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【医師が解説】熱中症予防、正しい水の飲み方とは? この時期に、自宅のエアコンで確認しておきたいこと

  • 2024.5.24
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今年は5月から暑さが増すと報じられ、熱中症リスクが早期から高まっています。まだ完全に暑さに対して準備が整っていない今の身体。今年は早くから調整しておく必要がありそうです。そこで今回は、早期から熱中症予防対策として、特に盲点になりがちなことをご紹介。熱中症対策に詳しい医師やエアコンメーカーに伺いました。

 

 

盲点3. 「水だけ」「塩と水だけ」の摂取はNG ~正しい水分補給の仕方~

続いては、熱中症予防に欠かせない正しい水分摂取の仕方を確認しておきましょう。

みなさんは水分補給と聞いて、何を思い浮かべますか? 「水」と「塩分」を摂取すればいいというイメージがあるのではないでしょうか。医師の谷口英喜先生によると、厳密に言えば、水と塩は必ずセットで摂取しなければ危険なのだそう。

 

「気温が上がってきたら、汗をかいて失われた水や電解質(ナトリウム・カリウム・マグネシウム)、ビタミンB1を補うことを意識しましょう。『水だけ』、『塩分だけ』というのはNG。水だけを大量に摂ると『水中毒』になり、体内の塩分濃度が極端に下がってしまうことで、低ナトリウム血症を起こすリスクがあります。塩分は電解質の一つであるナトリウムですが、ナトリウムを適度に摂取しつつ、水分補給をしなければ、体内には吸収されにくく、残りにくいのです。もちろん、塩分だけの摂取は水分の実質的な補給につながらないので危険です」

 

水と塩分を効果的に摂取するにはどうすればいいのでしょうか?

 

「塩分を摂取する際には、塩飴や梅干しを食べる方も多いと思われます。そのときは塩飴だけ、梅干しだけでなく、必ず1個につきコップ1杯の水分を合わせて補給するようにしましょう。食事でも塩分は摂れますから、水分と一緒に摂取するのもおすすめです」

 

その他の電解質であるカリウムやビタミンB1も意識して摂取するといいそうです。

 

「カリウムは野菜や芋類、藻類に多く含まれ、尿を出しやすくするので体温を下げることに役立ちます。またビタミンB1は緑黄色野菜や豚肉に豊富に含まれるので、熱中症の症状を緩和させてくれます。これらをいっぺんに摂取できるのが、キウイフルーツなどの果物や、トマト、きゅうり、かぼちゃなどの夏野菜です。夏野菜カレーに豚肉を入れて熱中症対策メニューとして取り入れるのをおすすめします」

 

 

盲点4. エアコンの試運転をしておらず、いざ使いたいときに故障が判明!

続いては、環境面の熱中症対策の盲点です。

 

三菱電機が行った調査では、エアコンの試運転を「毎年行っている」方はわずか31.3%でした。毎年行わない理由は「面倒だと思うから」が44.3%。さらに、全体の5人に1人以上が「夏、エアコンが故障したことがある」と回答しているのです。

 

実は、エアコンの試運転を夏前に行わず、いざ7月頃の暑い時期になってスイッチを押してみたら故障して使えなかったという失敗ケースは多いのだとか。

 

エアコンを使わない部屋で過ごしたことで熱中症になり、亡くなるケースもあるため、エアコンは命綱といえるのです。

 

「故障していたらすぐに修理に出せばいいのでは?」と考えるかもしれませんが、実はエアコンメーカーは6~8月が繁忙期で、すぐに対応できないケースも多いのだそう。混んでいる時期では2週間以上待つこともあるのだそう。順番待ちをしている間に熱中症になってしまうリスクがあります。

これを防ぐためには、今のうちから試運転を行っておき、もし不具合があれば修理に出すこと。今の時期なら繁忙期よりはスピーディーに対処できるはずです。

 

●エアコンが寒いと感じても冬の服装をして付けたまま過ごすのがおすすめ

ここで、エアコンの風が冷たくて嫌いな方に朗報をお届け。谷口先生によれば、「エアコンが寒いと感じたら、冬の服装を着て過ごしていても大丈夫」とのこと。その理由は、「エアコンは風に当たるものではなく、冷たい空気を吸うことに意味があるから」。冷たい空気を吸うと、実は冷たいものを飲むよりも体温の冷却効果があるそうです。

 

「ヒトの肺には肺胞という風船のような組織が多くあり、その風船には血管が多く接しています。その肺胞を広げると、なんとテニスコート半面分の面積があります。そこに冷たい空気を起こることで、体温を下げることができるのです。たくさん着込んでも良いですから、とにかく夏場はエアコンを付けてください」

 

●試運転の実施タイミングは、「4~5月中の外気温が21℃以上」

三菱電機の担当者によれば、試運転の実施タイミングは、「4~5月中の外気温が21℃以上」がおすすめだそうです。

 

なぜなら、試運転をするにはエアコンが冷房運転を10分以上続けられる環境が必要だから。室温がエアコンの設定温度を下回る環境では、エアコンが冷房運転を止めてしまい、試運転が十分に行えなくなってしまうのだそう。

 

また熱中症対策の観点と夏のエアコンメーカーの状況や設置・修理業者の混雑具合からも、4~5月中に試運転を実施することを推奨しています。

 

●試運転時のチェックポイント

エアコンの試運転時には、次のチェックポイントを押さえて実施しましょう。

 

□ 電源プラグやコンセントに「変色」「がたつき」「ゆるみ」はないか
 □ 電源コードに傷はないか
 □ 電源プラグにほこりが付着していないか
 □ 室内機の吹き出し口から冷たい風がでているか
 □ リモコンは動くか・液晶画面の表示が薄くなっていないか
 □ 室内機から水漏れ(結露水の漏れ)がないか
 □ 異音や異臭がしないか

 

電源プラグやコンセントに異常が見られたらメーカーや販売店、専門業者に安全点検を依頼しましょう。電源プラグにほこりが付いていたら乾拭きをします。

運転モードを「冷房」、設定温度を最低にして10分程度運転し、室温と設定温度の差が十分にあるにも関わらず、冷たい風が出ない場合は、メーカーや販売店に連絡しましょう。リモコンの不具合は、故障を疑う前にまず電池交換から試してみます。

またさらに20分程度運転した後、室内機からの水漏れや異音・異臭が見られた場合はメーカーか販売店、専門業者に連絡を。

 

熱中症予防に対して、盲点になりがちな4つのことをご紹介しました。どれも油断していると陥りがちなことですよね。ぜひご紹介した対策を実践して、熱中症リスクを少しでも下げましょう。

 

【取材協力】

谷口 英喜先生
医師。済生会横浜市東部病院 患者支援センター長/周術期支援センター長/栄養部部長
麻酔・集中治療、経口補水療法、体液管理、臨床栄養、周術期体液・栄養管理のエキスパート。日本麻酔学会指導医、日本集中治療医学会専門医、日本救急医学会専門医、TNT-Dメディカルアドバイザー。1991年、福島県立医科大学医学部卒業。学位論文は「経口補水療法を応用した術前体液管理に関する研究」。2024年5月に新刊『熱中症からいのちを守る』(評言社)が刊行。その他の著書『いのちを守る水分補給~熱中症・脱水症はこうして防ぐ』(評言社)など。

 

【調査出典】
 三菱電機 霧ヶ峰PR事務局「【4月10日はエアコン試運転の日】夏前にエアコン点検を!試運転を「面倒」と思っている方が40%以上」

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