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2024年は漫画の実写化映画の当たり年!? 『シティーハンター』など10作品から「成功の理由」を考える

  • 2024.5.18
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Netflixで配信中の『シティーハンター』が好評を博している今こそ注目してほしい、2024年に公開される漫画の実写映画化作品の傑作&期待作を一挙に10作品紹介し、さらに実写化成功の理由も考えてみます。(※サムネイル画像出典:(C)北条司/コアミックス 1985)
Netflixで配信中の『シティーハンター』が好評を博している今こそ注目してほしい、2024年に公開される漫画の実写映画化作品の傑作&期待作を一挙に10作品紹介し、さらに実写化成功の理由も考えてみます。(※サムネイル画像出典:(C)北条司/コアミックス 1985)

Netflixで配信中の実写映画版『シティーハンター』が好評を博しています。

記事執筆時点で映画.comでは4.0点、Filmarksで3.8点とレビューサイトでの評価も高め。視聴者数もとてつもなく多く、日本の週間TOP10(映画)で2週連続で1位、週間グローバルTOP10(非英語映画)でも初登場1位、さらには世界52の国と地域で週間TOP10入りを果たしました。

そして、その『シティーハンター』以外でも、2024年は続々と「漫画の実写映画化作品」が世に送り出されています。1月に劇場公開された『ゴールデンカムイ』および『カラオケ行こ!』(Netflixiで配信中)も好評でしたが、ここからは今後に公開される『シティーハンター』を含む10作品を紹介し、実写映画化が成功する理由はどこにあるのかを分析していきましょう(記事の最後に結論を記しています)。

1:『シティーハンター』Netflixで配信中

満場一致の勢いで絶賛されているのは主演の鈴木亮平。その肉体と身のこなしから一流のスイーパー(始末屋)である冴羽リョウになりきっており、役作りどころか銃の扱いにも余念がなく、6種の銃をノールックで操れるようモデルガンで練習し、本物の銃の反動や危険性を知るために海外で実銃の訓練も受けていたそうで、そのかいあってのスピーディーな「銃さばき」にほれぼれします。

さらには、「もっこり」という言葉に代表されるスケベな印象と、それとギャップのあるかっこよさが、アニメ版の神谷明にとても近い声色で表現されていることにも驚きました。鈴木亮平自身が、2011年にブログで「日本版シティーハンター、冴羽リョウ、まじでやりたいなぁ」と投稿しており、その夢をかなえたことも話題に。相棒である槇村秀幸役の安藤政信、ヒロインの香役の森田望智も役にピッタリだと称賛されています。

さらに、物語も原作の冒頭部もなぞりながらも、スマートフォンやSNSが登場する現代の世相を反映するなどのアップデートをしつつ、一種の「バディもの」「探偵もの」としても過不足なくまとまっています。また、原作の「香がハンマーで制裁する」デフォルメしたギャグを、実写で違和感なく成立させたとある手法に「その手があったか!」と感心してしまいました。

余談ですが、同じく佐藤祐市監督の『累-かさね-』は、原作のダウナーな印象を生かした鮮烈なビジュアル、独自の驚きの展開、そして芳根京子と土屋太鳳の熱演など、こちらも全方位的に見事な漫画の実写映画化作品になっていたので、ぜひ合わせて見てみてほしいです。

2:『バジーノイズ』5月3日より劇場公開中

孤独だった青年が音楽の道へと足を踏み入れる青春映画で、「放っておけなくなる」ような魅力がある川西拓実と、天真らんまんのようで複雑な感情を合わせ持つ桜田ひよりの掛け合い、いい意味で寂しさを(それ以外の感情も)感じさせる音楽と歌声を実際に聞けることに、実写映画化の意義を大いに感じました。「横断歩道の前で信号待ちをする」シーンが原作にはない映画オリジナルの描写になっているなど、アレンジの仕方も見事です。

また、5月10日より劇場公開中のアニメ映画『トラペジウム』とは、主人公(ヒロイン)の「エゴ」を隠そうとしていない、「正しくなさ」にも向き合った青春音楽映画であることが共通していますし、どちらも「JO1」のメンバー(川西拓実または木全翔也)が好演しています。アニメと実写それぞれの特徴を生かした演出や表現の豊かさは、両者を見てこそより感じられるかもしれません。

3:『不死身ラヴァーズ』5月10日より劇場公開中

「なぜか両思いになった瞬間に消える運命の相手を求め続ける」という、かなり変わった設定のラブストーリーです。監督は『ちょっと思い出しただけ』が大好評を博した松居大悟で、直近作ではほぼ封印していた超現実的な出来事を描く、「ぶっ飛んだ」作家性が全力疾走フルスロットル。中盤からは、勢いのある前半とはまた違ったトーンの関係性になることも見どころです。

