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「今、本当に音楽に懸けているので」家入レオの覚悟と本気

  • 2024.5.21
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5月22日にシングル「ワルツ」をリリースする家入レオ
5月22日にシングル「ワルツ」をリリースする家入レオ

【写真】ドラマ『ミス・ターゲット』主題歌を担当している家入レオ

10代でデビューして、今年30歳を迎える家入レオ。バーンアウトしてしまった時期もあるという彼女は、保育園でのボランティアなども経験し、現在“覚悟が決まっている状態”だという。その想いの変化、現在の覚悟について訊いた。

悩んでいても仕方ないし、「私は音楽が好きだな」と改めて思った

──家入さんは、“今、覚悟が決まっている状態”だそうですね。それはいつ頃から、どういうきっかけだったのでしょうか?

正確に「○月○日に本気になった」というものがあるわけではないんですが……17歳でデビューして、がむしゃらに音楽を続けてきた中で、あるときバーンアウトしてしまったんです。やればやるほど自分は一人ぼっちだと感じるし、やればやるほど自分に対して「音楽向いていないんだな」と追い詰めちゃって……。

そういう時期を何年か過ごした結果、悩んでいても仕方ないし、「私は音楽が好きだな」と改めて思って、自分のできることを1日1日、コツコツとやろうと思い、知識や技術を深め出した。そしたらその想いが周りに伝わって、チームとしてみんなで団結して、また強い気持ちで世の中の皆さんに音楽を届けようという意識が高まってきました。

「もっと届けられるよ、いけるよ」と言ってくださる皆さんと一緒に今やれているということも大きいと思います。

──「音楽が向いていないな」と感じたというのは、例えば思ったような結果がついてこなかったとか、音楽をつくることがしんどくなってしまったとか、そういうネガティブな何かがあったのでしょうか?

ありがたいことではあるんですが、デビューしてからの4、5年はスペースシャトルに乗っているんじゃないかと思うようなレベルのスピード感で。しかも最初の数年間は高校にも通っていましたし。で、卒業していざすべてを音楽に費やせるようになって、未来のことを考え出したときにすごく不安になっちゃって。「これでいいのかな」って。

20代の幸福の低迷期を指す「クォーターライフ・クライシス」って言葉があるじゃないですか。自分のステージを変えることで生まれる不安。私は周りより少し早く社会に出たぶん、クォーターライフ・クライシスが少し早く来ちゃったんだと思います。そのときは、音楽以外の可能性も考えました。ボランティアで保育園に教育実習生として行ったりもしましたし。

【写真】ドラマ『ミス・ターゲット』主題歌を担当している家入レオ
【写真】ドラマ『ミス・ターゲット』主題歌を担当している家入レオ

とことん悩み抜いたし、しんどかったけど、あの時期があってよかった

──音楽をやめる可能性もあった?

そうですね。そのときは本当に音楽が向いていないと思っていたので。音楽しかやっていなかったので自分が空っぽな気がしていたんです。圧倒的に人生経験が足りていないと感じて、自信がなかった。

そういう話を事務所にしたら「ボランティアであれば、いろんなことを経験してきてください」と言ってくれたので、保育園に行かせてもらいました。そこでは2歳児のクラスを担当しました。

──音楽とは違う世界を見てみて、いかがでしたか?

子供たちの目に映る世界って本当にキラキラしているんですよ。赤とかピンクの絵の具に染めた寒天を握ってその感触を言語化してもらうというワークショップがあったんですが、その準備のために私がブルーシートを敷いていたら、子供たちがワーッと騒ぎ出して。「どうした?」って聞いたら、「先生! 海が広がっている!!」って。もうズキューンってしました。

私は東京で悩んでいるけど、違う角度から世界を見たらもう一回頑張れるかもしれないって、そう思いました。とことん悩み抜いたし、しんどかったけど、あの時期があってよかったなと、今は思いますね。

──今お話があったように、家入さんは10代でデビューして、今年で30歳になります。その中で、音楽をつくることや音楽活動をする上での目標ややりがいに変化はありますか?

学生の頃はちょっとひねくれていたので、きれいごとであればあるほど疑ってかかるみたいなところがあったけど、実際に自分が悩み、迷って、でも最終的に人に助けられて、という経験を重ね、今は人に喜んでもらうことが私の歌う意味だと思っています。

以前は、自分が形にしたいものを世に放っていくことで幸せを感じていたのですが、今はそこから一歩進んで、それが誰かのハートと私のハートを結ぶものであるということが幸せだし、それが私の目指す音楽の形になっていますね。ただ自分が音楽をやって気持ちよくなったり、それが評価されることがうれしいとか、そういうことではない気がする。

──自分の音楽で、喜んでもらうことが幸せ。

うん、喜んでもらうことが大事。より多くの人に喜んでもらいたいです。そこが今、私が一番大事にしているポイントかもしれません。

シングル「ワルツ」完全生産限定盤・ジャケット
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今この瞬間を積み重ねていくという形の本気しか見せていけない

──今年は20代最後の年ですが、それについては何か考えていることや思うことはありますか?

あんまり年齢のことは考えていなくて。どちらかというと早く30代に入りたいとは思っていますが、どっちにしても過ごしていたら30歳になるので、良き30代が来るように1日1日を大事に生きたいなと思っています。

私、19歳から20歳になるときに、20歳というものにすごく期待していたんですよ。「20歳になったら自分の責任でいろんなところに行けるし、一気に大人になれるのかな」って。だけど、実際に20歳になってみると、19歳の次の日でしかなかった。人生って年齢じゃなくて、自分自身でしか切り拓いていけないんだなって思ったから、30歳は、こんな言葉はないけど“年齢本願”じゃなく自分自身で切り拓いていきたい。そういう意味では、年齢は関係ないのかなと思います。

──音楽をやっていく上での、この先の目標ややっていきたいことはどのようなことですか?

これも気持ち新たにスタートしてからなんですけど、「ずっと歌い続けたい」と言えなくなって。毎日精一杯やればやるほど、不安になるんですよ。曲を書けば書くほど、「まだこれができない」「なんでこんなに音楽に向いていないんだろう」って。

でもそれくらい本気でやっているということなんですよね。今この瞬間を積み重ねていくという形の本気しか見せていけないなと思っています。

──「長く続けていくために温存する」とか「無理をしない」とかそういう発想が皆無ということなんでしょうね。

はい。そういう発想はまったくないです。今、本当に音楽に懸けているので。フルマラソンも、42.195kmって言われたらきついけど、「あの電柱まで」「次の一軒家まで」って言って結局完走しているタイプだと思うので、歌い続けるんでしょうけど(笑)。

(取材・文=小林千絵)

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