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ミヤマキリシマと新緑が織りなす「くじゅう連山」。九州の初夏を知らせる絶景をめぐる

  • 2024.5.14

こんにちは、トラベルライターの土庄です。

もう夏が目の前に来ていますね!私が活動の中心としている山の世界では、これから夏にかけて山の花が見頃を迎えます。

山の花といえば、日本アルプスなどに咲く高山植物が有名ですが、じつは一足早く登山愛好家たちを魅了しているのが「ミヤマキリシマ」です。九州の霧島連山で発見されたこと、深い山に咲くという意味を含めて名付けられました。

そこで今回は、ミヤマキリシマが山肌を彩る「くじゅう連山」の山旅をご紹介!ピンクと緑が織りなす山岳絶景をたっぷりとお届けします。

長者原登山口から入山!変化に富んだ雨ヶ池越え

photo by Yuhei Tonosho

大分県玖珠郡九重町から竹田市北部にかけて広がる「くじゅう連山」。主峰・久住山(くじゅうさん、標高1,786m)や九州本土最高峰・中岳(標高1,791m)をはじめとして、標高1,700m前後の峰々からなる九州の屋根です。

登山道にはかなりのバリエーションがありますが、長者原(ちょうじゃばる)登山口から入山するコースが定番。九州を縦断する高原道路・やまなみハイウェイの途中に位置しています。

毎年6月の第1日曜日が山開きの「くじゅう連山」。山開き直後に訪れたこともあって、早朝から多くのお客さんで賑わっていました!登山口には約450台の駐車場があるため、車を駐められないという心配はありません。

photo by Yuhei Tonosho

長者原ビジターセンターの脇から入山し、くじゅう連山の峰々を望む高原を歩いたら、緑豊かな樹林帯へ入ります。色づきはじめの緑は、なぜこれほど美しいのでしょうか。

苔むした登山道も、ジブリ作品『もののけ姫』の世界を思わせる趣があります。流れる沢も潤いに満ち、山が育む自然の生命力を感じられる登山道です。

photo by Yuhei Tonosho

登山開始から1時間半前後で、雨ヶ池(あめがいけ)に到着。降雨量が多い初夏のシーズンにだけ、窪地に水が溜まって見られる神秘の池です。

この場所は、くじゅう連山に群生する、初夏の花・ミヤマキリシマが最初に見られるポイントでもあります。一面ピンクに染め上がり、新緑との鮮烈なコントラストに心を奪われました。

坊ガツルからミヤマキリシマ彩る「平治岳」へ

photo by Yuhei Tonosho

雨ヶ池を越え、ふたたび深い樹林帯を40分ほど歩くと、ダイナミックな「くじゅう連山」の山並みが展開。「山の中にこんな場所があったんなんて……!」と驚きます。ここは、くじゅう連山の登山基地となっている坊ガツルです。

湿原に吹く風は爽やかで、みるみるうちに雲が流れていく景色も雄大のひとこと。初夏の山ならではの情緒をたっぷりと味わいました。

photo by Yuhei Tonosho

くじゅう連山のなかで、ミヤマキリシマが見られる山としてもっとも有名なのが「平治岳(ひいじだけ、標高1,634m)」。坊ガツルから大戸越(うどんこし)という峠を経由して、約1時間40分ほどで登頂できます。

大戸越まではやや単調な道のりですが、それを過ぎると「くじゅう連山」の山並みを背景として、鮮やかに咲き誇るミヤマキリシマの花畑が展開。一面がピンク色に染まる山上の光景に言葉も出ません。

photo by Yuhei Tonosho

平治岳のミヤマキリシマは、日本中の山を探しても別格な規模を誇る大群落です。山頂一帯全てがピンク色に覆われ、緑と織りなすパッチワークの風景を見せてくれます。

四季との一期一会こそ登山の醍醐味ですね!最高のコンディションで登頂できたことを山の神様に感謝しつつ、次なる山頂を目指します。

意表をつく絶景!「北大船山」のミヤマキリシマ

photo by Yuhei Tonosho

大戸越まで下りたら、向かい側にそびえ立つ「大船山(たいせんざん、標高1,786m)」を目指していきます。ふたたび樹林帯を進みますが、所々景色が開け、適度な開放感を楽しみました。

道中ふと目をやると、遠くそびえ立つ「由布岳(ゆふだけ、標高1,583m)」の姿を一望。トトロの耳のような双耳峰(そうじほう、2つの山頂がある山のこと)が見事です。

photo by Yuhei Tonosho

大船山を目指すときに通過する「北大船山(きたたいせんざん、標高1,706m)」。ここに咲き乱れるミヤマキリシマの群落が意表をつく絶景でした。窪地にできた青い瞳のような池や、攻め威力溢れる緑の山肌と共演し、唯一無二の山岳風景を見せてくれます。

