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【丸の内】静嘉堂@丸の内 静嘉堂文庫竣工100年・特別展「画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎」

  • 2024.5.17

幕末明治期のマルチタレント 画鬼 河鍋暁斎(かわなべきょうさい)×鬼才 松浦武四郎(まつうらたけしろう)

静嘉堂@丸の内で開催中の 静嘉堂文庫竣工100年・特別展「画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎」「地獄極楽めぐり図」からリアル武四郎涅槃図まで[2024年4月13日(土)~6月9日(日)]を見て来ました。 幕末から明治期のマルチタレントとして知られ、交流もあった絵師・河鍋暁斎(かわなべきょうさい)と、探検家で好古家、著述家、北海道の名付け親と言われる松浦武四郎(まつうらたけしろう)。

画鬼と呼ばれた河鍋暁斎は、あらゆるものを描いた絵師で、確かな画力は、武四郎の愛蔵品図録『撥雲余興』の挿絵や、重要文化財《武四郎涅槃図》に見ることが出来ます。 重文《武四郎涅槃図》に描かれた武四郎の愛蔵品も共に展示される本展は、2人の交流と、それを支えた人々の古物(文化財)への思いが感じられる展覧会です。

※特別な許可を得て撮影しています。展示室内はスマホで撮影OK(一部撮影禁止)です。

 

出典:リビング東京Web

左側、河鍋暁斎 重要文化財《武四郎涅槃図》 明治19年(1886) 松浦武四郎記念館蔵、右下、《大首飾り》 縄文時代~近代 (公財)静嘉堂蔵、他展示風景 静嘉堂@丸の内

暁斎と武四郎―暁斎《地獄極楽めぐり図(じごくごくらくめぐりず)》、武四郎蒐集名品図録『撥雲余興(はつうんよきょう)』

奇想天外《地獄極楽めぐり図》は田鶴の追善供養のため

《地獄極楽めぐり図》は、河鍋暁斎が14歳で亡くなった日本橋の小間物問屋・勝田五兵衛(かつたごへい)の愛娘・田鶴(たつ)の追善供養のために描いた画帖です。 田鶴が阿弥陀三尊(あみださんぞん)の案内で冥界(めいかい)見物をしながら、極楽(ごくらく)へ辿り着くまでの霊界旅行を描いた奇想天外な物語です。

先に亡くなった親族と再会したり、閻魔大王と宴会をしたり、暁斎の画力があの世の世界を生き生きと描き出します。 楽しそうにあの世を旅する田鶴の様子は遺族を慰めたのではないでしょうか。

本作が描かれたのは、明治2~5年(1869~72)。 明治5年(1872)は、武四郎が『西蝦夷日誌(にしえぞにっし)』の挿絵を初めて暁斎に依頼した年でした。 明治6年から神田五軒町に住んでいた武四郎は、湯島に住んでいた暁斎とはご近所さん同士でした。

 

出典:リビング東京Web

河鍋暁斎 《地獄極楽めぐり図》 明治2~5年(1869~72) (公財)静嘉堂蔵 ※会期中場面替えあり

武四郎蒐集名品図録『撥雲余興(はつうんよきょう)』、暁斎へ挿絵を依頼

古物蒐集に熱心だった武四郎は、古物展観を行い、図録まで刊行しています。武四郎蒐集名品図録『撥雲余興』には暁斎に依頼した挿絵12図が掲載されています。

自身にも絵心があった武四郎ですが、愛蔵品を忠実に再現することを重視し、拓本や多色摺木版などを利用し、立体物は暁斎を始めとする絵師を登用しました。 掲載された古器物の内、30件以上が静嘉堂に伝存しています。

 

出典:リビング東京Web

右、松浦武四郎著・出版 岩下方平序 『撥雲余興』 明治10年(1877) (公財)静嘉堂蔵

武四郎コレクションの逸品《百万塔および陀羅尼(ひゃくまんとうおよびだらに)》

小野湖山の箱書が伴う《百万塔および陀羅尼(ひゃくまんとうおよびだらに)》。 称徳天皇(しょうとくてんのう)の勅願により、6年かけて制作された木造三重の小塔「百万塔」で、東大寺、興福寺、法隆寺など、奈良を中心に10ヵ所の大寺院に各10万基ずつ納められたそうです。

