1. トップ
  2. おでかけ
  3. 【大分】別府・大分・佐伯……「Oita Cultural Expo! '24」でアート&カルチャーを味わい尽くす

【大分】別府・大分・佐伯……「Oita Cultural Expo! '24」でアート&カルチャーを味わい尽くす

  • 2024.5.17
  • 2383 views

2000年代から、温泉の街・別府市を中心に数々のアートイベントが開催され、恒久設置される作品も増えてきた大分県。そんな大分県の各所を舞台に、現在、国内外で活躍するアーティストの作品展示や、「アート×食文化」のカルチャーツアーなどが多数用意されたイベント「Oita Cultural Expo! '24」が2024年6月30日(日)まで開催されています。温泉や食を楽しみつつ、アートにどっぷり浸かれる、絶好のチャンスです。

大分駅前に巨大こけしがドーン! 徒歩圏内にYottaのアートが点在

大分駅前に横たわるYotta《花子》(2010)
Yotta『時化の雲からコンニチハ』《花子》

「Oita Cultural Expo! '24」は、現在開催中の観光キャンペーン「福岡・大分デスティネーションキャンペーン」に合わせて、2024年6月30日(日)までの会期で行われるもの。なかでも注目は大分市、別府市、佐伯市、臼杵市を舞台に行われる、土地が育んできた文化を新たな形で表現する「カルチャーイベント」です。

大分市で見られるのは、木崎公隆さんと山脇弘道さんから成る現代アートユニット・Yotta(ヨタ)による展覧会『時化の雲からコンニチハ』。鬼という存在に着目しながら作品制作を続けてきた彼らにとって、数々の鬼伝説が残る大分での過去最大級の展示には大きな意味があるそうです。

“鬼”とは、技術を持った異邦人、異形、病や災い、自然現象など、人間の理解の範疇を超えたもの。そして今回のタイトルの“時化(シケ)”とは、“うまく行っていない事”を指します。「社会が時化る時、暗雲の雲間から覗く鬼は、吉なのでしょうか? 凶なのでしょうか?」と問いかける彼らは、会期中大分に滞在し、街中の2カ所にアトリエを構えて新作を構想。最終日にはそのプレゼンテーションイベントを行う予定だそうです。

るるぶ&more.編集部

Yottaの作品は市内のあちこちに点在していますが、まず圧倒されるのは、大分駅北口前広場に横たわる、全長12mの巨大な《花子》の存在です。《花子》は2010年に「おおさかカンヴァス2010」でお披露目されて以来、「六本木アートナイト2012」や「京都文化力プロジェクト2016-2020」、「ARTISTS’ FAIR KYOTO 2022」などでさまざまな場所に設置され話題を呼んできたので、見覚えのある人もいるかもしれません。全身に伝統こけしの模様を纏った《花子》は、時々つぶやくようにしゃべるのもかわいい!

ガレリア竹町に停車中のYOTTAの作品、《金時》(左)と《穀》(右)
ガレリア竹町に停車中のYotta『時化の雲からコンニチハ』の、左から《金時》《穀》

一方、中央町にあるアーケード商店街、ガレリア竹町の中には、石焼き芋販売車《金時》と、大砲型ポン菓子機を積載した《穀》を展示。「Yotta のアトリエと展⽰会場を巡るまち歩きツアー」の際には《金時》で作られた焼き芋をツアー参加者に振舞いました。5月25日(土)には《穀》によってポン菓子を製造し販売する予定です。

西大分港に到着したYOTTAの《ワンダーえびす丸》 撮影:種木悠二
西大分港に到着したYOTTAの《ワンダーえびす丸》 撮影:種木悠二

さらに、香川県にて出航準備中だった船の作品《ワンダーえびす丸》も、4月19日(金)に大分市に到着! 乗ることはできませんが、安全な場所から眺めることができます。

この作品は、明治政府に禁止されたが、1970年代まで瀬戸内に存在していたといわれる、船上生活をする漁民「家船(えぶね)」に着想を得たもの。「瀬戸内国際芸術祭2019」の際に「ヨタの漂う鬼の家」として公開されたもので、今回が初めての長距離航行となりました。会期中は停泊している《ワンダーえびす丸》を安全な場所からぜひ眺めてみてください。

大分市内には、おしゃれなストリートアートもいっぱい!

