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現役アナウンサーが指南「声」で他人の信頼を勝ち取れるワケ

  • 2024.5.18
ビジネスや私生活では「声」が重要
ビジネスや私生活では「声」が重要

ビジネスや私生活で初対面の人に会ったときに互いに身構えてしまい、打ち解けないまま終わってしまったことはありませんか。今回は、「『この人なら!』と秒で信頼される声と話し方」(下間都代子著/日本実業出版社)の中から、「声」が相手に与える影響について、解説します。

著者の下間都代子さんは、大阪府のラジオ局「FM802」のアナウンサーを経て、現在、テレビやCMなどで活躍中のフリーアナウンサーです。阪急電鉄の自動放送や京阪電車の駅構内放送などを担当していることでも有名です。

傷つくのが怖くて「心のヨロイ」を身に着ける

今の時代、他人から心ない暴言を吐かれたり、誹謗(ひぼう)中傷を受けたりすることがあり、ショックを受けて心が打ちのめされてしまうこともあります。そのため、人は、心によろいを着せ、安易に本音を言わずに慎重に振る舞うことで、他人の言動から自分の心を守ろうとします。

この「心のよろい」は手放せないもの、脱げないものだと考えている人は少なくありません。下間さんは次のように解説します。

「心のヨロイを常に身につけなければならないということは、片時も安心してリラックスすることができないことを意味します。自分以外の人に対して、『この人は自分のことをどう思っているのだろうか。敵か?味方か』と、疑いながら付き合っています。敵か味方かわからないうちは自分の本音をさらけだすことはできません」(下間さん)

「通り一遍の話をして、その場を切り抜け、なんとか自分自身を守ろうとします。相手に責められたり、傷つけられたりすることを防ぐために身につけるもの。それが心のヨロイです。では『ヨロイを脱がせる声』とはどんな声でしょうか。私は周りから『良い声』だと言われることが多いです。声の仕事をしているし当たり前といえば当たり前のこと」(同)

しかし、人によって声の好みは異なるため、良い声と悪い声をそれぞれ定義するのは難しいのが現状です。アナウンサーだから、声優だから良い声なのかといえば、そんなことはありません。

良い声には心地よさがある

下間さんが「声」の重要性に気付いたのは、中学生の頃です。授業中に原因不明の腹痛にたびたび襲われたことがきっかけだといいます。

「私は中学時代、精神的に弱く、理科の授業中、突然お腹が痛くてたまらなくなることがたびたびありました。それはお腹を壊したときの痛みではなく、原因不明の腹痛だったのです。その腹痛はその頃、誰にも言えない悩みを隠し持っていたことが原因だったと大人になって気づきました」(下間さん)

「一度その急な痛みを体験すると、『また同じようになるのではないか?』という不安が先に立ち、理科の授業になるたびにお腹が痛くなります。決して担当の先生が嫌いだったわけではありません。ただ、記憶の中に、『理科の授業中に起こる』という恐怖と不安が深く刻まれていました」(同)

保健室に駆け込むと、優しい女性の先生が待っていたそうです。下間さんが「先生、またお腹痛くて」と悲壮な顔で訴えると、先生は優しく「大丈夫だよ」と言って休ませてくれたといいます。

そのときの先生の声は、まるで天使のようだったと、下間さんは当時を振り返ります。先生の声に包まれて「なんて優しい良い声なのだろう。これで大丈夫」とほっとしたのです。

人は声で評価される

皆さんは、「声」についてどのような認識をしているでしょうか。実は、政治やビジネスの世界では、声が評価に影響を与えることが少なくありません。

職場をよく観察してみてください。例えば、上司や同僚が、大したことを言っていないにもかかわらず、妙に説得力があると感じることがあるのは、声が良いからでしょう。反対に、良いことを言っているのに伝わらないのであれば、それは「声」の問題です。

性格や習慣化された仕事の進め方は簡単には変えられませんが、声は変えられます。声が変わるだけで、仕事の成果が変わることが実証されているなら、実行しない手はありません。プレゼンやスピーチ、電話応対、営業、接客など、ビジネスの現場では人と人とのコミュニケーションがつきもの。そのコミュニケーションは声の対話です。

良い声で話せば、話す言葉に説得力が増し、好感度が上がったり、人から信頼されたりするなど、さまざまな効果が得られるはずです。声が仕事の成果を左右するのは、もはや当たり前のことだといえるでしょう。

コラムニスト、著述家 尾藤克之

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