その松井監督は本作の企画を10年以上にわたり温め続けてきていたそうで、なんと原作漫画とは男女が入れ替わっています。それでも一途(いちず)を超えて「猪突(ちょとつ)猛進」な恋のパワーは全く損なわれていませんし、見上愛と佐藤寛太という俳優の力もあって彼女たちを心から応援したくなりました。いい意味でリアリストで冷めたところもある前田敦子のキャラクターも強い印象を残すでしょう。

4:『告白 コンフェッション』5月31日に劇場公開

物語の発端は「16年前に親友の女性を殺害した」と告白してしまったこと。その後はビクビクし続ける生田斗真VS底知れなさのあるヤン・イクチュンの心理&物理バトルが、山小屋を舞台に74分でみっちりと展開する、ワンシチュエーションもののスリラーです。原作とは異なり、恐るべき相手が元留学生の韓国人になっていて、これが同じく雪山の山荘での出来事を描いた『落下の解剖学』に通ずる「異なる言語の意味が完全には分からない」緊張感につながっていた、実に良いアレンジでした。

山下敦弘監督は『カラオケ行こ!』などのコメディーや青春劇の方が得意な印象があったため、ここまで作風の異なる怖い映画でも、人間の内面を鮮烈にあぶり出していることに感心しました。その山下監督いわく、本作の企画が立ち上がったのは2018年で、シナリオ作業に難航し、さらにコロナ禍によって2度の撮影延期を経て、ようやく完成した労作でもあるようです。

さらに、山下監督による青春劇『水深ゼロメートルから』が5月3日より劇場公開中、「ロトスコープ」によるアニメ映画『化け猫あんずちゃん』が7月19日に劇場公開予定です。 

5:『違国日記』6月7日に劇場公開

両親を亡くした15歳のめいと、歳の差20歳の共同生活を始める物語で、何よりの目玉は主演の新垣結衣が小説家らしい理屈っぽい話し方をする変人にハマりまくりで愛おしいことでしょう。「美人」で「掃除が苦手」で「ダメなところ」もあり「言動がキツく思える時もある」けど「本質的には優しい」多層的なキャラクターは、「じわじわ」と好きになれること間違いなしです。

もう1人の主人公である少女を演じたのは、オーディションで選ばれた新人・早瀬憩。役が実年齢に極めて近い、今だからこその説得力と存在感、そして「寂しさ」を主体にした感情の揺れ動きは、実写ならではの大きな魅力でした。初めこそギクシャクしていた新垣結衣との関係性が変化していくところが見どころなのはもちろん、夏帆や瀬戸康史という大人同士の掛け合いも強い印象を残すはずです。

原作の小さく淡いエピソードが積み重ねっていく印象そのままに、11巻のボリュームの原作を映画に落とし込むための取捨選択も的確だと、個人的には思えました。そして、「完全に理解をしなくても寄り添える関係性」を紡いだ物語が救いになる人は多いでしょう。

さて、ここからは筆者はまだ本編を未見ではありますが、これから劇場公開される期待作を、テンポよく紹介していきましょう。

6:『からかい上手の高木さん』5月31日に劇場公開

地上波放送&Netflixで配信中のドラマに引き続き、監督を務めたのは『愛がなんだ』『街の上で』などの今泉力哉。描かれるのは原作では空白の時間に当たる2人の10年後における再会の物語で、母校で体育教師として奮闘する青年・西片の前に、高木さんが教育実習生として現れる物語になっているのだとか。

初共演を果たした永野芽郁と高橋文哉。原作者の出身地であり物語の舞台である、小豆島で全編を撮影した「ご当地映画」の魅力にも期待しています。

7:『先生の白い嘘』7月5日に劇場公開

原作は男女間の性の格差を描いて反響を呼んだ作品。女であることの不平等さを感じながらも、そのことから目を背けて生きてきた高校教師と、婚約をした親友、性の悩みを打ち明けてきた男子生徒との関係性を描く内容になっているようです。

主演の奈緒はもちろん、三吉彩花、「HiHi Jets」の猪狩蒼弥、風間俊介というキャスティングがどのような化学反応を起こすのでしょうか。レーティングはR15+指定となっており、地上波のドラマではできない表現にも期待できます。

8:『赤羽骨子のボディガード』8月2日に劇場公開

とある事情から100億円の懸賞金をかけられた幼なじみの女性を守るため、ボディガードとなった高校生が奮闘するという、かなり奇抜な設定の学園アクションコメディーです。

「Snow Man」のラウールが主演を務め、出口夏希、奥平大兼、高橋ひかる(※高ははしごだか)らが共演。監督は『変な家』の石川淳一。予告を見た限り、その設定以上に「ぶっ飛んだ」映像と表現も見どころになっていそうです。