大分中央通り線地下道にあるパブリックアート、鈴木ヒラクさんの《点が線の夢を見る》(2017)
大分中央通り線地下道にあるパブリックアート、鈴木ヒラクさんの《点が線の夢を見る》(2017)

大分市内を散策していると、これまでにさまざまな作家が手がけてきたストリートアートが各所で見られるので、大分市が用意している「おおいたストリートアートMAP」を見ながら回るのがおすすめ。

大分中央通り線地下道には鈴木ヒラクさんによる地下通路の壁画《点が線の夢を見る》が。この近くには、1913年に東京駅も手がけた建築家、辰野金吾設計で竣工した歴史的建造物「大分銀行 赤レンガ館」があり、1階には大分県内の生産者による厳選の食品や工芸品が揃う「Oita Made Shop 赤レンガ本店」が入っているので、ぜひこちらも覗いてみてはいかがでしょうか。

温泉天国・別府で元気に! 栗林隆の元気炉でエネルギーを充填

北浜公園で初披露された時の栗林 隆さんの《元気炉トリップ》。左後方に見えるのはトム・フルーインが昨年、アートプロジェクト「Alternative-State」の一環として制作した《ウォータータワー10:別府市、2023》
北浜公園で初披露された時の栗林 隆氏の《元気炉トリップ》。左後方に見えるのはトム・フルーインが昨年、アートプロジェクト「Alternative-State」の一環として制作した《ウォータータワー10:別府市、2023》

大分駅からJR日豊本線で約12分で行ける別府では、栗林 隆氏によるプロジェクト《元気炉トリップ》が市内各所を巡っています。栗林さんはドイツ・カッセルで5年に一度開催される、世界的に大きな影響力を誇るアートの国際展「ドクメンタ」に、2022年に日本人として唯一招聘されたアーティスト。《元気炉》は「人々を元気に、健康に」をスローガンにした、人々の体にポジティブなエネルギーを充満させる体験型アートです。参加者は大きな窯で薬草入りの湯を沸かし、その蒸気を充満させてサウナ状態にした空間を体験します。

もちろん、元気炉は原子炉とかけてあり、その形も原子炉を模したもの。これまでも場所に合わせてさまざまな元気炉が作られてきましたが、今回のものも別府のために作られたものとなります。この元気炉、会期中の金~月曜(火~木曜は休み)に市内各所で実施されるので、公式Instagramで開催場所や時間を確認してから訪れてみてください。
https://www.instagram.com/genkirotrip

栗林 隆《植物元気炉》(2024) 撮影:山中慎太郎(Qsyum!) ©︎混浴温泉世界実行委員会
栗林 隆《植物元気炉》(2024) 撮影:山中慎太郎(Qsyum!) ©︎混浴温泉世界実行委員会

栗林さんの作品としては他にも、別府駅からバスで20分ほどのところにある鉄輪(かんなわ)温泉にある大谷公園内に、混浴温泉世界実行委員会が主催するアートプロジェクト「ALTERNATIVE-STATE」の第4弾として建てられた植物園型の新作《植物元気炉》があります。これは通常の元気炉とは違い、中に植える植物を市民のみなさんから募集し、それを市民自らが育てるというもの。本体は木材とガラスで作られています。
 
栗林さんによれば、「すべての人たちの庭から、植物たちを、心の庭からは、水やりや、思いやり、気遣いなど、素敵でポジティブなエネルギーを持ち寄ってもらうことで稼働する、不思議で素敵な植物園」なのだそう。大谷公園には無料の足岩盤浴があるほか、近くには温泉噴気による調理法「地獄蒸し料理」が楽しめる、有名な「地獄蒸し工房 鉄輪」も。ぜひ足を運んでみて。

台湾を代表するアーティスト、マイケル・リンの作品が街中に

2009年に描かれた、「SELECT BEPPU」2階にあるマイケル・リンの襖絵
2009年に描かれた、「SELECT BEPPU」2階にあるマイケル・リンの襖絵

ちなみに別府には、マイケル・リンさんによる浴衣の花柄をモチーフにした大型壁画《温泉花束》が映画館のある「ブルーバード会館」の壁面に描かれていたり、セレクトショップ「SELECT BEPPU」の2階に同じくマイケル・リンの襖絵があったりと、街中にもアートが。「SELECT BEPPU」には地元の特産品である竹細工の作家の作品や、多彩なアーティストによるグッズ、それに別府土産にぴったりのお菓子やお茶などが並んでいるので、こちらにもぜひ足を運んでみてください。

佐伯の戦争遺構で市民が参加した藤井光の映像インスタレーションに浸る

(左)藤井 光《終戦の日 / WAR IS OVER》(2024)、(右)丹賀砲台園地内の地下弾薬庫の入口
(左)藤井 光《終戦の日 / WAR IS OVER》(2024)、(右)丹賀砲台園地内の地下弾薬庫の入口 Photo:久保貴史

大分空港から南東にバスで2時間ほどの場所にある佐伯市は、戦時中には軍事都市として発展した場所。市内には数々の戦争遺構が残っていますが、そのひとつ「丹賀砲台園地」には、昭和17(1942)年1月11日に発生した爆発事故の傷跡が今なお生々しく残っています。その地下弾薬庫を会場として行われているのが、美術家・映像作家の藤井光さんによる映像作品を展示する個展「終戦の日 / WAR IS OVER」です。

