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【映画】子どもが失踪したとき、母親や夫婦やマスコミはどうなる『ミッシング』 5/17公開 【伊藤さとりのシネマでぷる肌‼】

  • 2024.5.15
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映画パーソナリティ・心理カウンセラーの伊藤さとりさんが、お肌も心もぷるっと潤う映画を紹介する連載。今回は、5月17日(金)公開の『ミッシング』。石原さとみさんが、娘が失踪した母親役を演じます。知っている石原さとみさんじゃないような迫力や、𠮷田恵輔監督の人間描写が見もの。


𠮷田恵輔監督が描く「辛さや怒りとの折り合いの付け方」

自分の解らないことに人は惹かれる。そんな言葉をよく聞きます。例えばそれが「女心が解らないから撮りたい」という男性監督からの声でもあったりするのですが、リサーチにリサーチを重ねた結果、とんでもなく面白いものが生まれたりもするのです。まさに「共感」すれば良い作品というわけではないということ。本作『ミッシング』は、𠮷田恵輔監督が挑む「辛さや怒りとの折り合いの付け方」への問いであり、それに対して多角的な視点で検証するような人間の内面をこれでもかと覗き込む作品でした。

最初に幼女失踪事件の容疑者として浮かび上がるのが、石原さとみ演じる沙緒里の弟なんですが、当初は弟が主人公の物語を考えていたそうで、前作『空白』(2021)のサイドストーリーとして構想されていたと聞くと納得のキャラクターです。けれど、弟の圭吾(森勇作)が主人公でなくとも、社会のはみ出し者である彼の声にならない叫びは映画に振動のような作用をもたらし、失踪事件の道筋のような重要な役割をもたらしていきます。

事件の目撃者として観ていた

そこから浮かび上がってきたキャラクターである圭吾の姉・沙織里が主人公になった物語は、行方不明になった娘の事件の捜査が進展せず、暗礁に乗り上げたことで警察やテレビ局への不満が膨らむ中、どんなことでも捜査のきっかけになるならばとテレビディレクターの要望にも応えるという親ならではの切実さが露わになっていきます。更に隣にいる夫が自分と同じ気持ちではなければ夫婦仲に亀裂は生まれるわけで、そのコントラストもリアルなものでした。 この幼女失踪事件という題材から人間の意地悪さや優しさを映し出したかったであろう𠮷田監督は、観客にすぐそこで彼らの行く末を見守ってほしい思いで『BLUE/ブルー』(2021)辺りから多用している背中越しの撮影を本作でも駆使しています。結果的に中村倫也扮する誠実さと野心との間で揺れるディレクター砂田の葛藤や、青木崇高演じる社会に対して過敏になっている妻をなだめようとしながら自分なりに社会と折り合いをつけながら娘を思い続ける父親の姿をすぐそこにいるかのような視点で私達が追っていくのです。

私は冒頭、良い物語に「共感」は必要ないと書きましたが、この映画を観た後、驚くほど彼らを理解した気になっていました。そして自分があの母親だったらどう自分の気持ちに折り合いをつけるのだろうと思いを巡らせていました。本作の凄まじさは観ているうちに「目撃者」になって、事件の捜査に関わるひとりに自分がなっていたことでした。それが自分が親なら尚更で、それが独り者なら尚更で、それが仕事に一生懸命なら尚更かもしれません。
——伊藤さとり

☑5月17日(金)全国公開 『ミッシング』

【あらすじ】とある街で起きた幼女の失踪事件。あらゆる手を尽くすも、見つからないまま3ヶ月が過ぎていた。
娘・美羽の帰りを待ち続けるも少しずつ世間の関心が薄れていくことに焦る母・沙織里は、夫・豊との温度差から、夫婦喧嘩が絶えない。唯一取材を続けてくれる地元テレビ局の記者・砂田を頼る日々だった。そんな中、娘の失踪時に沙織里が推しのアイドルのライブに足を運んでいたことが知られると、ネット上で“育児放棄の母”と誹謗中傷の標的となってしまう。世の中に溢れる欺瞞や好奇の目に晒され続けたことで沙織里の言動は次第に過剰になり、いつしかメディアが求める“悲劇の母”を演じてしまうほど、心を失くしていく。一方、砂田には局上層部の意向で視聴率獲得の為に、沙織里や、沙織里の弟・圭吾に対する世間の関心を煽るような取材の指示が下ってしまう。それでも沙織里は「ただただ、娘に会いたい」という一心で、世の中にすがり続ける。その先にある、光に— 2024年/日本/119分
出演 石原さとみ
青木崇高 森優作 有田麗未
小野花梨 小松和重 細川岳 カトウシンスケ 山本直寛
柳憂怜 美保純 / 中村倫也
監督・脚本:𠮷田恵輔
音楽:世武裕子
製作:井原多美 菅井敦 小林敏之 高橋雅美 古賀奏一郎
企画:河村光庸
プロデューサー:大瀧亮 長井龍 古賀奏一郎
アソシエイトプロデューサー:行実良 小楠雄士
撮影:志田貴之
照明:疋田淳
録音:田中博信
装飾:吉村昌悟
衣装:篠塚奈美
ヘアメイク:有路涼子
スクリプター:増子さおり
助監督:松倉大夏
制作担当:本田幸宏
編集:下田悠
音響効果:松浦大樹
VFXスーパーバイザー:白石哲也
キャスティング:田端利江
題字:赤松陽構造
製作幹事:WOWOW
企画:スターサンズ
制作プロダクション:SS工房
配給:ワーナー・ブラザース映画
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