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後悔しない人生のための三つのステップ。19歳・八海(畑芽育)が見つけた目印 『9ボーダー』5話

  • 2024.5.22

19歳・29歳・39歳。節目の年齢を目前にした三姉妹が「LOVE」「LIFE」「LIMIT」の「3L」について悩み、葛藤し、それぞれの答えを見つける過程を描くヒューマンラブストーリー『9ボーダー』(TBS系)。第5話、ついに三女・大庭八海(畑芽育)が高木陽太(木戸大聖)に想いを告げる。

19歳・八海は『とにかく、進む』

記憶喪失のコウタロウ(松下洸平)が働いているバルの店主・辻本あつ子(YOU)が八海(畑)に言う。「好きなら好きって言う。イヤならイヤも言う。だから私いま、後悔なしよ」「そう言い切れる59歳、憧れるでしょ」と。

このドラマは、大庭家の長女・六月(木南晴夏)39歳、次女・七苗(川口春奈)29歳、そして、三女・八海19歳の『ナインボーダー』にいる三姉妹の動向に注目してしまうが、59歳のあつ子も境界線上にいたのだ。

自分がやってきたことに、これまで進んできた人生に、後悔なしと言える59歳。その地点に到達するためには、好きなら好き、イヤならイヤ、と伝えること。シンプルだからこそ難しいアドバイスに思えるが、かねてより陽太(木戸)への想いを隠しきれずにいた八海は、ついに彼へストレートに「好き」と伝えることができた。

後悔なく生きるため、自分の選択や人生そのものに納得するため、八海は行動を起こした。そして、ずっとなあなあにしてきた自身の進路についても、一つの“目印”を得る。あつ子のバルで働くことに決めたのだ。

なんだかんだ、自分のやりたいことを見つけては突き進んでいく六月や七苗の後ろ姿を、ずっと眺めていた八海。それでも、彼女自身に本当にやりたいことがなかったわけではないだろう。

失敗を恐れてか、はたまた、やりたいことを表明するなんて不相応だと思っていたのか。恋も進路も停滞していた八海だが、あつ子の言葉から推進力を得て、少しずつエンジンを稼働させ始めている。19歳の八海には、失敗も含めてとにかく前に進む姿が似合う。

29歳・七苗は『時に、立ち止まる』

会社を辞めたのと同時に、コウタロウとの関係も霧散しかけていた七苗だが、彼が戻ってきてくれてからはすべてが順調のようだ。経営が傾きかけている、実家の銭湯『おおば湯』を再興させる案を練ったり、コウタロウが大庭家に同居することになったりと、彼女にとって良い風が吹き始めたように思える。

後悔しない人生を送るため、29歳の七苗がとった行動は立ち止まることだ。

20代の彼女は仕事に邁進してきた。出世の階段を上り、後進を育てるべくマネジメントの立場に就くことにもなった。そんな仕事中心の生き方を、七苗自身は決して後悔していないはず。それでも、会社を辞めて時間ができた彼女には、ゆっくり立ち止まって自身を振り返る必要があった。

このままで、いいんだろうか。もっと、やりたいことがあったんじゃないだろうか。

根本的な欲望に立ち返るためか、七苗は『やりたいことリスト』をつくった。挙げた項目の中には些細(ささい)なものもある。気になっていた各地の銭湯やサウナに行ったり、かつて行きそびれていたレストランに行ったり。小さなことでいい。子どもが一日の遊ぶ予定を決めるみたいに、あれも、これも、と心に正直になっているように見える。

より良く生きていくためには夢や目標をつくろう、なんて言葉は青臭く思えてしまうけれど、人間の心や感情はきっと、小さな「やってみたい」を叶(かな)えるごとに、喜びに震えるようにできているのだろう。その機微に気づくために、時には立ち止まることも必要だ。

39歳・六月は『集めたものを、捨てる』

39歳の六月は、これまで「いろんなものを一生懸命集めてきた」けれど、「40代はもう、捨てていきたい」と願う。それは「余計な強がりとか、見栄とか、自分を良く見せるプライドとか」だという。

ようやく離婚に踏み切った六月は、一人になってしまったことに一抹の寂しさを感じていたようだが、どこかスッキリしたようにも見える。重すぎる荷物は、背負い続けてきた本人にとっては、その重さが麻痺(まひ)するものなのかもしれない。両肩から下ろしてみてやっと、重すぎたことに気づくのだ。

集めてきたものを捨てるのは、勇気が要る。だって、これまでの人生で集めてきたものは、若かったころの自分が必死に守ってきた“これがなきゃ生きていけない”と思うものに違いないから。

強がりも、見栄も、プライドも、いずれ大荷物になるとわかっていても、集めるのをやめられないコレクションなのかもしれない。それでも、あつ子が陽太に言ったように、年齢を重ねればいずれ、「大事なものは自分のなかにあるって気づく」ようになる。

自分には何もないとわかっているから、とにかく進むしかない19歳。その歩みを止め、あらためて「自分」や「他者」と向き合う29歳。不要だと察しつつも集めてきたコレクションを、捨てていくと決意する39歳。すべては後悔なしと言える59歳になるため、そして、自分の納得いく人生を歩むための選択なのだろう。

■北村有のプロフィール
ライター。映画、ドラマのレビュー記事を中心に、役者や監督インタビューなども手がける。休日は映画館かお笑いライブ鑑賞に費やす。

■モコのプロフィール
イラストレーター。ドラマ、俳優さんのファンアートを中心に描いています。 ふだんは商業イラストレーターとして雑誌、web媒体等の仕事をしています。

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