1. トップ
  2. 有村架純が演じる“月9ヒロイン”に賛否…母親になりたい理由は「罪滅ぼし」か

有村架純が演じる“月9ヒロイン”に賛否…母親になりたい理由は「罪滅ぼし」か

  • 2024.7.22

やはり、血の繋がりがないと親子関係は育めないのだろうか。月曜よる9時放送ドラマ『海のはじまり』(フジテレビ系列)にて描かれるのは、目黒蓮演じる月岡夏と、亡くなった元恋人・南雲水季(古川琴音)との間に産まれた娘・海(泉谷星奈)との父子関係。夏の現在の恋人である百瀬弥生(有村架純)は、二人の関係に入っていこうとするが……。

undefined
(C)SANKEI

受け取られなかったハンカチのゆくえ

大学時代に付き合っていた元恋人・水季との間に子どもがいたことがわかる、というセンセーショナルなスタートが話題のドラマ『海のはじまり』。Snow Manの目黒蓮が父親役を演じる点でも注目を集めている本作において、目黒蓮演じる夏の現在の恋人・弥生の言動にさまざまな声が集まっている。

水季の葬儀の場で会うことになった夏と、娘の海。海は、母親である水季から「夏くん」の話を繰り返し聞いており、実際に会えた嬉しさで何度も彼に会いにくる。弥生は、海が親戚の子などではなく、夏と血の繋がった実の娘だとわかると、最初は困惑するも「母親になる」意思を示す

7月15日に放送された第3話では、夏と弥生、海の3人で出かけるシーンがあった。水季が働いていた図書館へ一緒に行く過程において、弥生は「これ、写真撮ってほしいやつだ」「3人のこの感じ、絶対、憧れのやつになってる」と口にする。

その後、無事に海を南雲家へ送り届けた夏と弥生。水季の母親であり、海の祖母にあたる朱音(大竹しのぶ)に対し、弥生は「楽しかったです」と強調する。弥生には、過去に妊娠するも中絶せざるを得なかった過去があり、その後悔が「憧れ」「楽しかった」という言葉に繋がっていると想像できる。

着実に、海の母親になる心づもりをしているように見える弥生。しかし、母親である水季が亡くなっても、目立って悲しがる様子を見せない海に対し、夏が「なんで元気なフリするの?」と繰り返し問いかける姿勢に、違和感を抱く。

泣き出してしまった海に「頑張って元気にしてたんだよね、えらいよ」と言いながらハンカチを差し出す弥生。しかし、それは受け取られない。海は夏に抱きついて、我慢していたぶんの悲しみを一気に放出するように泣く。

無理やりで安易なたとえだが、弥生が海に対して差し出したハンカチは“母性の象徴”にも見える。血の繋がりはないけれど、新しい母親としてあなたと関係性をつくっていきたい、そんな意思表示ともとれるハンカチだが、海には受け入れられなかった。

やはり、親子関係を育むためには、血の繋がりが必要なのだろうか。夏自身も、父親や弟と血縁関係にない。「家族」と「血の繋がり」は、このドラマにおいて大きなキーワードとなっている。

母親になりたい理由は、過去を払拭するため?

海と出かけたあとの弥生の言動を、朱音は「あの子、お母さんやれますって顔してた」と評している。弥生が夏と結婚し、海の母親になりたい意思があるのは明白だ。なぜ、弥生はそうまでして母親になりたいのだろう。

前述したように、弥生は過去に妊娠し、中絶手術をした経験がある。そのやりとりは、大学時代の夏と水季がした受け答えと酷似していて、違うのは、産んだか、産まなかったかに尽きる。

第2話において、妊娠していた当時のエコー写真を、未だ大事に保管している様子が描写された。中絶したこと、産まなかったことを、弥生は明確に後悔している。シンプルに考えれば、当時の後悔を払拭するため、命を終わらせてしまった罪滅ぼしをするために、弥生は海の母親として名乗りを挙げようとしているのだろう。

産まなかった人生と、産んだ人生。母親にならなかった人生と、母親になった人生。どちらも尊重されるべき、数ある人生のうちの一つで、正誤や善悪で語るものではない。ましてや、優劣でもない。

ただ一つ言えることは、弥生は心から「母親になる人生」を欲している、ということ。自分の子ではないけれど、好きな相手の子なら母親になれる自信がある、と思っていること。

母親になろうとしている彼女には、大きな試練が待っている。それは、血の繋がりがある父子を目の前にして、常に疎外感を持ちながら一緒に暮らさなければならない事実だ。一人でいるよりも色濃く迫るであろう孤独と、彼女はどう向き合っていくのか。



フジテレビ系 月9ドラマ『海のはじまり』毎週月曜よる9時

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_