9:『ブルーピリオド』8月9日に劇場公開

周りの空気を読んで流れに任せて生きてきた高校生が、1枚の絵をきっかけに美術の世界に全てを賭けて挑んでいく青春劇で、主演は眞栄田郷敦、共演は高橋文哉、板垣李光人、桜田ひよりと、旬の実力派キャストがそろっています。

監督は『サヨナラまでの30分』でも青春映画を、『東京喰種 トーキョーグール』の実写映画も手掛け、高い評価を得た萩原健太郎。どのように原作の「好きなことに真剣に向き合う」「天才」の物語を映画で表現するのかにも注目です。

10:『夏目アラタの結婚』9月6日に劇場公開

元ヤンキーで児童相談所に勤務する30代の独身の男が、なんと連続殺人事件の容疑者である死刑囚との結婚を申し出るという、これまたとんでもない設定の物語。主演は柳楽優弥と黒島結菜。監督は『20世紀少年』『BECK』でも漫画の実写映画化を手掛けた堤幸彦です。

柳楽優弥いわく、「この作品は『もしかしたらありえるかもしれない……』という、ファンタジーとリアリティーのギリギリのラインを攻めているところが個人的にはすごく面白いなと感じています」だとか。どのような「危険」な作品になるのか、期待しています。

ほかにも期待の漫画の実写映画化作品が続々!

さらに、3月8日に『マイホームヒーロー』も劇場公開されていましたし、5月24日に猫映画の『三日月とネコ』、7月12日に『キングダム 大将軍の帰還』、2024年に『モブ子の恋』が劇場公開予定です。
 
さらには、2025年には『トリリオンゲーム』と『ババンババンバンバンパイア』の実写映画版が公開予定となっています。
 
そして、大きな話題となったのは『【推しの子】』の実写版。2024年冬にドラマが配信開始&映画が劇場公開予定で、こちらはティザービジュアルの発表時に賛否両論を呼びましたが、本編では果たして……? ちなみに、『【推しの子】』のテレビアニメ版の第1話にあたり、2023年に劇場公開された『【推しの子】Mother and Children』(アニメ第1話の拡大版)が6月17より2週間限定の復活上映も行われます。
 
また、『はたらく細胞』が武内英樹監督と徳永友一脚本の『翔んで埼玉』タッグでの実写映画化が発表されていますが、映像やキャストや公開日は未公開です。

さらに、『ワンパンマン』と『僕のヒーローアカデミア』という日本初のヒーローものがハリウッドでの実写映画化が進行中ですが、こちらも映像やキャストや公開日は未定。アニメ映画も有名な『AKIRA』もハリウッド映画化が発表されているので、続報を待ちたいところです。

さらに、映画ではなくドラマですが、『磯部磯兵衛物語 ~浮世はつらいよ~』が7月12日にWOWOWで放送・配信、『幸せカナコの殺し屋生活』 がDMM TVで今冬に配信予定となっています。

 

結論:「キャスティング」「原作からの映画へのコンバート」が重要

総じて、このように漫画の実写映画化企画で重要なのは、「キャスティング」と「原作からの映画へのコンバート」だと改めて思えます。

そもそも漫画はギャグ作品に限らずデフォルメした表現もあるため、全く異なる表現である実写化のための工夫は必須ともいえます。

極端な印象のあるキャラクターも体現できる俳優のキャスティングはもちろん、その俳優の役作りが重要になるのも当たり前のこと。原作の再現にこだわりすぎるがあまり度を越したコスプレ感が出てしまったり、ミスキャストがされたりすると、「もう見た目の時点でダメ」と厳しい判断をされかねないのが現状でしょう。

しかしながら、これまで挙げた10作品(特に筆者が実際に本編を見た5作品)は、見た目で違和感を覚えるところはほとんどなく、原作をそのままトレースするのではない映画独自のアレンジも確実にプラスになっていて、キャスティングは文句のつけようがなく、何より実写ならではの「今しかない俳優の魅力を切り取る」魅力に満ち満ちていました。『赤羽骨子のボディガード』は白い衣装が極端ではありますが、コメディー寄りの作品なので「アリ」と思う人も多いでしょう。

また、連続ドラマでは物語を紡ぐための時間の余裕があり、Netflixで配信中の『ONE PIECE』はだからこその“原作の再構築”も見事でした。対して、映画では約2時間で物語を収めなければならない制約もあり、それでこそ原作のエッセンスを凝縮させることにも、漫画の実写映画化の面白さがあると、個人的には思います。

過去には批判されることも多かった漫画の実写映画化作品というジャンルにおいて、その印象をさらに払拭する傑作がこれからも生まれることを、大いに期待しています。

この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「CINEMAS+」「女子SPA!」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。 

文:ヒナタカ

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