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「屋久島の植物がミニチュア化する謎」不思議な進化の真相を解明

  • 2024.5.15
屋久島の植物がミニチュア化する謎をついに解明!原因は「ヤクシカ」だった
屋久島の植物がミニチュア化する謎をついに解明!原因は「ヤクシカ」だった / Credit: species.wikimedia

自然豊かな屋久島では不思議なこと、多くの植物種がミニチュア化する現象が起きています。

他の島では普通に大きな種でも、なぜか屋久島では小さくなっているのです。

これは屋久島の謎として、研究者たちの頭を悩ませ続けていました。

しかし今回、東北大学の研究により、植物のミニチュア化は「シカの採食圧」が原因で起きていたことが判明したのです。

屋久島の植物はシカに食べられないために小さく進化していたようです。

研究の詳細は2024年5月8日付で科学雑誌『Journal of Ecology』に掲載されています。

目次

  • シカへの対抗手段として「ミニチュア化」していた!

シカへの対抗手段として「ミニチュア化」していた!

屋久島は九州の南70キロの地点に位置し、世界自然遺産にも登録されている日本有数の生物多様性のホットスポットです。

そんな屋久島では以前から、葉っぱや茎の長さが5センチにも満たない小さな植物が80種以上も分布していることが知られていました。

島の外では普通の大きさの種でも、屋久島でだけ極端に小さくなっているのです。

屋久島の植物がミニチュア化する原因としては、これまで「土壌の貧栄養説」「低温説」「日照不足説」などが指摘されてきましたが、どれも確かな証拠はありません。

AB:屋久島の高原、CD:屋久島のミニチュア化した植物、E:屋久島のミニチュア化していない植物、FG:他の島の普通のタイプ(CDと対応)、H:ヤクシカ
AB:屋久島の高原、CD:屋久島のミニチュア化した植物、E:屋久島のミニチュア化していない植物、FG:他の島の普通のタイプ(CDと対応)、H:ヤクシカ / Credit: 東北大学 – 屋久島のミニチュア植物群の進化はシカの採食圧が原因だった! (2024)

その中で研究チームは新たに、植物のミニチュア化をもたらした要因として、屋久島に住む草食動物の「ヤクシカ」に注目しました。

ヤクシカは屋久島とその近くにある口永良部島(くちのえらぶじま)にのみ分布する日本の固有種です。

これまでの研究で、小型化した植物はシカにとって食べにくいことがわかっています。

そこでチームは「屋久島の植物のミニチュア化はヤクシカの採食圧によって引き起こされたのではないか」と仮説を立てて、検証を開始しました。

ヤクシカ
ヤクシカ / Credit: species.wikimedia

チームは2020〜2022年にかけて、ヤクシカが好む植物30種と好まない植物10種の合計40種を選び、そのサイズを測定しました。

また各種ごとに、他の島に分布する同じ種とサイズ比較をしています。

その結果、チームの予想通り、ヤクシカが好んで食べる植物の場合、屋久島の種は他の島の種に比べて、およそ半分から10分の1程度にまでミニチュア化していることが判明したのです。

他方で、ヤクシカが好まない種では、屋久島でも他の島でもサイズに変化がありませんでした。

ヤクシカが好んで食べる種がミニチュア化していた。嫌いな種はサイズが変わらなかった
ヤクシカが好んで食べる種がミニチュア化していた。嫌いな種はサイズが変わらなかった / Credit: 東北大学 – 屋久島のミニチュア植物群の進化はシカの採食圧が原因だった! (2024)

また植物のミニチュア化に気象条件や土壌栄養分はまったく関係していなかったことから、屋久島の植物が小さくなったのはヤクシカに食べられないための適応進化であると結論されました。

チームはこれほど大規模なミニチュア化が発生した要因として、屋久島におけるヤクシカの個体密度の高さが大いに関係していると指摘します。

屋久島にはヤクシカの天敵となる動物がいないため、歴史的に彼らはのびのびと繁殖を続けてきました。

2008年の調査によると、屋久島の高原域には1平方キロあたり14〜39頭のヤクシカが生息しているとされ、これは本州のシカに比べて10倍以上の高密度となっています。

結果、ヤクシカに食べられやすい植物たちが淘汰され、ヤクシカに食べられにくい小型化した植物たちが生き残るというミニチュア化の進化が起きたのでしょう。

参考文献

屋久島のミニチュア植物群の進化はシカの採食圧が原因だった! 80種にわたる植物の大規模な収れん進化の解明
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2024/05/press20240510-03-deer.html

元論文

Deer grazing drove an assemblage-level evolution of plant dwarfism in an insular system
https://doi.org/10.1111/1365-2745.14309

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

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