「10代の自分が抱いていた俳優像と現実とが、少し違っていた」からだという。

「1980年代はアイドル黄金期でアイドル映画も多く、ティーンエイジャーはすなわちアイドルみたいな時代でした。でも僕はやっぱり男の子なので、洋画のハードなアクション映画などを観ていて、そういう作品に出たかったんです」と苦笑い。「それでも実際は、青春ものの優等生のような役が多く、全然違う方向に行ってしまうような気がして。もちろん今ではそういった役も財産だと思っていますが、当時の僕はとても悩んでしまったんです。役者で食べていくのは大変だし、学校の仲間と同じように就職をして勤め人になるなら今だな…と考えている頃に出会ったのが、山崎努さん。そこで強烈に『自分もこういう役者になりたい』と思ってしまった。山崎さんは、僕の進路を決める上で大きな影響を与えてくれた方です」と心を込める。

◆還暦の抱負は? 「目指すは元気なジジイ」


鶴見は、今年の12月には還暦を迎える。「どんどん、加速度的に年齢を重ねるのが早くなっていく!」と笑いながら、「60歳を過ぎたら、残された人生はおまけのようなものだと思って。なるべく皆さんが喜ぶことができたらなと思っています」と60代の抱負を吐露。

「自分で言うのもなんですが、俳優ほどいい職業ってないなと思うんです。いろいろな人生を体験できるし、たくさんの人と感動を共有できる。そしてエンタテインメントというのは、心の栄養になるものだと感じています。それを届けられるなんて、本当に幸せなこと。これだけいい仕事に就いたのだから、それは恩返ししないといけないなと思います。観客の皆さん、スタッフ、キャストと幸せや喜びをシェアすることが、僕ら役者にとって一生のテーマになるのではないかなと思っています。やっぱり役者というのは皆さんに支えられて成り立っているもので、作品を観て喜んでくださる皆さんの姿が僕にとっても原動力になります」と充実感をにじませ、10代の頃は「自分がどうしたいか」だったものが、「誰かのために」と役者業に向かう意識が変わってきたと話す。

『3年B組金八先生』で出会った仲間も同じように年齢を重ねてきたが、彼らには特別な絆を感じているという。「当時は今ほどルールも厳しくなかったので、みんなで23時過ぎまで撮影をしたりしていて。ライバルというわけではないけれど、最初は『どうなんだ』と様子を探っていたものが、みんな15、16歳くらいですから、あっという間に仲良くなりました。赤坂のTBSのGスタジオという、ベストテンなども収録しているスタジオでやっていましたが、撮影の合間には、赤坂界隈でみんなとインベーダーゲームをやったりして(笑)。学校もバラバラだったので『僕の学校はこうだ』なんて情報交換もできて、ものすごく楽しかった」と懐かしみ、「みんながビリーのように夢を持ってお芝居を始めて、あの番組で芸能界の入り口に立って。そのまま役者を続けた人もいれば、就職をして、それぞれ結婚をしたり、子どもを持ったり、今や孫がいる人までいる。出会いって面白いものだなと改めて思います」としみじみ。

きちんと幹事がいて今でも同窓会をやるほど仲良くしていると目を細めながら、「みんなもそうだけれど、とりあえず健康維持をしっかりしないとね。僕も、目指すは元気なジジイ。舞台に立っている先輩でも元気なジイさんがいっぱいいるので(笑)。そういう方々を見ていると、まだまだこの先も頑張れそうだなと思っています」とますます奮起していた。(取材・文:成田おり枝 写真:高野広美)

Daiwa House presentsミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』は、東京・東京建物Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)にて7月27日~8月1日(オープニング公演)、8月2日~10月26日(本公演)、大阪・SkyシアターMBSにて11月9日~24日上演。

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