現存する「百万塔」はすべて法隆寺伝世品とのこと。すべて中に4種類の「陀羅尼」が収められているそうです。武四郎コレクションの逸品の1つです。

 

出典:リビング東京Web

《百万塔および陀羅尼》 神護景雲4年(770) (公財)静嘉堂蔵

暁斎と武四郎―天神(てんじん)と観音(かんのん)を篤く信仰、《野見宿禰図(絵馬)(のみのすくねず えま)》

暁斎と武四郎は、共に天神(菅原道真)と観音を篤く信仰していました。 天神(菅原道真(すがわらのみちざね))をことのほか信仰していた武四郎は、北野天満宮など各地へ参拝、古物の蒐集も行っています。 武四郎が天神信仰に熱心だったのは、大宰府(だざいふ)へ左遷された道真と自身の境遇を重ね合わせていたからとされています。

一方の暁斎は、明治14年(1881)頃より天神と観音を描くことを日課として、湯島天神や、浅草観音堂、護国院などに日課図を奉納していました。

河鍋暁斎《野見宿禰図(絵馬)》は実は天神様を表わしていた?!

野見宿禰は、垂仁天皇の皇后薨去に際して、殉死の代わりに陵墓に埴輪(はにわ)を立てることを進言し、土部臣(土師臣(はじのおみ))を許された人物で、菅原道真はその末裔にあたるそうです。

河鍋暁斎《野見宿禰図(絵馬)》は、「暁斎の一札」で知られる、明治17年(1884)に武四郎が発注した奉納絵馬の一枚とのことです。 本作は、野見宿禰の姿を描きながら、土師氏の末裔・菅原道真(天神)を描いた絵馬であるとされています。色彩も鮮やかな気品ある貴族の姿で描かれています。

 

出典:リビング東京Web

左、河鍋暁斎 《野見宿禰図(絵馬)》 明治17年(1884) 松浦武四郎記念館蔵

河鍋暁斎の画力と、松浦武四郎の奇抜な発想がコラボした重要文化財《武四郎涅槃図(たけしろうねはんず)》

武四郎を釈迦の涅槃図に見立てて描かれた重要文化財《武四郎涅槃図》。 沙羅双樹ならぬ松下に、縄文時代の自慢の大首飾りを着け、右腕を枕に横たわり、目を閉じて穏やかな笑みを浮かべる武四郎の姿が中心に描かれています。

武四郎の周囲には、釈迦の弟子や十二支の動物たちの代わりに、白衣観音や、天神、七福神や動物たち、聖徳太子や坂上田村麻呂など古代中世の隠士たちが悲しみにくれた表情を見せて集まっています。 描かれているのは、武四郎が蒐集した愛蔵の品々から写したものばかり。暁斎の確かな画力で、存在感をもって表情豊かに描かれています。

本作の箱蓋表には親友・小野湖山の墨書で「北海道人樹下午睡之図」とあり、武四郎の墨書も「北海翁松下午睡」とあるそうです。 好きなものに囲まれ「午睡(昼寝)」にまどろむ武四郎の表情は、現世にいながら夢の中の理想郷にいるような感じでしょうか。 本作を中心に、周りは武四郎愛蔵の古物が並び、重文《武四郎涅槃図》の世界を立体的に再現した展示となっていました。

 

出典:リビング東京Web

中央、河鍋暁斎 重要文化財《武四郎涅槃図》 明治19年(1886) 松浦武四郎記念館蔵

北海道の名付け親・松浦武四郎のアイヌ列伝《近世蝦夷人物誌(きんせいえぞじんぶつし)》

松浦武四郎は、28歳で蝦夷地(えぞち)(現・北海道)を旅して以降、約13年間に計6回現地の調査を実施。 アイヌの人々への思いを込めて「北加伊道」の名を提案した武四郎は、北海道の名付け親と言われています。

