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人生には「決断&行動」が必須? 陽太(木戸大聖)の言葉は幼なじみゆえの親切心か 『9ボーダー』4話

  • 2024.5.15

19歳・29歳・39歳。節目の年齢を目前にした三姉妹が「LOVE」「LIFE」「LIMIT」の「3L」について悩み、葛藤し、それぞれの答えを見つける過程を描くヒューマンラブストーリー『9ボーダー』(TBS系)。第4話では、勢いで会社を辞めると宣言した大庭七苗(川口春奈)が将来を模索する様子、そして、七苗の幼なじみ・高木陽太(木戸大聖)がコウタロウ(松下洸平)に物申す姿が見られた。

決めなきゃ、前には進めない? 29歳女性の現実

未だ進学も就職もしていない大庭八海(畑芽育)と、会社を辞めるまで有給休暇を消化中の七苗(川口)、そして、夫・成澤邦夫(山中聡)との離婚を決意したものの、離婚届を出せずにいる六月(木南晴夏)。それぞれ、自分に合ったペースで決断&行動をしている三姉妹だが、よくよく俯瞰(ふかん)すると、現状は変わっているようで変わっていない、とも言える。

勢いで退職を宣言した七苗は、六月から「やることたくさんあるよ」と説教を受けながらも「今は仕事から解放されて、ほっと一息ついて好きな人のことを考えたい。そういう時期なの」と、つかの間の人生モラトリアム期に突入している。

同期の穴埋めをしつつ、後輩の(余計な)面倒もみていた七苗の働きぶりを振り返ると、せめて有休消化中は彼女にゆっくりしてほしいと思う気持ちも芽生える。それでも、時間は止まってはくれない。

コウタロウも「これからどうするか考えないと」と、自分の生き方のことか、はたまた七苗との関係のことか、どちらとも取れる発言をしている。

決めないといけない、行動しないといけない。ゆっくり自分の人生と向き合う時間も必要だけれど、現実から逃避できる期間はそこまで長くはなくて、気づいたら泥沼に足を絡め取られているかもしれない。

やっぱり人生には、決断&行動が必要なのだろうか? 焦って決めなくとも、無理をして行動を起こさなくても、いいんじゃないだろうか?

たとえば、自分が無職の身のまま、懸命に働いている人たちを見ると、七苗のように、一気に無力感や「ここにいてはいけない感」が追いかけてくるものだろう。七苗がコウタロウの歌を聴き、「私はこれから何をがんばればいいのかなって」と口にしたのは、彼に対する甘えや弱音でもあり、かつ、自分の人生と冷静に向き合った瞬間に生まれた、紛れもない本音でもあったのかもしれない。

七苗はこれまでも、精一杯やってきた。決して人生をサボってきてはいない。少し休みたいだけの彼女にとって、優しく「どうしたいかわかんないときは、今日一日、楽しく過ごそう」と言ってくれるコウタロウの存在は、果たして良薬なのか、それとも。

陽太がコウタロウを牽制した理由

4話では、かねてより七苗への恋心をほのめかしてきた陽太(木戸)が動く。

突然あらわれたコウタロウが七苗のそばにいるようになり、内心穏やかじゃないのは当然のこと。コウタロウが大金を持っていることを知り、記憶がないことにかこつけて七苗に近づいているように見えることも、陽太からしたらおもしろくないはずだ。

陽太がコウタロウに対し「七苗のこと、どう思ってるんですか?」「ノリやムードだけで七苗を振り回すのはやめてほしい」と真っ向から伝えたのは、本人も口にしたように、純粋に七苗のことを心配したからだろう。

「コウタロウさんが本気で七苗のこと考えてるんなら別に、何の問題もないんです」としっかり前置きしていることからも、ただ陽太が自分本位に発言しているわけではないことが伝わる。

しかし、この幼なじみゆえの親切心に、長い関係性に甘えていつまでも七苗に想いを伝えられていない陽太自身のふがいなさが混じっているのであれば、話は変わってくる。七苗の立場からすれば、せっかく芽生えた恋に水をさしてほしくはないだろう。しかも、自分のあずかり知らぬところで。

陽太を演じる木戸の、真摯(しんし)かつ、もどかしさが滲(にじ)み出るような演技は特筆に値する。しかし、陽太の行動は、「当て馬ポジションのキャラが本命の存在に無用な牽制(けんせい)をする」という、ラブストーリーのドラマにありがちな流れに収まってしまっている。八海が陽太に垣間見せた好意に対しても、彼女を妹キャラにすることで逃げており、なんとも中途半端だ。

陽太は、おおば湯で一緒になった松嶋朔(井之脇海)に「余計なことを言ったかな……」とこぼしているあたり、彼もまた、心に七苗の存在があるまま、決断しきれずにいる迷子の一人なのかもしれない。

“謎の少年”は膠着しつつある物語を動かす?

半ば膠着(こうちゃく)しつつある物語のキーパーソンとして、1話からほのめかされていたのは三姉妹の父親・大庭五郎の存在である。置き手紙だけを残して失踪したという大庭家の父だが、未だその理由が明かされていない。ドラマの公式Webサイトでも、演じている役者の情報も含め、詳細は伏せられている。

置き手紙があること、おそらくメッセージアプリを用いて送られた連絡に「既読」がついた、という言及があったこと、そして「もうすぐカエル」と絵入りのはがきが届いたことから、失踪は父親本人の意思であり、何はともあれ身体は無事なのかもしれない。

父親はなぜ失踪してしまったのか? 本人が帰ってきて、その理由が明かされることで、ふたたび物語が動き出すはずだ。そんな中、もう一人のキーパーソンとなり得る“謎の少年”(齋藤潤)が、4話の終盤に登場する。

この少年にまつわる情報も伏せられてはいるが、おそらく年の頃合いが中学生くらいであること、おおば湯を探しているらしいことから、三姉妹の父親に関する情報を持っているのではないか。もしかしたら、父親と別の女性の間に生まれた子どもである可能性もある。

邦夫に離婚届を渡してバツイチとなった六月と朔の関係性、七苗の新しい仕事やコウタロウとの行く末、そして八海の進路。何が起こっても生きていかねばならない以上、いつかそのときが来たら、決断&行動せねばならない。もうすぐ帰ってくるであろう父親や謎の少年は、三姉妹の人生の起爆剤となるのだろうか?

■北村有のプロフィール
ライター。映画、ドラマのレビュー記事を中心に、役者や監督インタビューなども手がける。休日は映画館かお笑いライブ鑑賞に費やす。

■モコのプロフィール
イラストレーター。ドラマ、俳優さんのファンアートを中心に描いています。 ふだんは商業イラストレーターとして雑誌、web媒体等の仕事をしています。

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