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「彼氏と一緒に…」生田絵梨花が演じる主人公が“モンペ”からの筋違いなクレームに耐える…『素晴らしき哉、先生!』

  • 2024.8.22

教師の労働環境は、悪化の一途をたどっていると聞く。2022年に文部科学省が公表した調査では、教師の月の残業時間は小学校で平均80時間、中学校で平均100時間という結果も。

8月18日から放送がスタートしたドラマ『素晴らしき哉、先生!』(朝日放送テレビ)は、そんな教師の悲哀に光を当てた新鮮な学園ドラマ。新任2年目の教師を演じるのは、ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(2024/関西テレビ)でも印象的な演技を見せた生田絵梨花だ。

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(C)SANKEI

万引きした生徒の証拠を隠滅?教師の過酷な労働環境

医療や恋愛などと並び「学園ドラマ」というジャンルは定番化しつつある。そのほとんどは、学園(学校)が舞台である以上、メインの登場人物は教師と生徒。彼らの交流やぶつかり合いから、愛や成長を感じとる構成であることが一般的だ。

しかし『素晴らしき哉、先生!』は、そんな食傷気味になりつつある枠を覆す視点を取り入れている。生田絵梨花演じる主人公の新任2年目教師・笹岡りおの立場から、生徒やその親、そして職場環境の実態を描き出そうとしているのだ。

8月18日に放送された第1話には、後にりおが担任を務めることになる3年C組の生徒・小村悠馬(橘優輝)が万引きの現行犯で捕まったシーンがある。現場に駆けつけたりおが、必死にその場を収めたことで事なきを得た。

この時点で相当なストレス値を叩き出していても不思議ではないが、あろうことか、小村は「何かご飯でも食べて帰る?」と提案したりおに対し寿司屋に行くことを希望。高いネタを次々と食べて代金を奢らせたのだ。

そのほか、泣く泣く3年C組の担任を引き受けることにしたりおが臨んだ保護者会にて、いわゆる“モンスターペアレント”たちが筋違いなクレームを連発するシーンもある。りおがプライベートの場で、セレクトショップの派手な下着を買っていたことや、彼氏と一緒にお酒を買っていたことなどをあげつらう親たちの姿が目立った。

彼らは「3年生は大事な時期だし、若い先生だと不安」と巧妙なオブラートに包みながら意見しているが、要は「若い女に責任のある仕事は務まらないだろう」と女性蔑視スレスレの発言をしているにすぎない。

本編には、新任の教師の“親”から「うちの子を休ませます」と電話がくることもある、といったエピソードも出てくる。生徒ではなく、教師の親から、職場である学校に電話? と信じがたい思いだ。教師の過酷な労働環境を描くうえで、実に生々しく胸に残る。

疲れてる……?生田絵梨花の表現力に期待

生田絵梨花が演じるのは、主人公である新任2年目の教師・笹岡りお。社会に出たばかりのフレッシュさがありつつ、かつ「適度に疲労している」様子も感じ取れる。その見せ方が絶妙だ。

こういった学園ドラマで、しかも新任教師が主人公となれば、どうしたって元気で明るく新鮮なテンションが求められがちである。

しかし、このドラマは学園ドラマといっても、現代の教師が陥っている過酷な労働環境や、モンスターペアレントと呼称される親たちとのバトルに主軸を置いている。ドラマそのものの作風や、日曜夜22:00放送の時間帯、それによる視聴者層まで考えると、生田絵梨花の言葉にできない細やかな表現力なしには「新任2年目だけれど、そこそこ疲れている教師」は体現しにくいだろう。

このドラマのキャッチコピーは「先生も、自由で悪いか」。どこかYouTubeの基本理念である「好きなことで、生きていく」を彷彿とさせる。多様性という言葉が浸透した、個人の特色を尊重することが絶対視される時代。性別や国籍、職業に関係なく他者をとらえる、寛容さが重視される現代。

それにも関わらず、警察官や消防士が制服姿で、コンビニに入店しドリンクを買う行動は、好意的に受け取られない。スーパーのレジにいる店員が水分補給をしているだけでクレームが飛ぶ。本編で描かれていたように、教師が外でお酒を買っていたら見咎められるのも、あながち非現実ではないのだろう。

舞台、ドラマ、映画と表現の場を増やしてきた生田絵梨花が臨む、初の連ドラ主演作『素晴らしき哉、先生!』。彼女が演じる笹岡りおは、生徒との信頼関係を構築し、親たちからも立派な教師と認められるようになるのか。それとも「自由な先生」を掲げ、自分らしさを追い求めていくのか。期待が高まる第1話だった。



ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。
X(旧Twitter):@yuu_uu_

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