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我が子の“発達障害”の特性を理解してもやっぱり……子育て中のイライラ解決法

  • 2024.5.21
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親にとって、「我が子の成長」は何よりも楽しみなもの。日々、少しずつ出来ることが増えていく様子を見守るのは かけがえのないのない幸せです。一方で、「うちの子、周りの子とはなんか違うかも」と不安を覚えている人も少なくないかもしれません。なかなか話が伝わらない、ひとつの物事に強くこだわる、空気が読めない……。そんなとき、ふと浮かぶのが「発達障害」という言葉。これは学習障害や注意欠陥多動性障害など、脳機能の発達に関係する障害のことで、近年広く知られるようになってきました。周囲の子と“違い”があるのは、決して悪いことではありません。ただし、それをそのまま放置していると、親だけでなく子ども自身が苦しいまま。大切なのは、子どもの特性に合わせて適切なサポートをしていくことです。でも、一体どうすればいいのでしょうか。そんな「親の不安」を取り除くべく、子どもの発達支援に取り組む人たちがいます。小学校教諭としての勤務経験を持つ、発達支援コンサルタントの小嶋悠紀さんと、『with class mama』メンバーでもあり、モンテッソーリ教育×感覚統合の視点を取り入れた研修や講座を行うりっきーさんです。さまざまな子どもの支援を経験してきたお二人に、発達障害のある子どもとの付き合い方やサポート方法についてお話を伺います。

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長男の診断が下りるまで、本当にしんどかった

――まずは自己紹介からお願いします。小嶋悠紀(以下、小嶋):2023年3月まで小学校で通常学級や支援学級の教員をしながら、保育士さんのキャリアアップ研修や、幼稚園・小学校・中学校・高等学校・特別支援学校の養護教諭むけの研修を行い、保育園でしっかり支援されてきた子どもたちを小学校で迎え入れる連携システムを構築させていただきました。今年3月には『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル』(講談社)という本を出版し、現在は「発達支援コンサルティング」をしております。りっきー:私は現在、小学5年生の長男と小学1年生の次男を育てている母親です。長男が4歳のときに発達障害と診断されました。でも診断されるまでが大変長くて、それまでは「また半年後に来てください」の繰り返しで、なかなか療育にもつなげられず、先の希望が見えない日々が続いていたんです。ただ、私はとにかく自ら動かないと気がすまない性格で、病院でもわからないなら自分でなんとかしよう、と思い立ちまして。そんなときに出合ったのが「モンテッソーリ教育」と「感覚統合」でした。以降、がむしゃらに勉強し、現在はモンテッソーリ教室でクラスを担当する傍ら、保育園や療育施設に研修に出向き、子どもたちの発達について伝えています。――りっきーさんはまさに「当事者」の親という立場ですが、子どもの障害を受容(※障害を受け入れること)するまでに葛藤や悩みなどはありましたか?りっきー:「受容」って本当に簡単なことではないんです。私の場合はあちこちたらい回しにされていたので、診断が下りるまでがしんどかった。なかなか喋ってくれないから不安になっているのに、「早生まれで男の子だし、3歳になったら喋るから大丈夫ですよ」なんて言われて、真っ暗闇の中で宙ぶらりんになっているような感覚だったんです。小嶋:保護者の方から「うちの子は大丈夫でしょうか」と聞かれたとき、ぼくら教員は「大丈夫ですよ」と言ってしまうんですね。それは保護者の不安を少しでも減らしてあげたいから。ただ、そうじゃなくて、「どんな点が心配ですか?」ともっと聞き返してほしいですよね?りっきー:本当にその通りで、「大丈夫」ではなく、もっと次につながることを言ってほしくて。だから診断が下りたときは、正直ほっとしました。「やっぱりそうだったんだ」と思うと同時に、頑張るべき方向性が定まったからです。ようやく支援も受けられるし、一歩踏み出せるぞ、と思いましたね。だから「受容」で言うと、他の保護者と比べて一瞬だったのかもしれません。その代わり、そこに至るまでに相当悩んだパターンです。

