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【国際生物多様性の日】地球の未来を守るカギは「生物多様性」

  • 2024.5.23
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日本は生物多様性が危うい場所⁉ 私たちにできることは?

the_burtons

地球上の生き物は誕生して以来、さまざまな自然環境に適応するために進化しながら、長い時間をかけて、互いにつながりあい、支えあって生きてきた。私たち人間も、その一部。私たちにとっての「おいしい食べ物」「おいしい空気」「住みよい環境」「愛らしい動物たち」「息をのむ絶景」などは、そんな長い時間を経て、生み出される産物。私たちが、この地球の豊かさを感じることができるのには、人間や動植物、自然や気候など、地球上のさまざまな生命や環境の健やかな調和が深く関係している。この調和が、生物多様性のキーポイント。

ところが、いま地球では、毎年1,000~1万種が絶滅しているといわれており、たくさんの生き物にとって、地球は住みにくい場所になっている(WWFジャパン, 2019)。

この現象は、これまで起こってきた生き物たちの進化や適応とは、わけが違う。なぜなら、生き物が絶滅するスピードが圧倒的に速いから。その速さは、人間が関与しない状態で生き物が絶滅する場合の、1,000倍から1万倍になるともいわれている(WWFジャパン, 2019)。私たち人間の行動が、意図せず、ほかの生き物にこんな影響をあたえているなんて、驚愕!

Paul Souders

この生物多様性の重要性を理解するうえで切り離せないのが、気候変動。気候変動とは、温暖化が進むことで、地球全体の気候が大きく変わること。それによって、北極や南極の氷が溶けて海面が上昇したり、台風や大雨が頻発したりするなど、自然環境や私たちの生活に大きく影響をあたえているのは、みんなも知っていること。

地球温暖化が進むと、食べ物が採れなくなったり、住む場所がなくなったりと、生きられなくなる動植物が出てくる。一方で、温暖化によって生息域を広げ、数を増やすものも現れる。すると、長い時間をかけてつくってきた絶妙なバランスのうえに成り立っている動植物の調和が乱れることに。

たとえば、ニュースなどで聞くサンゴが死滅している現象も、地球温暖化による海水温の上昇が原因の一つ。サンゴは、多くの海の生き物たちにとっての産卵したり、生活したりする場所、つまり「おうち」だ。サンゴがいなくなることは、ほかの生き物が家を失い、そのいのちも危うくすることを意味する。ほかにも、サンゴはCO2を吸収して光合成を行い、多くの酸素を生み出してくれる存在。森林と同じように、気候の安定に役立っている。

つまり、生物多様性を守ることは、地球温暖化を止めることにもつながっている。

Solskin

新型コロナウイルス感染症は、動物由来感染症の一つと考えられている。動物由来感染症とは、動物がもともと保有していた病原体が人に感染する病気のこと。この動物由来感染症が、生物多様性が失われることで、私たち人間にたくさん広がるようになってきたとしたら……?

そのメカニズムは、シンプルにいうと、「未知との遭遇」だ。もちろんSF映画のように、どこかから宇宙人がやってくるわけではない。実は、まだ人間によって見つかっていないだけで、すでにいるのだ。宇宙人ではなく、病原体が。地球上には、これまで人間が接してこなかった病原体がたくさんいると考えられている。そうした病原体は、森林の奥深くにいたり、普段人間が接しない動物に感染していたりする。ところが、人間の活動によって、森林が破壊されたり、野生動物との出会いが増えたりすると、その未知の病原体と人間が出会う機会が生まれる。こうして、新しい病気にかかってしまう。そこに最近のグローバル化が一役買い、 未知の病原体が世界へと広がっていく、というわけだ。

このようなネガティブな影響は、感染症だけではない。実は、災害にもおよんでいる。自然は、おいしい食べ物や空気をあたえてくれるだけではない。木々が健やかに根を張ることは、土壌が雨水を吸収することや、土砂災害を防ぐこと、洪水になるのを遅くすることに貢献している。ところが、いまは毎年のように洪水や土砂災害が起きている(内閣府)。頻発する大雨自体は気候変動による影響もあるが、それがさらなる災害を引き起こす要因の一つには、たとえば、人間が使う場所を広げるなどの理由で、山を切りひらき、土地をコンクリートで覆ったり、山肌を削ったり、森林を伐採したりといった生物多様性の損失がある。

