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目黒蓮演じる主人公が“犯した罪”とは?母が怒りを滲ませたワケ『海のはじまり』に同情の声

  • 2024.8.2

7月29日放送『海のはじまり』第5話で、主人公・月岡夏(目黒蓮)はようやく、娘・南雲海(泉谷星奈)の存在を家族へ報告した。「やっとか」と思う視聴者が続出するなか、想定外の知らせを受け取った夏の母・ゆき子(西田尚美)と、父・和哉(林泰文)の反応の違いが際立った。

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(C)SANKEI

息子へ“無責任さ”を突きつけた母の勇気

7月29日に放送された『海のはじまり』第5話にて、娘・海の存在を報告しに、実家へ帰る夏のシーンがある。母・ゆき子はウキウキとコロッケを揚げ、父・和哉も、弟・大和(木戸大聖)も、夏の帰りを心待ちにしている様子だ。

それもそのはず、夏は現在の恋人である百瀬弥生(有村架純)と結婚秒読み段階であり、月岡家は「結婚報告」だと疑っていない。だからこそ、そわそわと忙しないのだ。

しかし、視聴者にとっては承知のとおり、夏の報告は決して喜ばしく終わるものではない。娘の海がいること、その娘は弥生との子どもではなく、大学時代に付き合っていて現在は亡くなっている南雲水季(古川琴音)との子どもであること、年齢は7歳であること。

言葉が上手くない夏が、たどたどしく、しかし一言ずつ丁寧に現状を説明してみせるシーンに、SNS上ではやるせなさと同情が集まった。

夏の言葉を受け、母のゆき子はまっすぐに、怒りさえ滲ませた態度で叱ってみせた

大学時代に恋人を中絶させようとしたこと、その事実を家族に黙っていたこと、その理由を「心配をかけたくなかった」と手頃な優しさで包んだこと、それは優しさなどではなく、夏が男性であるがゆえに「隠し通せると思った」からこその、傲慢さからくる嘘であったこと。

母に面と向かって叱られるまで、まだ夏は心のどこかで、中絶しようとしたことは「水季の選択である」と、免罪符にすがっていたのではないか。自分はほかの選択肢を示そうとしたけれど、水季が頑なに中絶することを選んだのだ、と責任を分配して楽になろうとしていたのではないか。

そんな逃げを、ゆき子は許さない。たとえそれが、結果的に中絶していなかったとしても、水季に「中絶させようとした」事実は消えない

精神的負担はもちろん、身体的負担まで彼女に強いたこと。女性が負う荷物の重さを無視し「知らなかった」で済ませるのは、無責任であること。ゆき子は、水季と同じ女性としての立場から、男性である夏がやったことを目の前に突きつけてみせた。

その後、ゆき子は態度を一変させ、今度は母の立場から、息子である夏を許している。飴と鞭の使い分け、というと手垢がつきすぎた表現だが、これぞ母であると思える模範的な態度に終始するシーンだった。

なぜ母は叱り、父は許したのか?

ゆき子の反応と対照的だったのが、父・和哉と弟・大和の言動である。

弥生とではなく、水季との子どもがいることを口にした夏に対し、和哉と大和はどこか反射的に「夏を擁護する姿勢」を見せた。夏が、詳しい状況を説明する前の、半ば本能的なその反応は、どうしてもゆき子の言動と対比せずにはいられない。

母は叱り、父は許す。おそらく、男女の「超えられない差」を表現するために意図的に組まれたであろう当シーンを見ていると、やはり“産める性”と“産めない性”の分断は、そう簡単には埋められないのだ、と思えてくる。

和哉と大和がとっさに夏を庇ったのは、夏という人間が、考えもなしに恋人に酷いことをする人間ではない、とわかっていたからかもしれない。しかし、それと同時に、男性だからこそ何もできない、手を出したくとも出せない歯がゆい領域があることを、知ってしまっているからこその反応だった。

男性は、女性を“妊娠させてしまえる”立場にある。産むことも、産まないことも、女性にしかできないことなのに

本作『海のはじまり』は、いかにして人は父になるのか、そして母になるのか、その過程を丹念に追いながら、家族愛や人間愛に迫っていく物語である。逃れられない男女の性差を描きながら、どこまでも愛について語る姿勢を崩さない、このドラマの魅力はまだまだ底が知れない。



フジテレビ系 月9ドラマ『海のはじまり』毎週月曜よる9時

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。
X(旧Twitter):@yuu_uu_