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[3]参考にしたい!見た目だけでなく賢さもポイント!平安時代の全方位『女子力』にみるキレイの秘密|キレイ今昔物語

  • 2024.5.23
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ドラマが話題となっていることもあり、注目される平安時代。
歴史を習う中でも、戦など血生臭いできことが少なく、十二単に代表される優雅な平安ファッション、女流作家が活躍した和歌や物語など文学の世界など、平安時代が好きという方も多いのではないでしょうか?
3回にわたってお送りしている、化粧品開発者の目で見た、平安女子が目指した「キレイ」について。
最終回のテーマは、平安女子が身に付けていた「女子力」についてです。

平安美女の必須アイテム「香り」

あまり洗髪できない平安女子は、髪に香の香りをつけて楽しんでいました。
この時代、髪以外にも「香り」は男女問わず必須アイテム、香を嗜むのは当たり前でした。
衣服に香りを薫きしめたり、文にそっと自分の香りを添えたり・・・。
薫物合わせなんていう、それぞれが自慢の香りをもちより、競い合うイベントもおこなわれたほど。
源氏物語の主人公は光源氏ですが、光源氏の死後となる宇治十帖での主人公は、光源氏の息子の薫になります。
彼はその名のとおり、生まれたときから自然と良い香りがするという体質の持ち主。
かなり強い香りで、こっそり女性の元を訪れようとしても、香りでバレてしまうほど。
もちろん、家柄も良く良い香りの薫はめちゃくちゃモテます。
薫のライバルとして登場する光源氏の孫である匂宮は、薫への対抗意識からか、香をめちゃくちゃ薫きしめた服を着ています。
「匂う兵部卿、薫る中将」なんて呼ばれてしまうほど。
自然と香りを発する薫の奥ゆかしさと、匂いを自ら纏う積極的な匂宮の性格まで香りで表されており、当時の香りへの関心の高さがわかりますね。
匂いは記憶と深く結びつくことが分かっており、特定の香りによって何かを思い出すことは「プルースト効果(現象)」と呼ばれています(出典:Scientific Monthly, New York, 41(1935), 126–130.)。
フランス人作家マルセル・プルーストが「失われた時を求めて」という小説の第1篇(1913刊行)にある、主人公が紅茶に浸したマドレーヌを口にしたとたん子どものころの記憶を取り戻す・・・というシーンが由来となっています。
平安貴族は、このプルースト効果を最大限に利用していたのかもしれません。
例えば、最初に出会ったときに自分の香りの印象を残しておいて、関係がマンネリ化したときなどにその香りを文や贈り物につけて送ると、受け取った相手の当時の情熱が蘇る・・・という可能性も。
現代にも応用できそうですね。

ファッションの要は色!え、自分で染めてるの?!

十二単に代表される平安ファッション。
平安女子にとって、書や和歌、雅楽などと並んで実は重要だったのが染物や織物、縫い物の腕だったといわれています。
令和女子が女子力を高めようとしたときに、「裁縫の腕をあげよう!」と思う方は少ないかもしれません。
当時の貴族の邸宅には、なんと染物や縫物用の建物が用意され、大きな所で数十人規模の人が働いていたそう。
平安女子の鑑ともいえる、源氏物語の紫の上も縫い物が得意であったことが記されています。
もちろん琴や和歌の腕前もばっちりで、光源氏を虜にする女子力の高さはさすがです。
当時は自分の衣装のみならず、夫や子供の着る服を縫うどころか、糸を染めて織って仕立てるところまでになっていることも珍しくなかったそうで、平安女子たちの達者ぶりが伺えます。
自分で染めるほど、こだわりのあった着物の色。
当時は何枚も重ねて着るものであり、色の調和がとても重要視されていました。
自分のセンスはもちろんですが、身分・位やTPO、季節や流行などに合わせて、さまざまな色を選び、組み合わせを楽しんでいたようです。
季節外れの色を選んでしまうと、冷ややかな目で見られてしまう可能性も!
清少納言が枕草子「すさまじきもの」にて、
『すさまじきもの。昼ほゆる犬、春の網代。三、四月の紅梅の衣。牛死にたる牛飼ひ。・・・』
と、三、四月(旧暦)に着る紅梅の着物は興醒めするときっぱり書いています。
紅梅が咲くのは年の初め頃。
桜が咲くような季節になっても紅梅を着ているなんて、「“をかし”じゃない(イケてない)!」と清少納言は思ったのでしょうね。
現在も、季節の先取りはオシャレとされますが、季節外れのものはイマイチとされます。
当時も同じような感覚だったのかもしれませんね。