藤井 光《終戦の日 / WAR IS OVER》(2024)
藤井 光《終戦の日 / WAR IS OVER》(2024) Photo:久保貴史

ここで上映されているのは新作の映像インスタレーション《終戦の日 / WAR IS OVER》。79年前の終戦の日、言葉にはならない感情が込みあげたであろう人々の姿を、一般公募で集まった20名の佐伯市民の人々が演じています。訪れた人は、無機質な金属のフレームとスクリーン、スピーカーで構成されるこの作品を、弾薬庫の中を行き来しながら鑑賞することが可能です。

藤井さんは「この作品は、今なおも疼く戦争の記憶と海の向こうで継続されてきた殺戮の犠牲者を、時空を超えて想像できるかを試みるものです。先の見えないこの時代に、第二次世界大戦で使用された弾薬庫の中から、人間はいつの日か『終戦の日』を創造できるのかを問い直していきます」とコメントしています。

なお、この作品の鑑賞と合わせて、カルチャーツアー「藤井 光の新作鑑賞と『海』の誕生を感じる旅」(日帰りバスツアー)が、5月19日(日)、6月8日(土)に開催予定。リアス海岸が広がる佐伯市鶴見地区を巡り、《終戦の日》を鑑賞したり、「佐伯の殿様 浦でもつ。浦の恵みは山でもつ」と言われるほど豊かな山・海を持つこの地域に生きる人々と対話したり、郷土料理「ごまだし」を使ったブイヤベースと地元のパン屋さんのパンの昼食を楽しんだり、「水の子島海事資料館」を訪れたり、最後には「さいき海の市場」でショッピングしたり。充実のバスツアーになっているのでぜひチェックしてみてください。

風景と食設計室 ホーによる朗読パフォーマンスと料理を臼杵で満喫

風景と食設計室 ホー 作品イメージ 《台所に立つ、灯台から見る》 Photo by Ryohei Yanagihara
風景と食設計室 ホー 作品イメージ 《台所に立つ、灯台から見る》 Photo by Ryohei Yanagihara

他にも、臼杵市では「遠くの風景と、ひとさじのスープ。世界と、わたしの手のひらは、繋がっている。」をコンセプトに、風景・文化・社会と鑑賞者が、「食」を媒介にして繋がるような作品を制作してきた、風景と食設計室 ホーによる食事と朗読の公演『石が土になる間に』を開催するとともに、公演のインスタレーションを展示。

本作品は臼杵市深田地域のリサーチやインタビューを元に制作した食事と朗読の公演で、参加者は作品のインスタレーションの中で、アーティスト自身による朗読パフォーマンスと料理を体験するというもので、こちらも公演当日の5月18日(土)、5月19日(日)、6月8日(土)、6月9日(日)にバスツアーが用意されています。

国指定史跡、岡城跡のある竹田で地域食材を使ったランチに舌鼓

「暮らす実験室」のイメージ
「暮らす実験室」のイメージ

竹田市では、住む・泊まる・集う・働く・あそぶを共有し、自分らしい暮らし方を実験している多機能シェアハウス「暮らす実験室」による特別企画「ぐるずぶTABLE at 暮らす実験室 自然と土地の営みにつながる、おいしいマルシェ」を開催。地域食材を用いたランチと生産者のトークによるイベントと、日本百名城にも選ばれた岡城跡の城下町の町歩きを予定しています。こちらは5月26日(日)、6月1日(土)、6月2日(日)に開催されます。

国東半島でスターアーティストたちの野外作品をまとめて巡る

《ANOTHER TIME XX》アントニー・ゴームリー
《ANOTHER TIME XX》アントニー・ゴームリー Photo:久保貴史

せっかく大分を訪れたら、この機会に世界的に活躍するオノ・ヨーコ氏やアントニー・ゴームリー氏、チームラボ、勅使川原三郎氏、川俣正氏、宮島達男氏など12作家16作品が点在する国東半島をレンタカーでめぐるのもおすすめです。

「福岡・大分デスティネーションキャンペーン」のサイト(https://fukuoka-oita-dc.jp/)ではアート以外のモデルコースなども提案しているので、ぜひいろいろ組み合わせながら大分滞在を楽しんでみてはいかがでしょうか。

■Oita Cultural Expo! '24
会期:2024年6月30日(日)まで
会場:大分県各所(新作=大分市、別府市、佐伯市、臼杵市 イベント=竹田市 既作品=国東半島)
公式サイト:https://oita-cultural-expo.com/

■福岡・大分デスティネーションキャンペーン 2024年度春
会期:2024年6月30日(日)まで
公式サイト:https://fukuoka-oita-dc.jp/


Text:山下紫陽

●店舗・施設の休みは原則として年末年始・お盆休み・ゴールデンウィーク・臨時休業を省略しています。
●記事の内容は取材時点の情報に基づきます。内容の変更が発生する場合がありますので、ご利用の際は事前にご確認ください。

元記事で読む
の記事をもっとみる