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「子どもは21時に寝かせなければ」に医学的根拠なし…小児科医が示す「結局何時間寝かせればいいか」の最終結論

  • 2024.5.23
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共働き家庭にとって、子どもを21時に寝かせるのは至難の業だ。結局何時から何時間、寝かせるのがいいのか。小児科医の森戸やすみさんは「何時に寝かせるべきという基準はない。次の日の午前中の機嫌がよければ睡眠不足を心配しなくていい」という――。

幼児
※写真はイメージです
育児の中でも最難関種目

子育ての悩みは尽きない。とりわけ「子どもを寝かせる」は育児の中でも最難関のひとつではないだろうか。寝かせようとしても思うように寝ないのが当たり前で、特に子どもが赤ちゃんの頃、保護者は限界を超えた極限の睡眠不足を余儀なくされる。しかしそれでも「きちんと寝かせなければ子どもがちゃんと育たない」というプレッシャーを背負い込んで、一線を超えてしまいそうな自分を何度も押し留めて、それを毎日毎日繰り返しやるのである。僕の子どもはもう5歳になったけれど、思い出しただけで「病むな」というのはもはや無理、と思えてくるような体験だった。

今回お話をうかがったのは、小児科医の森戸やすみさん。森戸さんは専門的知識とご自身の育児経験から育児にまつわる「怪しげな言説」や「不必要な思い込み」を、客観的データを用いながら公平にバッサバッサと切っていかれるような人である。高著『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』(内外出版社 2020年)は、子ども第一でありながら保護者にしっかりと寄り添う姿勢が印象的だった。

睡眠に関する説が「出ては消える」を繰り返すワケ

――子どもを寝かせる時間について悩んでいる保護者は多いようです。特に近年は共働き世帯が増え、帰宅してからどれだけ急いでも寝る時間が遅くなってしまうという話をよく聞きます。保護者は、理想通りに子どもが寝かせられないことについて責任を感じがちです。また、その“理想”というのも「9時までに寝ないと」だったり、「22時からのゴールデンタイムを」だったり色々な情報があって、何が正しいのかわかりにくいという現状です。

【森戸】結局「どうしたら子どもを寝かせられるか」や「どうしたら親ももっとそこに楽に関われるか」というのは決定打がないので、色んな説や寝かし付け方が現れては消えを繰り返しています。

「子ども 寝ない」「赤ちゃん 寝ない」で検索すると、サジェストワード含めて膨大に出てくるし、「baby sleep」などの英語で検索してもたくさん出てくるので、世界中の人が困っているのだと思います。

――全世界共通の悩みなのですね。たしかに、私も検索した経験があります。

【森戸】あと、子どもが泣いちゃって寝ない場合、「子どもが泣き止まない」「思うように寝てくれない」というのも保護者にとってすごくストレスなんですよね。

「9時に寝ないとキレる子になる」に根拠はない

――親が「その時間までに寝かせなければ」とプレッシャーに感じている部分も大きいですよね。

【森戸】たとえば「午後9時に寝ないとキレる子になっちゃう」という説に根拠はないんです。「何時から何時まで寝てなくてはいけない」ということにも同様に根拠がありません。

「大体同じ時間に寝る」のがいいんですね。“概日リズム”や“サーカディアン・リズム”というんですけど。大体同じ時間に同じことをすることで、毎日のリズムができて、ホルモンの分泌に合わせてスムーズに行動できたり交感神経と副交感神経のバランスもよくなったりします。

子どもの問題行動……保護者にとって問題に感じられる子どもの行動が起こりやすいのは、そういったリズムがなく、毎日バラバラな時間に寝るケースに見られます。例えば21時以降に外出することが週2回以上ある、布団に入ることが23時以降になることが週4日以上ある、外出先からの帰宅が21時以降になることが週3日以上あるといったことです(神山潤 日本小児科学会雑誌 vol.115 2011)。

目覚まし時計
※写真はイメージです
保育園での昼寝をカウントしてOK

――保育園のお昼寝は、子どもの睡眠としてカウントしていいものなのでしょうか?

