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「大卒なのに頭悪いな」彼氏からの一言にモヤモヤ…“学歴”に対する悩み#62

  • 2024.5.24
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はーい皆さん、ごきげんよう!満島てる子です。

札幌ではライラックが美しい今日この頃ですが、皆さんはいかがお過ごしかしら。

あたしといえば、4月から始めた「部屋に花を飾る生活」というものにすっかり馴染んできて、なんだかちょっと頭がビビッドカラーのお花畑状態なのですが(人によってはキツめの5月病とも取られかねない……?)。

毎週生けるお花をお迎えするたびに、花言葉を調べるのがちょっとした習慣みたいになっております。

Sitakke
ライター・満島てる子

そういえば、ライラックの花言葉のひとつは「謙虚」。
自分についても他人についても慎み深くいることって、大切だとわかっていたとしても、なかなか誰もが実践できているとは言えないわよねぇ。
しかも、時に「この話題なら他人に強く出てもいい」みたいなノリになることも、どうしてか不思議と世の中にはあるというか。

今日はそんなノリに苦しむ方からのお悩みが、応募フォームに送られてきていました。

あら?ペンネーム、もしかしてお花の名前じゃないかしら?
ご紹介しましょう。

読者のお悩み:「”学歴”の扱いにモヤモヤ......」

Sitakke
Sitakke
Sitakke

「キバナノアマナ」って、確か北海道に春を知らせる植物の代表なのよね。ユリの仲間。
黄色い小ぶりの花が群生する様を見ると、こころにもほっこりとしたあたたかみが。

Sitakke
「キバナノアマナ」

そんな"めんこい"お花の名前をペンネームにするなんて、なんてセンスの良い方なのかしら。
キバナノアマナさん、今回はお手紙ありがとうございます!
にしてもあなた、いろんな人からひどいことされたのね。
出身大学を理由にプリント回さない等々なんて、その教員のやっていることはれっきとしたハラスメントだし、「大卒なのに云々」という元彼や周りの人の発言は、あなたの尊厳を傷つけるもの。そりゃ悲しくも苦しくもなるはず。お疲れ様だよぅ……!涙

現代にはびこる「学歴」という呪い

あのね、正直に言うと、あたし「学歴」って現代にはびこる、強力な呪いのひとつだと思うの。
かくいう自分も、その呪いに苦しんできた人間のひとり。
「いやあなたは旧帝大出身じゃんか」というツッコミが一部来そうですが、むしろそうであるがゆえに、様々なことをこれまで言われたりしてきたんです。

例えば、今の職場である7丁目のパウダールームで働くことを決めたとき。
キバナノアマナさんが自身の生計についてもらうコメントと同じように、当時周りからは「北大の大学院まで出て飲み屋?やめときなよ」と、非難めいた批判をしこたま受けました。

Sitakke
イメージ

今だって、店でこれまでの人生を話したりしている最中に「え?大学まで出たのにこんなところで働いてるの?なんで?」と、お客さんからサラッと言われることもあります。

(正直あんたに関係ないし、「こんなところ」って物言いが気に食わないというか……。飲みにきてるくせに、自分が利用している飲み屋というサービス業のこと「大卒には見合わない」もの扱いを暗にしていて、職業として下に見てるんだって、こういうセリフを聞くたびにしんどい気持ちになるんだけれどね。)

大学の名前を言っただけで、本州の某有名大学出身の方から「中途半端なキャリアだね」とマウントを取られ、食事の間中ずっとけちょんけちょんにコケにされたり。
何も言ってないのに「はいはい、北大様は頭のいいことで……」と、雑に持ち上げまがいのそしりを受けたり。
振り返っても、まさに乱高下とでも言うべき経験ばかり思い出すなぁ。

「学歴で人を見て判断する」ことの愚かさ

恐ろしいのは学歴の呪いって、その人が〇〇な学歴を持っていれば解決!って話ではないということ。
東大を出ようと中卒であろうと、「学歴で人を見て判断する」という風習がはびこっている限り(そして、人々がその風習という枠から自ら外へ出ようとしない限り)、誰もが誰かから何がしかの砂をかけられたり、逆に他人にかけてしまう可能性が、一生ある。

……本当にさぁ。
頭がいいとか悪いとかを「学力」とかいう雑な基準で判断し、人を選別するのって、それこそ頭悪いよね。
まずそもそも、誰かに暴力的な烙印を勝手に押し、それをもとに格付けして扱うなんて行為、おのれに対しては謙虚、他者に対しては素直で誠実な人であったなら、そうやすやすとできるはずのないことだと思うんだけれどなぁ。

どうして世の中には、人を慎み深くいさせまいとするような呪術が、こうも当たり前のものとして存在しているのかしら。
そんなことを考えながら、キバナノアマナさんが直面してきたであろう「学歴」というものの呪力規模のデカさに、個人の経験も思い出しながら恐れおののいている自分がいるのでした。

あたしなりのAnswer

さて、こう書いてはみたものの、じゃあ「学歴の無い世界に行こう!」と言ってそうできるのかというと、そうもいかないのがこの現実。

キバナノアマナさんもあたしも、なんならこのコラムを読んでいる全ての人が、これまで同様これからもこの「学歴」という呪いに侵されることはあるんだろうし、それの過程で時に疲弊し悲嘆するんだろうなぁと思うんだけれど。