見下ろせば、山裾に吸い込まれるような高度感のあるパノラマ。まさに九州の屋根を歩いているという臨場感もたっぷりです。ミヤマキリシマの色づきも、このポイントが一番綺麗でした。

photo by Yuhei Tonosho

北大船山を遠くから眺めてみるとこの通り。まさに緑色のキャンバスに、ピンク色の具を散りばめていったような山肌が見事です。どこか深呼吸したくなる牧歌的な雰囲気も醸し出しています。

ここでしか見られないドラマチックなミヤマキリシマ群落が広がる稜線を前に、たくさんの登山愛好家の方々が感動を共有していました。

阿蘇まで一望!緑の稜線と大パノラマが素晴らしい「大船山」

photo by Yuhei Tonosho

ミヤマキリシマの群落から新緑の稜線へ、景色が劇的に変化していきます。季節は6月と暑さも出てくるシーズンでありながら、標高は約1,700m前後なので、快晴でも気温は涼やか。緑に抱かれ、心洗われる登山道を進みます。

木々の隙間から、周囲の景色を見渡し、最後まで飽きることがありません。山頂部の大岩が見えてきたら、「大船山(たいせんざん、標高1,786m)」に登頂です。

photo by Yuhei Tonosho

久住山や中岳、星生山(ほっしょうさん)など、くじゅう連山の山並みはもちろんのこと、遙か阿蘇五岳(あそごがく)やその外輪山まで見渡すことができます。

阿蘇とくじゅう連山はともに、九州内陸の自然の豊かさを象徴してくれる山域。この壮大で美しい自然をひと続きで感じられることこそ、くじゅう連山に登る醍醐味だと思っています。

photo by Yuhei Tonosho

くじゅう連山単体でも、写真に収まりきらないスケール。次に目指すのは、正面にあるピンクに彩られたテーブル状の山。ミヤマキリシマの風景を楽しめる4つ目のポイント「立中山(たっちゅうざん、標高1,464m)」です。

大船山〜北大船山の間まで戻ってくると、立中山方面へ登山道が分かれます。道迷いしやすいルートなので、YAMAPで現在地を確認しながら進むのがおすすめです。

ミヤマキリシマが咲き乱れる。穴場な「立中山」へ

photo by Yuhei Tonosho

基本的には下りですが、小さなアップダウンがあり、「これを行くのか!?」という獣道を進む区間も。初心者向けではない、こうしたマイナールートを選択するのも山旅の楽しみのひとつです。

よく整備された登山道とは違った、野趣ある道が冒険心を満たしてくれます。およそ1時間20分ほど歩くと、突如展望が開けるポイントへ到着。

photo by Yuhei Tonosho

広がっていたのは、鮮やかなミヤマキリシマとくじゅう連山が共演する絶景。平治岳や大船山からの眺めと比べると、ダイナミックな山が眼前に迫り、まるで一枚の風景画のような面持ちです。

くじゅう連山のなかではメジャーな山ではないのですが、じつは先ほどご紹介した「坊ガツル」から最短ルートで約1時間で行き来できます。アプローチのしやすさも相まって、多くの登山愛好家の方々で賑わっていました。

photo by Yuhei Tonosho

特筆すべきポイントは、ミヤマキリシマのお花畑を縫うように歩く登山道。胸の高さに迫るミヤマキリシマの中を進み、ピンクと緑に包まれる時間は非日常です。

最後の最後まで、くじゅう連山のミヤマキリシマの風景を堪能!平治岳→北大船山→大船山→立中山と4座にわたって、念願の山岳風景を胸に焼き付けながら、約9時間にもおよぶ感動の山旅を終えました。

登山前後に立ち寄り。イチオシは「筋湯温泉」

photo by 大分県観光情報公式サイト

最後にプラスαの情報をご紹介したいと思います。今回筆者が登った「くじゅう連山」は、じつはおんせん県おおいたを象徴する山域。山麓には12の名湯からなる九重"夢"温泉郷が形成されており、登山の前後で温泉を満喫することができますよ。

筆者のイチオシは、筋湯温泉にある公衆浴場「うたせ大浴場」。鮮度抜群の源泉掛け流しのお湯を肩から浴び、心身ともにリセットする唯一無二の入浴体験を楽しめます。

photo by Yuhei Tonosho

コストパフォーマンスが高く、素晴らしい温泉宿があるのも筋湯温泉の魅力です。「旅館ゆのもと荘」は、貸切無料の4つの温泉と豊後牛を味わえる夕食がついて、1泊2食付き約10,000円/人から。

予約困難なほど人気のお宿ですが、登山旅行の拠点として利用するのにもってこいですよ。

初夏のピンクと緑を愛でる九州山上の旅

photo by Yuhei Tonosho

祝日もなく、梅雨の時期も重なることから、旅行のシーズンとしては敬遠されがちな6月。

しかし梅雨に入る前、滑り込みで九州を訪れれば、ピンクと緑が織りなす素晴らしい山の世界に出会うことができます。

ぜひミヤマキリシマが満開を迎える6月上旬、初夏の「くじゅう連山」を訪れてみてはいかがでしょうか。

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