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私はどんな「お母さん」に?冷凍食品では妥協しても、自立は諦めない

  • 2024.5.20
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「自分の母親はどんな人か」。そう考えた時、真っ先に思い浮かぶのは「料理上手」ということだ。朝は、煮干しから出汁をとった野菜たっぷりのお味噌汁。それに目玉焼きか焼き魚。小さい頃の誕生日ケーキは手作り。土曜日の登校日にお弁当が必要だった時、朝から手作りパンを焼いてハンバーガーを作り、学校に届けに来たこともあった。高校の入学式の時、担任が「一緒に過ごせる最後の3年間になるかもしれないから、できる限りお弁当を作ってあげてください」と保護者たちに向かって言った。その言葉を守ったのだろうか、6時半には家を出る私に、ほとんど毎日お弁当を持たせてくれた。友人が「いつも美味しそうなお弁当だね」というようなお弁当だった。冷凍食品は、滅多に使わなかった。

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そんな母は私が就職した時、「絶対辞めるなよ」と言った。それは、結婚や出産で一度正社員を辞めてしまったら簡単に戻ることはできないから、という意味だった。「厚生年金を納められる仕事に就いた方がいいですよ」。入学式の時「お弁当を作ってあげてください」と言った担任は、ある日担当クラスの生徒たちに向けてこう言った。「厚生年金=安定」という意味もあったと思うが、クラスの9割を占めた女子生徒たちに向けた「女性でも自立して働きなさい」という意味もあったように思う。

私は、「お母さんになること」に強い興味関心がある子供だった。赤ちゃんが生まれる時の家族のお話がお気に入りの本で、お腹のところにぬいぐるみを入れて妊婦さんの真似事をするような子供だった。漠然と「いつかはお母さんになるんだろうな」と思って生きてきた。今32歳となり、子供を持つ友人たちも増え、自分自身も結婚して、「お母さんになること」が現実味を帯びてきている。「手作りの食事」と「自立して働くこと」。これは、私が「お母さん」として生きていく時の指標のようなものになっている。

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母の影響もあってか、私は料理が好きだ。料理教室にも通ったし、「趣味」と言っていいと思う。一人暮らしを始めた大学生の時から今まで、ずっと自炊生活だ。お昼にはお弁当を作って持って行っている。自分のために作る食事はあまり苦にならない。おかずは一品だけでもいいし、見た目も栄養もそこまで気にしなくていい。味付けも自分の好みに合わせればいい。めんどくさいと思った時はいつでも、自分の意思だけでサボることができる。

結婚して、人のために料理を作るようになって、初めて料理がちょっと苦痛になった。食べないとすぐ痩せてしまう夫のために、一汁二菜ぐらいは用意したいし、朝はパンしか食べない夫のために、夕食はタンパク源と野菜を多めにしたい。味付けは、和風の味付けが得意ではない夫に美味しいと思ってもらえる味付けにしたい。「夫のために」と勝手に気負ってしまって、ちょっとしんどくなってしまっている。時々、夫にお弁当を作ることがある。人のために作るお弁当は、食事と同様に気にしなければいけないことが多くて少し難しい。母に倣って独身の時は使わなかった冷凍食品も、使うようになった。

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もし、私がお母さんになったら、なるべく手作りの食事を食べさせたいと思う。それが、自分の中にある「お母さん」の基準だから。仕事は、大好きというほどではないが、万が一の時のためにも自活できるぐらいのお金は稼ぎたいと思う。これは、私の母はやっていなかったことだ。母がやっていたことをお手本にしながら、母はやっていなかったことを成し遂げようとする時、私はどんな「お母さん」になるのだろう。

「手作りの食事」と「自立して働くこと」。両立できればいいけれど、「夫のために」と気負ってしんどくなっている今の状況では、「子供のために」ともっとしんどくなってしまうような気がする。「自立して働くこと」は絶対に諦めたくない。母は使わなかった冷凍食品を使うように、工夫しながら少しずつ折り合いをつけていくのだと思う。私は多分、朝から出汁はとらないし、誕生日ケーキも手作りしない。お弁当のためにパンは焼かない。心の中にある「お母さん」のお手本をなぞりながら、自立して働く。自分がしんどくならない範囲で。そんな「お母さん」を私は目指したい。

■どんさくのプロフィール
常に食べ物のことを考えている会社員。

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