もしそんな時に、読み返して少しだけ希望を持てる、そんな文章を綴ることができたなら。
そういう気持ちでここからは、キバナノアマナさん、あなたへのエールをあたしなりに書いてみようかなと思うの。ちょっと抽象的な物言いになるけれど、よかったら受け取ってね。

Sitakke
イメージ

あのね。あたし常々思うんだけどさぁ。
世の中には「学歴」はもちろん、「年収」や「ルックス」、「ジェンダー規範」なんてのも含め、様々な呪いというか囲いというか、人間の行動や思考を特定の方向に規制し統制してしまう、そんな強力な呪縛がごろごろ存在しているなって思うの。

しかもさっき書いたように、そうした呪縛たちはなぜか「当たり前のものとして存在」していて、世の中の土台を作っているようにすら思えるときまである。
「歩は前に1マス」じゃないけど、人生がもし将棋のようなゲームだったとしたら、あたかもその基本的なルールかのように、こうした呪縛たちって場面によっては振る舞い始めたりするんだよね。
そう。呪いというものは、人々を囲い、そして縛ることで、その社会をひとつのテイストで統一された箱庭に変えてしまう力を持っているんです。おっそろしい。

……みんなが自分や他人の学歴を気にして振る舞い、都度ステータスを確認し、それによって相手だけでなくときに自身のことすら傷つけてしまう箱庭。
その中にもし誰かが己が身を置いているとしたら、その箱はもうほぼその人にとっての「棺」。自由な生を奪われていることと同義でしょう。
そりゃ相談文にも書いてくださっていたように、「苦しさと悲しさ、疲れのようなものを感じ」て当然。
しんどい事態だと、あたしも思います。

でも、だからこそ
キバナノアマナさん。あたしたちはその棺から出て箱庭を去ることを、常に何度だって厭わずにいようではありませんか。映画『マトリックス』のネオや、アニメ『少女革命ウテナ』のウテナとアンシーのように(もしまだ未視聴ならぜひ観てほしい作品たちです。きっとこころに沁みるはず)。

重ねてになるけれど、ここであたしは「この世界諦めてどっか行こう!」と言いたいわけではありません。それは、どう頑張っても無理な話。
「今」とは誰しも、向き合わざるを得ないもの。

そうではなくて。
なんなら「学歴なんて関係ない!」というスタンスを取るのでもなくて。
「学歴」という呪いがこの世には確実にあり、それが何人にとっても多かれ少なかれ居心地の良いものでは無いんだと、はっきりしっかり理解すること。
そう理解することでまずは自分のこころを、その呪いの囲い•縛りから解放してあげること。
それがきっとあたしたちを、箱庭からの卒業に導いてくれるんじゃないかしら。

棺の中から手が伸びてきて、あたしたちを引き戻そうとすることもあるかもしれない。お手紙に出てきた教授や元彼は、そんなゾンビみたいな人物だったんだと、あたしは思う。

でもそんな人だけじゃないはず。あなたの周りにも、学歴を絶対視することを根本的に辞め、その呪縛から自らを解放しようとしている人は、きっといる。
そうした人たちと出会い、つながっていくことができれば、今抱えている苦しみや悲しみ、疲れも癒えていくもの。
そのためにも、まずは「箱の外」を、あたしたちはどんなに嫌になっても目指し続けるっきゃないと思うの。どうかしら。

確実にそこに辿り着けるとは言えないんだけれど。
キバナノアマナさん、その花言葉通り「前途洋々」な未来が我々には広がっていると信じて。
これからもあなたには、棺からの復活にチャレンジしていってほしい。あたしも一緒に、自分なりにトライしていこうと思うから。

呪いを卒業したその先に、たくさんの祝福が咲き誇りますように。
そんなあたしの祈り、きちんと届くといいなぁ。そう思いながら今回は筆(キーボード)を走らせてみました。
キバナノアマナさん、呪縛と闘うひとりの同志として、これからもあなたのことを応援していますからね!

Sitakke
明るい色の花を咲かせる「キバナノアマナ」

ま・と・め♡

というわけで、今回は学歴という話題から始まって、世に蔓延る様々な「呪縛」という、個人的にずっと向き合い続けているテーマについても綴らせていただきました。

この連載の初期、確か第3回目のコラムの時点でもう既に、この「呪い」に関する話はさせてもらった覚えがあるのよね。やだあたしったら。もうちょい話にバリエーション無いのかしら。←
こちらも改めてご一読いただければ幸いです。

さてさて、今日も花瓶のお水、そろそろ変えてあげよっと。
今日も脳内がお花まみれ、てる子だったのでした。
ではでは皆さん、Sitakkeね〜!

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文:満島てる子
イラスト制作:VES
編集:Sitakke編集部 ナベ子
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満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。LGBTパレードを主催する「 さっぽろレインボープライド」の実行委員を兼任。 2021年7月よりWEBマガジン「Sitakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム【てる子のお悩み相談ルーム】を連載中。お悩みは随時募集しています。

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