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広島焼に大阪焼…日本三大お好み焼きの「3つ目」は幻だった!?

  • 2024.5.20
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大阪市内を歩いていたら「長田焼」の看板を出すお好み焼き屋「はなたれ」を発見した。しかも、広島焼と大阪焼にならぶ「日本三大お好み焼き」と書いてある。そんなに有名なお好み焼きが神戸・長田エリアにあったのかと驚き、長田出身の編集者Nさんに聞いてみると「見たことも、聞いたこともない」と言う。どうゆうこと?

日本三大お好み焼きのひとつと言われる「長田焼」(写真はお好み焼き店「やよい」にて)

◆ 地元民も知らない、販売店もヒットしない「長田焼」

そこでまずNさんと「はなたれ」(ミント神戸店)で長田焼を実食。メニューの説明には「薄くクレープ状にひいた生地の上にキャベツ、九条ネギ、豚肉、ぼっかけ等々好みの具材を乗せて焼き上げる乗せ焼スタイルが神戸長田焼」と書いてある。

「日本三大お好み焼きのひとつ『神戸長田焼』を中心とした鉄板料理を楽しむことができます」というお好み焼き店「はなたれ」

広報担当者さんに話を聞くと、「社長夫妻が長田出身で、『長田焼を普及したい!』ということで多少アレンジして、長田焼専門店という形で始めました。オープンして11年になり、お店の知名度も上がってきています」とのこと。

だがネットで長田焼を調べてみたが、長田でよく食べられている「薄焼き」(水で溶いたメリケン粉をクレープのように薄く伸ばし、天かすやネギを乗せて焼いたもの)の説明はあるものの、「長田焼」と紹介されているもの、そして長田区で「長田焼」を販売している店もヒットせず、「日本三大お好み焼き」を裏付ける情報も出てこない。

「長田焼」として販売されているお好み焼き、特徴はとにかく薄いこと

神戸市のホームページに「長田の食文化」を紹介するページを見つけて問い合わせたところ、有力な情報を知ってそうな担当者を見つけたので、話を聞きに伺った。

◆ 「長田焼」の正体がついに判明!

今回取材に応じてくれたのは、神戸のまちおこしプロジェクト「KOBE鉄人PROJECT」でプロデューサーを務める岡田誠司さんと、「新長田まちづくり」のチーフマネージャー・新良恵子さん。

──(Nさん)大阪の人から「長田焼ってあるんじゃないの?」と言われるんですが、長田出身の私は知らないのが不思議で・・・。

岡田さん:長田の人間にとっては「え?なにそれ」以外の何者でもないからね。

──そうなんですか!?

岡田さん:「阪神・淡路大震災」があって、新長田地域の商店街と市場が集まって立ち上げた「神戸ながたティ・エム・オー」が「音楽のまち長田」と「食のまち長田」を掲げて地域を盛り上げようとした。ちょうどB級グルメが話題になり始めた頃で、「長田にもなんかあるんちゃうか」って。そうしたらお好み焼き屋がやたら多いと。実際、半径500メートル圏内に100軒あるような密集地域やってんね。

それで「ぼっかけ」と、日本三大お好み焼きとして「長田焼」、お好み焼き屋が密集している地域として売り出そうと。だから、長田焼っていう言葉は地のものでもなんでもない(※ぼっかけ:牛すじとコンニャクを甘辛く煮込んだもの)。

──震災後に地域を盛り上げるために作られた名前だったのですね。

岡田さん:そう、でもいざ長田焼を売りにしようと思ったら、「長田焼とは?」を整理せなあかんくなった。自分たちも分かってないようなものやったから(笑)。

被災した長田区を盛り上げようと「長焼き」カルチャーを作り上げようとしたそう。そのときにできた定義がこちら

新良さん:長田風お好み焼きって当たり前のものやけど、いったいなんぞやというのをみんなで話し合いながら出していって、定義ができて。定義ができたら歌が決まって・・・。

──歌まであるんですか!?

岡田さん:僕は今65歳ですが、当時もう少し下のおっちゃん連中が超ノリが良くて、その流れで「長田焼の唄」も入ってるCDを2枚作ってん。そんな風に楽しみながら懸命に、さもあったかのようにやってきたのが長田焼。

当時から音楽制作やイベント立ち上げ、ライブハウスの運営などに携わっていた岡田誠司さん。「長田焼」のCDを作るときには中心メンバーとして奮闘したそう

新良さん:ところがそのムーブを作る人のなかに、お好み焼き屋さんがいない。

岡田さん:もともと長田のお好み焼き屋さんというのは、おばちゃんが玄関の空いたスペースを使って始めたような土間商売からきてるから、どこのお好み焼き屋さんも商売熱心やないねん。

新良さん:「鉄板こなもんマップ」作って鉄人で観光客を呼んできても、お好み焼き屋さんは相変わらずマイペースで、「暑いから」ってしばらく休んだりする。勝手に長田焼って名前をつけたものは昔から変わらずずっとそこにあって、取り上げてもらうほど大したもんじゃないし、代々やってるだけやから、何焼って言われても「知らんがな」みたいな感じのものであり続けてる(笑)。

神戸・長田で長年にわたり地元民から愛されているお好み焼き店「やよい」

──なるほど。名前をつけて盛り上げようと思ったけれど、それならたくさん売ってやろう!って人がいなかったのですね。お2人は長田焼の未来をどのように考えていますか?

岡田さん:長田焼のムーブを始めて20年は経つけど、思い描いた形にはなってないな。今やってる人で広げるのは無理だから、僕は誰かが長田焼に気づいて、他のエリアで拡大して売れるしかないと思う。たとえば「長田焼が安くてうまくてヘルシー!」って全国チェーン展開したりとか。で、その聖地として長田が盛り上がる(笑)。

新良さん:私は新しい文化になっていくんじゃないかと思います。長田焼って、地の人間からは「そんなん知らん、そんな名前聞いたこない」とか言われる(笑)。でも、三宮とか大阪では、長田焼とかぼっかけのお好み焼きありますって書いてあって。長田発祥やけど、中心地から離れてドーナツ状に浸透しているので、遠くで花開いてるなぁってうれしいですね。それはドーナツの真んなかに個性的でマイペースな人たちがいるからの文化なんでしょうね。

岡田さん(右)の意志を継いで、現在「長田焼」をはじめとする長田の文化発信に力を入れる新良恵子さん(左)

自分たちの直接の儲けではないけれど、震災後の長田を盛り上げたいと集まった人たちが残した言葉が「長田焼」だった。そんな仕掛け人のおっちゃんたちは70代になり、「神戸ながたティ・エム・オー」は2022年に解散。今は新良さんがいる会社「新長田まちづくり」が活動を引き継いでいる。

「長田焼長田焼、生地をひいたら粉カツオ、キャベツをのせて ぼっかけて、ソースは地ソース スパイシー、どろは塗らずに 上からたらす、お供はラムネか アップルで、コテ突き立てて いきなり口へ」(『長田焼の唄』より一部抜粋)

取材帰りに紹介してもらった「やよい」さんで「すじ焼」を食べた。もちろん「長田焼」の表記はどこにもない。「すじ焼」は、薄い生地にキャベツやぼっかけなどをのせてさらに生地を回しかけて両面を焼いたシンプルなもので、ソースは甘口、辛口、どろの3種類が用意されていて好みでかける。

濃厚な辛さとドロっとした食感が特徴の「どろソース」

「どろは辛いよ、そんなに塗って大丈夫か?」とおばちゃんに心配してもらいながら、お好み焼き(長田焼)をコテでハフハフしながら食べた。

取材・文・写真/太田浩子

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