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小嶋:そもそも発達障害というものは「目に見えない障害」です。でも、日本の特別支援教育では「目に見える障害」ばかりをクローズアップしてきました。そしてさらに、日本における特別支援学校は田舎や街はずれなどに追いやられがちで、だからこそ、障害に対する理解が追いついていない。アメリカでは特別支援学校は街のど真ん中に位置していて、理由を地元の方に伺うと「私たちのコミュニティーに障害を持つ方もいるということが、街のど真ん中に学校がないと分からない。街全体で受け入れるための設計です」と話していました。日本では、保育士免許の取得に特別支援教育が必修化されてからまだ数年です。目に見えない障害というものを現場の教員たちも充分には理解できていない可能性は高いですね。りっきー:もちろん診断がすべてだとも思っていないんです。受容といってもそのスタンスは保護者一人ひとり異なります。私のように白黒はっきりしていた方が頑張れる人もいれば、そうではない人もいる。この先、幸せな人生を歩んでいってほしいと期待を膨らませながら子育てしている最中、突然、診断が下りてしまうことで目の前が真っ暗になり、頑なな気持ちを抱いてしまう人もいるでしょう。だから、その保護者がどういうタイプなのかも踏まえた上で、医師や先生方にもコミュニケーションを取ってもらいたいですね。小嶋:支援する側もどうしたらいいかわからなくて苦しいから、とりあえず診断を受けてください、と軽はずみに言ってしまうケースもあるでしょうね。ただ、そこは慎重にならなければいけない。実は私の次男も特別支援級に通っています。小学2年生くらいから集団不適応になってしまって、ついに診断が下りました。僕自身も診断を受ける場に立ち会うこともあるのに、結果を見た時は正直、ショックでした。同時に、これが保護者の方々の気持ちなのか、とようやく理解できたんです。診断を下す、あるいは勧める場合であっても、大事なのは「その先の見通し」も一緒に伝えること。診断=絶望ではなくて、じゃあこういう未来があるね、と建設的に話ができるようになっていくと、保護者の方々も安心できるのではないかと思います。

子供の特性を理解していても、子育てでイライラしてしまうときは

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――“名前がつく”ことで安心する一方で、子どもの特性を頭では理解していても、ついイライラしたり落ち込んだりする瞬間はありましたか?りっきー:仕事で他のお子さんと接しているときは何でもないのに、うちの中で息子に同じことをされると怒ってしまうことはあります。それもあって、我が家では「物理的な距離を取る」ことを意識しているんです。長男が5歳くらいの頃には子ども用のテントを常設して避難所にして、その中で気に入っているおもちゃとかセンサリートイを触って落ち着けるようにしていましたし、現在でもつい喧嘩になってしまったときは、長男は寝室へ、私は仕事部屋へこもったりして。そうやって少し離れることで怒りをコントロールできています。小嶋:親子であってもそうやって物理的な距離を取るのは非常に重要だと思います。それにプラスするならば、心構えとして「なんで出来ないの?」と思わないことが大事。枕詞を「なんで」ではなく「どうしたら」に変えていくんです。すると「どうしたら出来るようになるのかな?」と建設的に考えられるようになっていきます。そして、「どうしたら」を自分にも向けてみること。お子さんと接していてイライラしてしまったら、「どうしたらこのイライラが消えるかな」と考えてみると、「順番を変えてみよう」「かける言葉を変えてみよう」と次の思考につながっていきますから。それともう一つ、「私はダメな母親」とは決して思わないでほしい。子どもの発達がゆっくりなのも、出来ないことがあるのも、育て方のせいではないんです。だから、発達障害のあるお子さんを育てているお母さんたちには、もっと自分を許してあげてほしいと思いますね。

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――その言葉で気持ちが軽くなる人も多いかと思います。ちなみに、発達障害の子どもが増えているというニュースは本当なんでしょうか?小嶋:たしかに、文部科学省の調査によると発達障害の可能性があると推定された小中学生は2012年には6.6%だったが、2022年には8.8%と数値としては増加しているんです。ただし、私たちの研究団体で10年前に調査した結果では、発達障害の可能性がある子は15%で、数値としてはもっと高かった。これは調査数や調査方法にも左右されますが、つまり、発達障害についての専門性がある人が見ればもっと見つけられるということでもあるのかな、と。なので、「発達障害の子どもが増えている」というニュースは、それだけ多くの大人が発達障害というものを理解しはじめてきたという風に受け止めた方がいいかもしれません。それは社会的な目が育ってきたということですから、とてもポジティブな結果とも言えます。対談第二回は、発達障害のある子が伸びる声かけや褒め方・叱り方の事例、子どもの特性にフィットした環境を用意して、より力を発揮できる「環境調整」についてお話を伺います。

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著書『発達障害・グレーゾーンの子がグーンと伸びた 声かけ・接し方大全 イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル』

【PROFILE】 りっきー(@ouchi_monte_ryoiku)

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1983年大阪生まれ。プラスモンテ®️主宰。小5と小1の男の子の子育て中。日本モンテッソーリ教育綜合研究所2歳半-6歳コース教師、保育士。会社員を12年経験後、長男の発達について悩んだ経験から、発達のことで悩む保護者と子ども、支援者の3者をつなぐ役割をしたいと考え、教育業界へ転職。その後独立。モンテッソーリ教室での講師業の傍ら、保育園・療育施設などで出張研修・オンライン研修をおこなう。講談社with class mamaにて「りっきーの凸凹(でこぼこ)道を行こう!」連載中。近著に『感覚統合の視点で「できた!」が増える!発達が気になる子のためのおうちモンテッソーリ』(日本能率協会マネジメントセンター)Instagram(@ouchi_monte_ryoiku)でモンテッソーリ×感覚統合の視点でおうちでできる取り組みを発信中。

著書『感覚統合の視点で「できた!」が増える!発達が気になる子のためのおうちモンテッソーリ』

取材・文/イガラシダイ

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