見た目だけじゃない!実は「賢さ」も重要ポイント

長い髪を垂らし、華やかな着物に身を包んでいた女性たち。
でも、外見だけでなく「賢さ」も、魅力を語る上で実はとても重要なポイントでした。
平安時代の伝説級のモテ女といえば和泉式部。
中流階級出身の和泉式部(既婚子持ち)は、弾正宮(天皇の息子)と身分違いの恋に落ち、スキャンダルを巻き起こしたかと思えば、宮が若くして亡くなると、今度は宮の弟である敦道親王から求愛されるというモテっぷり。
和泉式部の魅力としてあげられるのは、和歌の見事さです。
和泉式部は藤原道長の娘、中宮彰子に和歌の才能から仕えることになるのですが、道長と和泉式部には面白いエピソードがあります。
道長が和泉式部の扇に「浮かれ女の扇」と落書きをするのですが、そのお返しに和泉式部が扇に和歌を書き足します。
「越えもせぬ 越さずもあらむ 逢坂の 関守ならぬ 人な咎めそ
→恋人に会うも会わないも人それぞれ。関守でもないくせに、私のことを咎めないでね」
時の権力者である道長にも容赦のないお返しです。
恋愛の時に歌う情熱的な歌と同様、まっすぐな気性が彼女の歌の魅力であり、才能なのかもしれませんね。
同じく彰子に仕えていた紫式部も、紫式部日記の中において
「和泉式部といふ人こそ、おもしろう書きはしける
→和泉式部という人は、とても趣のある手紙を書く人です」
と、その文才をある程度は評価しています。
「しかし和泉はけしからぬかたこそあれ
→だけど、和泉式部には感心できない一面もあります」
と、そのスキャンダラスな生き方に関してはしっかり釘を刺しているところが、紫式部らしいといえるのかもしれません。
現代の恋で、手紙を送り合うようなことはほぼないと思いますが、メールやメッセージ上のちょっとした一言が相手の心を捉えるというのは現代も同じ。
気軽に送れるからこそ、細やかな心配りや思いを相手に伝えられるといいですね。
美文字に自信のある方は、ここぞというときに自筆の手紙をおくると、他の女性とは違った魅力をアピールできるかもしれません。
さらに平安女子は、考え抜いた内容の和歌を、季節の花や思いに合った植物に結び、自分の香りをつけて、意中の殿方に送っていました。
思いの強さやセンスをアピールする手紙に香りに添える・・・令和女子も参考にできそうですね。

髪を長く美しく保ち、香りを重視し、自ら糸を染める所から始めるほどこだわったおしゃれな装い。
思いを伝えるためにはもちろん、時には機転を利かせるような和歌を詠み、美しい文字で書き記す。
・・・平安女子のパワー、恐るべし!
令和を生きる私たちも見習いたいものですね。

参考文献
鳥居本幸代「平安朝のファッション文化」(2003)春秋社
服藤早苗「源氏物語」の時代を生きた女性たち(2023)NHK出版新書
福家俊幸紫式部 女房たちの宮廷生活(2023)平凡社

[執筆者]


船木 彩夏
化粧品メーカー研究員

[出演情報]
2023.12.2 TBSラジオ:井上貴博 土曜日の「あ」

<資格>
・サプリメントアドバイザー
・健康管理士一般指導員
・健康管理能力検定1級

[監修]キレイ研究室編集部

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