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主人公は死んでいる? 意味不明すぎてハマる…最も考察された映画(3)ラストに衝撃の焼身自殺…その理由とは?

  • 2024.5.25
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映画『ガタカ』アイリーン役のユマ・サーマン【Getty Images】

数々の難解映画の中でも、もっとも考察のしがいがあるSF映画。未だ人類が解明できていないことから、来るかもしれない近未来のことまで、考えるほど沼に入ってしまうSF映画の考察。今回はジャンルをSFだけに絞り、誰もが知っている名作から、SF考察の金字塔まで最高の5本を紹介。世間で考えられている説も解説する。第3回。(文・ニャンコ)

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『ガタカ』(1998)
上映時間:106分
監督:アンドリュー・ニコル
脚本:デビッド・ピープルズ ジャネット・ピープルズ
出演者:イーサン・ホーク、ユマ・サーマン、アラン・アーキン、ジュード・ロウ、ローレン・ディーン、ゴア・ビダル、ザンダー・バークレイ、アーネスト・ボーグナイン、イライアス・コティーズ、マーヤ・ルドルフ、トニー・シャブール

【作品内容】

遺伝子操作で生まれた“適性者”が社会を支配する近未来。

自然出産で誕生したビンセント(イーサン・ホーク)は、“不適正者”として冷遇される人生を歩んでいた。彼は幼い頃から宇宙飛行士を夢見ていたが、それは適性者のみに許される職業だった。

ある日、ビンセントはDNAブローカーの仲介で、下半身不随となった元水泳選手ジェローム(ジュード・ロウ)の適性者IDを買い取る。ジェロームに成り済まして宇宙局「ガタカ」に入社したビンセントは、努力の末についにタイタン探査船の宇宙飛行士に選ばれるが……。

【注目ポイント】

本作は、ラストシーンでジェロームが焼身自殺をする。自殺の理由が明確にならないまま幕を閉じるため、様々な考察をすることができるが、筆者はその理由をジェロームが自分の役目を終えたと悟ったためだと考える。

ジェロームは事故で車いす生活となったが、映画中盤、酔っ払った彼は「完全にシラフで車の前に飛び込んだ」と自殺未遂したことを明かしており、その後に「失敗したらもう一度やればいい」と自らに言い聞かせるような言葉を発している。彼にはかつて水泳選手として銀メダルを獲得した(金メダルを逃した)過去がある。

優秀な「適性者」として産まれたジェロームにとって、銀メダルに象徴される「不完全さ」は決して許容できるものではなく、人生に影を落としている。

そんなジェロームは、「不適正者」のヴィンセントが夢を成し遂げる様子をすぐそばで目の当たりにし、2人はいつしか運命共同体ともいえるひとつの存在になる。

最後にジェロームがヴィンセントに渡した髪の毛の束は、彼のDNAの象徴である。そしてジェロームが銀メダルを首にかけて炎に包まれる時、映像では銀メダルがオレンジ色の炎に照らされて金メダルのように映るのにも意味がある。

これはまさに、ジェロームとヴィンセントの夢が叶ったことを象徴しているのだ。

さらに、ヴィンセントの行動に影響を受けた人物がもう1人いる。

唯一ヴィンセントの正体を知っていた、医者であるレイマー(ザンダー・バークレー)だ。最後レイマーはヴィンセントを見逃し、宇宙へと旅立たせている。なぜレイマーはヴィンセントを見逃したのか?

その理由は、医者は誰よりもヴィンセントの努力を知っていたからだと思われる。医者はヴィンセントの日々の行動に、人生に賭ける確かな意志を感じたのだろう。そして日々人類の選別をする立場である医師はヴィンセントを逃すことで、本来のあるべき世界の姿、すなわち努力が報われる世界に希望を託したのではないだろうか。

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