《近世蝦夷人物誌》は武四郎が実際に交流したり、噂を聞いたりしたアイヌの人々から約100名を選んでまとめたものです。 文章の他、挿絵も武四郎が描いています。アイヌの人々の風俗や特徴をよくとらえている温かみのある挿絵です。

北海道の開拓判官だった武四郎ですが、明治3年(1870)政府の政策に反対して辞職し、「馬角斎」と名乗り、以後は著述、出版と古物蒐集に情熱を傾けました。

本作は川喜田石水(かわきたせきすい)が所持し、後に孫で千歳文庫を創設する川喜田半泥子(かわきたはんでいし)が専用の帙(ちつ)を作り保存。 現在は石水博物館の所蔵となっています。

 

出典:リビング東京Web

松浦武四郎 《近世蝦夷人物誌》 安政4年(1857) 石水博物館蔵

静嘉堂文庫と千歳文庫―好古でつながる人々『雅俗日記(川喜田半泥子日記)(がぞくにっき かわきたはんでいしにっき)』

実業家にして好古の人々、岩﨑家と川喜田家の縁についても第四章 好古趣味の系譜―静嘉堂文庫と千歳文庫で紹介されていました。

明治末期頃より、武四郎の旧蔵品は、岩﨑彌之助(いわさきやのすけ)の所蔵となり、永らく静嘉堂文庫で秘蔵されて来ました。

また、武四郎の幼馴染で伊勢の豪商・川喜田家14代当主、川喜田石水(かわきたせきすい)と武四郎は古銭収集の共通の趣味があり、生涯懇意にしていたそうです。 千歳文庫を創設した16代当主・川喜田半泥子(かわきたはんでいし)は、静嘉堂文庫を拡充した岩﨑小彌太(いわさきこやた)と交流がありました。 『雅俗日記(川喜田半泥子日記)』には岩﨑小彌太がしばしば登場するそうです。

静嘉堂文庫竣工100年・特別展「画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎」「地獄極楽めぐり図」からリアル武四郎涅槃図まで、は6月9日(日)まで。 画鬼・河鍋暁斎の画力と、鬼才・松浦武四郎の2人と、彼らを支えた好古の人々の世界へ是非お出かけください。

 

出典:リビング東京Web

『雅俗日記(川喜田半泥子日記)』 昭和20年5月28日(1925) 石水博物館蔵

ミュージアムグッズ

ミュージアムグッズは、榛原コラボ 六角筆筒 オレンジ(1‚600円)、ピンズ 本造図譜 巻62 桃(数種) 緋桃(800円)を購入。 榛原製・唐三彩千代紙の六角筆筒は、静嘉堂収蔵の世界有数の唐三彩コレクションから15点を図柄にしているそうです。※価格は全て税込です。

 

出典:リビング東京Web

ミュージアムグッズ 静嘉堂文庫美術館

〇静嘉堂文庫美術館、静嘉堂@丸の内
URL:https://www.seikado.or.jp/
住所:〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-1-1 明治生命館1F
※美術館入口は、丸の内MY PLAZAの1階
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)

〇静嘉堂文庫竣工100年・特別展「画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎」「地獄極楽めぐり図」からリアル武四郎涅槃図まで
会期:2024年4月13日(土)~6月9日(日)※一部作品に会期中場面替えがあります。
休館日:月曜日
開館時間:10:00~17:00 ※土曜日は18:00、第四水曜日は20:00閉館。入館は閉館時間の30分前
休 館 日:月曜日
入 館 料:一般 1,500 円 大高生 1,000 円 中学生以下無
会場:静嘉堂@丸の内 (明治生命館1階)
障がい者手帳をお持ちの方(同伴者1名〈無料〉を含む) 700円
※混雑が予想されますので、来館日時指定予約がお薦めです。
※当日券の販売有。
※無料チケットをお持ちの方はご予約不要です。

〇ミュージアムショップ
営業時間:静嘉堂文庫美術館開館時間に準ずる

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