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110年ぶり!日本原産の新種ユリ、見落とされていた種をDNA解析で発見!

  • 2024.5.15
日本原産の新種のユリ「ミナミスカシユリ」を1世紀ぶりに発見!
日本原産の新種のユリ「ミナミスカシユリ」を1世紀ぶりに発見! / Credit:大阪公立大学 . 日本原産ユリ属の新種を発見! 〜形とDNAの解析で8つに分類し学名を整理〜

ずっと身近に存在したのに新種と気づかれていませんでした。

大阪公立大学と京都大学らの研究者たちにより、日本原産の新種のユリが確認されました

しかしこの新たに分類された新種「ミナミスカシユリ」はこれまで他種にまとめて分類されていたのです。

ずっと同じ種だと思われていた花が、よく見ると葉の形などに違いがあり、このたびDNA分析を行ったところ新種と呼べるほど異なった系統であることが判明しました。

論文の第一著者である渡辺誠太氏は「一見するとシンプルな植物のため、個々の差が見落とされてきたのかもしれません」と述べています。

日本における新種のユリ発見はNHK朝ドラ「らんまん」のモデルとなった牧野富太郎氏が最後に発見してから110年ぶりとなる快挙です。

研究内容の詳細は『TAXON』にて掲載されました。

目次

  • 110年ぶりのユリの新種

110年ぶりのユリの新種

スカシユリ類(ユリ科ユリ属)は上向きでオレンジ色の花をつける植物で、これまで4つの分類群が認められてきました。

スカシユリ類は夏に美しいオレンジ色の花を咲かせることで知られており、観賞価値が高いことから、200年以上前から野生種や国内で作られた園芸品種が国外へ輸出されてきました。

スカシユリ(千葉県太東海浜植物群落・2008年7月)
スカシユリ(千葉県太東海浜植物群落・2008年7月) / Credit:wikipedia

ただ既存の分類方法は曖昧であり、スカシユリ類の多様性を正確に反映したものではありませんでした。

そこで今回、大阪公立大学と京都大学などの研究者たちは、改めてスカシユリの標本を採取し、物理的な形態とDNAの両方を綿密に分析してみることにしました。

すると驚いたことにスカシユリ類は、これまでの倍の8つの分類群にわけられることが判明しました。

研究で明らかになった新たな分類:3 種 2 変種 2 品種 1 雑種
研究で明らかになった新たな分類:3 種 2 変種 2 品種 1 雑種 / Credit:大阪公立大学 . 日本原産ユリ属の新種を発見! 〜形とDNAの解析で8つに分類し学名を整理〜

またその中の1種「ミナミスカシユリ」は新種と言えるほど他と異なっていることがわかりました。

日本産ユリ属で新種が確認されたのは1914年に牧野富太郎博士が記載したタモトユリ依頼、110年ぶりとなります。

(※牧野富太郎博士は「日本植物学の父」とも呼ばれておりNHK朝ドラ「らんまん」のモデルともなりました。牧野氏は94歳で死去する直前まで日本全国の膨大な植物標本の作製に取り組ん降り、命名植物は1500種を超えています。)

改定後の分類例。サドスカシユリ(左)とミナミスカシユリ(右)の葉の違い ミナミスカシユリ(右)は葉の先端が爪状に外側に曲がり、 サドスカシユリ(左)を含むその他のスカシユリでは先端は直線状に伸びる。
改定後の分類例。サドスカシユリ(左)とミナミスカシユリ(右)の葉の違い ミナミスカシユリ(右)は葉の先端が爪状に外側に曲がり、 サドスカシユリ(左)を含むその他のスカシユリでは先端は直線状に伸びる。 / Credit:大阪公立大学 . 日本原産ユリ属の新種を発見! 〜形とDNAの解析で8つに分類し学名を整理〜

新たに発見されたミナミスカシユリは本州(茨城県〜静岡県)と伊豆諸島の海岸に生育し、葉の先端が爪状に曲がるという面白い特徴をもっています。

新認識の8つの分類群の内、7つは日本固有植物で、海岸から山地まで各環境に適応しており、独自の形質を進化させています。

これらは複雑な過程を経て分化してきたと考えられ、この研究が種分化研究の手がかりになることが期待されます。

論文の第一著者である渡辺誠太氏はプレスリリースにて「こんなに花が目立つユリでも、形態を詳しく見ていくと似て非なるものがあり、DNAの力を使ってより明確にすることができました。一見するとシンプルな植物のため、個々の差が見落とされてきたのかもしれません。本研究を通して形態観察の重要性を改めて感じました」と述べています。

参考文献

日本原産ユリ属の新種を発見! 〜形とDNAの解析で8つに分類し学名を整理〜
https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-10708.html

元論文

Biosystematic studies on Lilium (Liliaceae) II. Evolutionary history and taxon recognition in the L. maculatum–L. pensylvanicum complex in Japan
https://doi.org/10.1002/tax.13141

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

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