自然の豊かさによって育まれた健康な木々や土壌などによりおさえられていた災害のリスクが、高くなってしまっているのだ。

Hiroyuki Uchiyama

実は日本、なかでも南西諸島は、生物多様性が特に豊かでありつつ、同時に危機にさらされている場所「ホットスポット」として認識されている。「まさか日本が⁉」と思う人もいるかもしれない。南西諸島は、日本にしか生息しない動物の宝庫。日本全体の陸生脊椎動物(りくせいせきついどうぶつ)約1,300種のうち約6割が南西諸島に生息している(WWFジャパン, 2021)。ところが、世界自然遺産に登録された4島だけでも、環境省が絶滅のおそれがあるとみている動物は、540種以上(WWFジャパン, 2021)!

また、日頃私たちが生活する地域にも、絶滅が危惧されている生き物がたくさんいる場所がある。河川や湖、湿地、水田やその周辺の水路などを含む「水辺」だ。これらの水辺は、淡水魚や水生昆虫、水生植物にとっての生活の場であり、かつては生物多様性の宝庫だった。しかし、河川や水田水路における生態系に配慮のない改修や、侵略性の高い外来生物の侵入などによって、水辺の生き物の多くはいま、絶滅の危機にある。一昔前は当たり前に見られたメダカやゲンゴロウが、絶滅危惧種になってしまったことを聞いたことがある人もいるかもしれない。

世界には、このように絶滅の危機に直面している動物が4万種以上もあるとか(WWFジャパン, 2023)。そのなかには、小さな草木を踏みつぶし、大きな木々が育ちやすい環境を作ってくれるマルミミゾウ(大きな木々が育てば、CO2を吸収して温暖化防止にも貢献!)や、動物の死肉を食べ、それを植物の生育に必要な物質に変えてくれるミミヒダハゲワシも含まれている。

私たちの生活には関係ないと思う生き物であっても、こうして地球が豊かな場所であり続けるための役割を担っていて、お互いにつながっている。そんな動物たちが大量に地球上からいなくなったら、一体どうなってしまうのだろうか? 想像もつかない。

Grafissimo

ここで、さらに驚きの事実。実は私たちは、生物多様性が失われた先になにが待っているのが、まだわかっていない。もっと具体的にいうと、地球上に何種の生き物が存在するのかすら、把握できていない。哺乳類や鳥類など、大きい動物の種類は把握できているといわれているが、昆虫や線虫、細菌はどうか? これらは全部で何種いるのか、科学者によっては、200万種、または3,000万種という人もいるなど、ばらばら。地球上の生き物の母数がわかっていないので、現在、どれくらいの規模で生物多様性が失われているか、そして、それが私たちの今後の暮らしにどのような影響をおよぼすのか、正確な全体像は見えていない。

そこで私たちにヒントをくれるのが、モアイの石像で有名なイースター島のお話。いまはほとんど木が生えていないイースター島の大地にも、昔はヤシの木などのたくさんの植物が育っていたそう。ところが、島に住む人口が増えるにつれて、人々の暖房や調理用の燃料、生活用具、小屋、漁などに木々が伐採されつづけ、ほぼすべての森林を失い、生き物も激減。さらに、植物も育たなくなってしまったその土地では、人々のあいだで食料をめぐる争いがおこった。争いはつづき、人口も減りつづけ、結局、その島の文明は崩壊してしまったのだという。

この悲劇は、ほかの生き物や自然との調和を無視して、人間が行動した結果、どんな未来が待ち受けているのか教えてくれる。私たちは、遠いご先祖さまが残してくれたこの教訓から学んで、同じ悲劇を生まないことができるはず。イースター島を、地球の未来の姿にしないために。

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