【森戸】もちろん、カウントしていいです。

――2時間くらいは寝てますからね、保育園で。

【森戸】そうなんですよ。丸々2時間寝ちゃったあとに、7時に帰ってきて9時なんかに寝られないですよね。ご飯を作って食べさせて、お風呂に入れて、歯を磨いて……で何かあると押せ押せで遅くなっていくものです。「実は大きな声では言えないけれど、いつも寝かせるのが10時なんです」と言う方もいるんですけど、「いやあ皆さん、そんなですよ」って外来でもお話ししています。

――10時でも大丈夫なんですね。

【森戸】はい。何時に寝るかよりも同じ時間に寝て、リズムを整えることを意識するのがいいと思います。

――なんか、「9時までには寝かせるべし」という思い込みがある気がします。

【森戸】ええ、なぜ9時なのかよくわからないのですけど。幼稚園の子で「毎日8時に布団に入れます。でも2時間寝ません」といった話もよくあります。それは「8時じゃなくて9時に寝かせれば1時間で済むからいいんじゃないですか」とお話をするんですけど。2時間も「なぜ寝ない……」と思いながら添い寝していたら親もイライラするし、親のイライラは子どもにも伝わってしまうし、お互いに良くないと思うんです。8時にスムーズに寝て朝早く目覚める人だったらいいんですけど、子どもがそうとは限らないですよね。

――では、基本的には子どもが寝たくなるちょっと前に布団に入ればいいと。10分前とか。

【森戸】そうですね、10分前でもいいと思います。

22~2時の「ゴールデンタイム説」のウソ

――“ゴールデンタイム”についても驚きました。22時~深夜2時までの睡眠時は成長ホルモンが活発に出るといわれている、いわゆる“ゴールデンタイム”について、「実は違う」ということなのですが……。

【森戸】“ゴールデンタイム”は成人男性を対象に調査したもので、女性や子どもに関するものではないんですよ。成人女性は日中の覚醒しているあいだにも何度も成長ホルモンの分泌ピークがあります。それに、夜まとまった睡眠をとった場合も、分割してとった場合も含めて1日に分泌される成長ホルモンの量が一定であることがわかっています。

子どもの場合、産まれたころは3時間おきくらいに寝たり起きたりを繰り返します。それが段々まとまって寝るようになってくるんですけど、4カ月から6カ月くらいになると、睡眠時に成長ホルモンがたくさん出るようになります。それは寝るたびに出るんです。お昼寝でも出ます。

幼稚園
※写真はイメージです
成長ホルモンは入眠直後によく出ている

――「何時から何時に寝て……」というのは関係ないということですね。「何時間以上寝たほうが成長ホルモンは出やすい」といったことはあるのでしょうか? たとえば30分以上寝たら出始めるとか。

【森戸】睡眠に入った直後が一番出るとされています。

――えっそうなんですか。それは興味深い。

【森戸】あんまり長く寝るような寝溜めは意味がないというのはそういうことなんじゃないかなと思うんですけど。

――僕も22~2時のゴールデンタイムが万人に当てはまるものと思っていたので、森戸先生の書かれた「実は違う」というのを読んで衝撃を受けました。

【森戸】そうなんですよ。でもSNSで私がそういう内容を投稿するたびに「ゴールデンタイムはあるはずだ」という反応がくるんです。その趣旨の記事を書いた時も「いいや、そんなの信じない」と。「だって自分は、それを実践してお肌がツルツルになったもん」ということらしいのですが。

――一時期は女性誌などで結構紹介されていたので、広く信じられているのかもしれません。

【森戸】他の要因でうまくいく(肌がキレイになる)ケースもあるのでしょうが、「その時間に寝れば女性の肌がキレイになる」という研究ではないので、ちゃんと元を辿るなどの注意が必要です。

結局、何時間寝かせればいいのか

――では子どもの毎日の睡眠時間に関して、お昼寝も含めてトータルで「何時間寝たほうがいい」といった指標はあるのでしょうか?

