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回を追うごとに魅力が増す…女優・出口夏希の可能性とは? ドラマ『ブルーモーメント』第4話考察&感想レビュー

  • 2024.5.22
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『ブルーモーメント』第2話より ©フジテレビ

ドラマ『ブルーモーメント』(フジテレビ系)が毎週水曜よる10時から放送中。SDM(特別災害対策本部)の気象班チーフ・晴原柑九朗(山下智久)が気象災害で脅かされる人命を守るべく奮闘する。今回は、雲田彩を演じる出口夏希の熱演が光る第4話のレビューをお届け。(文・あまのさき)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:あまのさき】
アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。

『ブルーモーメント』第2話より ©フジテレビ
ブルーモーメント第2話より ©フジテレビ

「きれいは汚い、汚いはきれい」と晴原(山下智久)は『マクベス』の有名な言葉を引用した。物事は常に表裏一体だ。目に見えているものだけがすべてではない。例えば、気象。人知を超えた猛威をふるう災害となることもあれば、本作のタイトルである「ブルーモーメント」や、今回登場した「天使の梯子」「ダブルレインボー」のような素晴らしい現象に出合わせてくれることもある。

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今回、SDMのメンバーは自分たちの活動の意義を高めるため、災害教育を行うべく千葉県華原市を訪れる。SDMの指揮車両に歓声を上げ、楽しそうに防災マップを彩っていく子どもたちの中に、半年前の豪雨で祖父を失う経験をした少女がいた。

彼女も明るく振る舞っているように見えたが、祖父との思い出の品であるぬいぐるみを雲田彩(出口夏希)に直されてしまったことで過呼吸の発作を起こしてしまう。「フラッシュバックのきっかけは人それぞれ」「お節介」と丸山(仁村紗和)や晴原に指摘され、彩はみるみる自信をなくしていった。

彩を「力のない者」といった晴原の言葉は、とくに深く心をえぐっているように見えた。それは、3年前のつむじ風により、姉の真紀(石井杏奈)が横転したクレーンに巻き込まれる様子を目の当たりにした経験があったからだろう。自分だけが助かったことへの罪悪感。汐見早霧(夏帆)の言う「サバイバーズギルト」だ。

『ブルーモーメント』第1話より ©フジテレビ
ブルーモーメント第1話より ©フジテレビ

彩は車椅子生活となった姉を励まし続けたが、真紀にはそれを前向きにとらえられるほどの余裕はなかった。災害によって身体的な影響を受けたこと、そして、仲の良かった姉妹の間に亀裂が入ったことも、災害によってつくられた目に見えない傷だ。

ところで、晴原が言った「力」とはなんだろう。具体的なアドバイスや対策を打てる知識だろうか。もちろん、考えなしに前向きな言葉を伝えることだけが励ましだとは思わない。でも、もしも知識が力なら、それを持っていない者たちは、目の前で苦しむ人たちを静観することしかできなくなってしまう。そんなのは悲しすぎる。

それに対するアンサーかのように、もやもやを抱える彩に「お節介も100回続けば愛情になる」と言葉をかける晴原。物事は表裏一体であるといった張本人のこの言葉は、彩の心に光を射したはずだ。続けることで、きっといつか愛情は届く。

いや、その場を取り繕った励ましではなく、愛情によるお節介ならば100回でも1000回でも続けられるというほうが正しいかもしれない。裏側にたどり着けるのは、正しいと思う道をいかに貫けるかだ。

『ブルーモーメント』第1話より ©フジテレビ
ブルーモーメント第1話より ©フジテレビ

ラストシーンで、自然が作り出す美しい現象=ダブルレインボーを見に行った晴原たち。そこで、晴原は子どもたちのことを「異常気象が当たり前の世界で生きていく世代」と表現する。これまでの人類が払ってきたツケを否応なく背負わされる。

だからこそ、気象を正確に分析するSDMという組織が必要なのだ。正しい分析と正しい恐れによって、気象による表裏一体と共存していくために。

これまで勝手に突っ走って空回りしていることの多い彩だったが、今回改めてみなの知るところとなった彼女の心のうちの苦しみを、出口が真摯に表現していたように感じた。とくに自分にしか伝えられないはずとテレビカメラに向かって避難を呼びかけるシーンは、鬼気迫るものがあった。

そして、今回の災害教育に市役所職員として参加していた真紀もまた、SDMの仕事に取り組む彩の様子を見たことで彩の苦しみを理解する。無事に仲を修復することができた。

辛い涙が多く見られた分、お互いを「最強」と言い合う姉妹が虹に照らされて輝く笑顔が美しかった。自身の苦しみを力に、これからも災害の正しい恐怖を伝えていくだろう彩に注目したい。

(文・あまのさき)

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