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巨匠絶賛…和製SFの名作は? 世界で高評価なSF日本映画(2)かっこよすぎ…無国籍感で世界を魅了する傑作

  • 2024.5.23
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主演の三上博史【Getty Images】

日本では、潤沢ではない製作費により、SF映画がチープなものになってしまう。それと同時に、海外でも上映される作品や賞を取っているものなど、角度のついた設定のSF映画も数多くある。今回は、クエンティン・タランティーノやスティーブン・スピルバーグなど、名だたる巨匠が絶賛している、日本のSF映画を紹介する。第2回。(文・ニャンコ)

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『スワロウテイル』(1996)
上映時間:106分
監督:岩井俊二
脚本:岩井俊二
出演者:三上博史、江口洋介、Chara、伊藤歩、渡部篤郎、アンディ・ホイ、桃井かおり、大塚寧々、山口智子

【作品内容】

架空の日本「円都(イェン・タウン)」を舞台に、移民たちの生きざまを描いた映画。娼婦グリコ(Chara)が、母を失い行き場を失った少女アゲハ(伊藤歩)を引き取り、二人は厳しい現実の中で生きていく。

監督・脚本は岩井俊二、出演者には三上博史(ヒオ・フェイホン)、江口洋介(リョウ・リャンキ)。独特の世界観と音楽が特徴であり、国内外から高い評価を受け、日本アカデミー賞優秀作品賞をはじめ複数の賞を受賞した。 美術を手掛けた種田陽平のビジュアルスタイルは国際的な影響を与え、日本映画の地位を高めた作品である。

【注目ポイント】

1996年に岩井俊二監督・脚本によって制作された映画であり、架空の都市「円都」を舞台に移民たちの生きざまを描いている。その独特の世界観と音楽、そして美術デザインにより、公開から30年近く経った現在に至るまで、映画ファンを虜にし続けている。

犯罪映画であり、青春映画でもあり、音楽映画でもある本作。舞台となる「円都」は「架空の歴史をたどった日本にある街」という設定であり、SF映画としての資格も十分に有していると言えるだろう。劇中のモノローグでは“「円」が世界で一番強かった時代”と語られ、バブル崩壊が起きなかった日本が辿ったかもしれない運命、歴史のif(もしも)を描いており、歴史に対するSF的な想像力が駆使されている。

登場人物達が日本語、英語、中国語(そして、それらを混ぜた言語)を話す無国籍風な世界観は、時代をはるか先取り。本作で美術監督を務めた種田陽平は、後年、映画『キル・ビル』(2003)で美術を手掛けることに。彼を起用するにあたって、本作がクエンティン・タランティーノに与えた影響も少なくないのではないだろうか。

ちなみに、岩井俊二作品はアジア圏で人気が高く、劇場用長編第1作『Love Letter』は、日本での劇場公開から4年後の1999年に韓国で封切られるや、140万人の観客を動員する大ヒットを記録。実質的に「初めて韓国で大ヒットした日本映画」として知られている。

話を『スワロウテイル』に戻そう。この作品を独創的にしている要素の一つにサウンドトラックがある。特にCharaがボーカルをとる主題歌『Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜』は、映画の幻想的な雰囲気を一層際立たせて止まない。

このように本作は、ストーリー、ビジュアル、音楽、そして国内外からの支持により、1990年代の日本映画を代表する作品の一つとして、今なお多くの人々に愛され続けている。

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