【森戸】アンケートはあるんですけど、それぞれの子どもの適性がどれくらいかというのはわからないんですよね。

――なるほど。個人によって違うということですね。

【森戸】そうですね。個人差もあるし、あと文化差とか人種の差って大きいんですよ。世界中の子どもの睡眠についてアジア人が多い国と白人が多い国を調査したところ、ニュージーランドの子どもが一番よく寝ていて13時間以上、東アジアの子はあまり寝なくて、日本が最下位で11時間台でした。

でもニュージーランドやヨーロッパの子たちって親と別室で寝る習慣があるので、親は子どもが寝たと思っているけど子どもは実はベッドの中で起きている……かもしれないので、調査結果と実情にいくらかズレが生じている可能性はあります。

睡眠の専門家の神山潤先生が書いた本に、「翌日の午前中に子どもが機嫌よく起きていられたら睡眠不足はないでしょう」とあります。それが信頼できる基準だと思います。

――なるほど。それはわかりやすい判断基準ですね。

【森戸】だから大人でもショートスリーパーや、反対に「長く寝ないとダメだ」という人がいるように、子どもでもそんなに寝る必要がないお子さんもいるんでしょうし。だけれども、翌日午前中に機嫌よく起きていられるなら、それはその子にとって充分なんでしょう、ということです。

母と小さな娘
※写真はイメージです
子どもを見ながら判断していけばいい

――では「子どもだから○時間寝なくちゃいけない」と決め込むのはあまりよろしくないのかもしれませんね。それが保護者のプレッシャーになることもあるだろうし。

【森戸】そうですね。「寝ないと子どもがとんでもないことになってしまうのではないか」という不安が、保護者の方にはあるのだと思うんですね。

たしかに、短すぎる睡眠はよくないんですよ。肥満につながったり、お友達に暴力をふるうなどの困った行動・問題行動につながったりする可能性はあるんですけど、「何時間寝たらそれが予防できる」と一概に言えるものでもないので、その子にとってその睡眠時間が充分だったらそれでいいのです。

――なるほど。子どもの様子を見ながら適切な睡眠時間を探っていくのですね。

【森戸】そうです。「なんかどうも機嫌が悪いから今日は早く寝かせなきゃ」とか、お子さんを見て判断すればいいかと思います。

「習い事で就寝時間が遅れる」という悩み

――習い事を平日に入れると、寝る時間がどうしても後ろ倒しになってしまうのですが、そのあたりはどう考えればいいのでしょうか?

【森戸】うーん……以前にも聞かれたことがあるんですけれども、「中学受験をするので、小学生が9時まで塾で、そのあとお風呂に入って学校の宿題をやって寝ると、本当に睡眠時間が少なくなってしまって、どうしたらいいでしょう?」と。

それはご家庭ごとに何を大事にするかだと思います。たとえば「受験前の1年間だけだから、別の時に睡眠を取るようにしてがんばらせよう、そのあとの人生につながるから」という考え方もあるでしょうし、「小さいうちに色々習い事するよりも、早寝早起きで長い睡眠時間を確保したほうがいい、子どもは子どもらしく過ごしたほうがいい」というご家庭もあるかもしれないし。一概にはいえないですね……。

本人がやりたくないのにそこまでやらせて寝不足でとなると、何のためにそうしているのかと思えますし、やりたいんだったらやらせてあげたいし。

勉強している子供の手
※写真はイメージです

――本人の納得感も大事にしてあげたいですね。

【森戸】そうです。

――各家庭でよりベストな形や、その子にとって理想的な睡眠時間を模索していくのがよさそうですね。森戸先生に示していただいた考え方は、きっと多くの保護者の不必要なプレッシャーを取り除くことと思います。ありがとうございました。

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