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黒木華の独壇場…”倫子”の思惑とは? 呪詛騒動、誰が嘘をついている? NHK大河ドラマ『光る君へ』第20話考察レビュー

  • 2024.5.24
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『光る君へ』第8話より ©NHK

吉高由里子が主演を務める大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)。平安時代中期を舞台に紫式部の生涯を描く。伊周・隆家の不祥事により起きた「長徳の変」。その裏では、女性たちの強かさが垣間見えた…。今回は、第20話の物語を振り返るレビューをお届け。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 感想】
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【著者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。

『光る君へ』第20話より ©NHK
光る君へ第20話より ©NHK

藤原伊周(三浦翔平)・隆家(竜星涼)が、花山院(本郷奏多)に向けて矢を放った。矢は外れたが、乱闘で花山院の従者が2人死亡。斉信(金田哲)の妹・儼子に通った帰りだった花山院はこれを公にしないつもりだった。

【写真】三浦翔平、竜星涼の見納めか…?劇中NHK大河ドラマ『光る君へ』劇中カット一覧

しかし、斉信が現場から走り去る伊周と隆家を目撃しており、事の次第は右大臣・道長(柄本佑)の耳にも入る。一条天皇(塩野瑛久)はたいそうお怒りになり、2人に謹慎処分を命じた。

さらに、伊周と隆家は病に伏せる詮子(吉田羊)を呪詛した疑いをかけられる。伊周は道長に、定子(高畑充希)は一条天皇に罪を軽くしてほしいと乞い願い、死罪は免れた。伊周と隆家は遠流に処され、定子も兄弟たちの不祥事により内裏を出ることを命じられる。

だが、伊周と隆家は処分を受け入れず、検非違使が屋敷に乗り込む事態に。そんな中、定子が検非違使の男から刀を奪い、自ら髪を下した。

一方、為時(岸谷五朗)が淡路守に任命され、惟規(高杉真宙)といと(信川清順)は大喜び。しかし、まひろ(吉高由里子)は、漢詩に秀でた父は宋人が多く来訪する越前守の方が適任だと考え、国替えを希望する申文を道長に送る。すぐにまひろの字だと気づいた道長は、為時を越前守に任じた。

『光る君へ』第20話より ©NHK
光る君へ第20話より ©NHK

中関白家の凋落が決定打となった「光る君へ」第20回。絶望の淵に立たされた伊周と隆家の態度が、対比的に描かれた。

一条第から逃げ帰った伊周はガタガタと震えており、思いつめた表情をしている。「行かねばよかった」と後悔ばかりを口にする伊周。対して、矢を射った張本人である隆家はあっけらかんとしているではないか。パニックのあまり、癇癪を起こす兄を呆れた表情で見つめていた。

だが、それはまだ見方が甘かったからだろう。謹慎を申し付けられ、事の重大さに気づいた隆家はまさかというような表情をしていた。けれど、無駄な抵抗もしない。遠流に処された時も、最後まで抵抗していた伊周に対し、隆家は処分を甘んじて受け入れる。

為す術もなく呆然と涙を流す貴子(板谷由夏)に「お健やかに」と笑顔を見せた隆家からは意外な器の大きさを感じた。彼は自由奔放だが、自分が起こした事の責任はきちんと取る男なのだろう。なんだか、ここで退場となってしまうには惜しいくらい魅力的な人物となった。こういう憎めないキャラを演じさせたら竜星涼の右に出るものはいない。

かたや、伊周はどうしようもない。あれだけ反発していた道長に頼る道しか残されていない伊周はプライドも捨て、「なんとか内裏に戻れますよう右大臣様の格別のお力を受け賜わりたく」と乞い願う。

それでも願いが聞き入れられないとなると、「どこにも行かぬ」と屋敷に立てこもる始末。将来有望な貴公子として持て囃されていた頃の面影はもはやどこにもなく、駄々っ子のようになってしまった。ここまで落差を出せるのは、容姿端麗で、かつコメディもお手の物な演技力を持つ三浦翔平だからだろう。

最後まで誇りを失わなかった定子にも注目が集まった今回。一条天皇、そして彼女を敬愛するききょう(ファーストサマーウイカ)との今後の関係も気になるところだ。

『光る君へ』第8話より ©NHK
光る君へ第8話より ©NHK

伊周と隆家が遠流に処されたのは、一条天皇の身内である詮子を呪詛したからだが、これが少し疑わしい。「呪詛はしておりませぬ」と道長に訴える伊周は嘘をついているようには見えなかった。と、すると彼らは誰かにはめられたのだろう。

呪詛が発覚したのは、詮子が病に伏せる中、悪い気を察知した倫子(黒木華)が家人たちに屋敷をくまなく調べさせたところ、無数の呪符が見つかったことによる。詮子は伊周たちの仕業と決めつけ、道長も伊周の息のかかった者が屋敷にいるとみて追及しようとした。

だが、「この一件は私にお預けくださいませ」と道長をたしなめる倫子。最初こそ、息巻いていた道長だが、彼女の意味深な笑顔から何かを悟ったようにこのことを一任する。おそらくだが、呪詛は詮子の自作自演であり、倫子はそれに気づいたのではないだろうか。

そして、それを内々で収めようとした……と思ったのだが、後日、検非違使庁の別当(最高責任者)である実資(秋山竜次)が、伊周が祖父である高階成忠に命じて道長と詮子を呪詛したことがわかったと一条天皇に報告する。倫子に帝にも知らせないと約束した道長は驚いたような表情を浮かべていた。

果たして、誰が嘘をついているのか。考えられる可能性としては4つ。
1.伊周が嘘をついており、本当に道長と詮子を呪詛した
2.詮子が伊周や隆家をよく思っていない実資と結託し、自作自演の上で嘘の報告をさせた(あるいは嘘の証拠をつかませた)
3.詮子が倫子と結託し、自作自演の上で呪詛の情報を広めさせ、かつ嘘の証拠を実資につかませた
4.詮子は倫子の口の軽さを利用し、伊周に呪詛されたことを広めようとしたが、自作自演に気づいた倫子が逆に道長の立場が悪くなることを懸念し、対立関係にある伊周をより確実な方法で貶めた

他の可能性もあるとは思うが、いずれにしても光るのは倫子の“ファーストレディー”としての才覚。右大臣として忙しく働く夫の手を煩わせないように一人で問題を解決しようとした。勘の鋭さ、洞察力、細やかな気配り……。

ほんわかしているように見えて、侮れない。時代が時代なら、彼女こそ優秀なリーダーとなっていたのではないだろうか。父の任地を国替えさせたまひろもそうだが、成功者の影に内助の功あり。

(文・苫とり子)

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