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芝居を観ながら居酒屋でごはんしません?艶∞ポリスからのお誘い

  • 2024.5.13
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すぐそこにある演劇へ

艶ナイトポリス
艶∞ナイトポリス第一回公演『生意気なからあげ』より

ある夏の夜、目黒川沿いのカフェの中から聞こえてきた悲鳴。店のドアから人が飛び出してきた。あ、また入っていった…。通りかかった人は、何事か!?と不可思議に思ったことだろう。

俳優にして演出家、そして脚本家として活躍する岸本鮎佳さん。彼女の演劇ユニットである「艶∞ポリス」は、演目ごとに演者を集めて公演を重ねてきた。大きな箱(劇場)から小さめの箱まで、幾つもの舞台で繰り広げられてきたその芝居は、大人に向けて放たれるウィットに富んだコメディ。毎回必ず観に行くという熱狂的なファンも多い。

演劇好きの人は、面白い芝居を自ら探してチケットを買ってくれる。でも演劇に対して、興味がわかない、難しそう、チケットが高い…などと、食わず嫌いな人や敬遠している人も相応にいるのが現状だ。そんな人々に向けて、岸本さんは演劇を「家で映画を一本まったり観るくらい、気軽な新しい体験」にできたらと考える。

そうしてスタートしたのが、艶∞ポリスの番外企画「艶∞ナイトポリス」だ。劇場を飛び出し、演劇を観に行かない人たちに近い場所で、できるだけチケット代も抑え、観るだけでなく“飲む・食べる”のお楽しみも加えた。

カフェ、ヘアサロン…どこだって、舞台になる

艶ポリス
艶∞ナイトポリス第一回公演『生意気なからあげ』」より

艶∞ナイトポリス第一回目の公演『生意気なからあげ』(2023年7月)が行われたのは、オープンキッチンカウンターのあるカフェレストラン。このカウンターと手前のテーブル席を舞台に繰り広げられる、レストランの店長とその恋人、店のスタッフたちの会話劇。

私たち観客は、まるでこのカフェにふらりと入ったら、お店の人たちが何やらあたふたと騒がしくなり、すわ、何か事件に発展か!?…という、すぐそこで起こっている出来事をこっそりと盗み見ているような感覚で一部始終を楽しんでしまう。ふとすると、自分もその芝居の渦中にいるような、思わずアドリブで声をかけてしまいそうになるほど、しっかりのめり込んでいる。

目の前には、芝居が始まる前にカフェ内で購入した唐揚げとドリンク。劇中にも唐揚げが登場し、観ながら食べる…まるで映画を観ながらポップコーンみたいな、劇場で演劇を観るときには叶わぬカジュアル感だ。

芝居の内容と、すぐそこから漂ってくる唐揚げの香りの相乗効果か、公演中は唐揚げが大量に売れたそう。観客はもちろん、場所を提供したカフェにもハッピーなプロジェクトになっていることが素晴らしい。

第二回目の公演『角刈りのカリスマ』(2023年11月)は、なんと学芸大学にあるヘアサロンが舞台に。このときはケータリングが用意され、前回と同じく、ドリンクとフードを購入しての“ながら鑑賞”ができるように。

物語は、このサロンの構造と設備を巧みに活かし、サロンの店長とスタッフたち、そして馴染みの客たちの間で巻き起こるドラマ人間模様。岸本さんのつくり出すキャラクターやセリフは、いつもリアリティたっぷりで、いるいる! あるある!の連続。笑いだけでなく、胸がキュッとなったり、ハラハラしたり、ホロリだって仕込まれているのだ。

艶ポリス
艶∞ナイトポリス第二回公演「角刈りのカリスマ』より

芝居慣れしていない観客の集中力が途切れないことも加味してか、約60分ほどの上演。客席との距離の近さもあって、観客はぐいぐいと引き込まれていく。そして、60分があっという間に経っていて、自分が芝居の世界に没入していたことに気付くのだ。

この日も存分に楽しませてもらった観客から惜しみない拍手が。参加している役者さんたちからも芝居を“楽しんでいる”感が伝わってきて、一緒に時間を過ごした連帯感まで感じてしまう。演劇に対する新しい発見があり、観劇することへのハードルが低くなり、生で芝居を観る醍醐味を味わった幸運な観客たちは、また艶∞ナイトポリスに、そして艶∞ポリスに戻ってくることになると思う。

いよいよ第三回!今度の舞台は大衆居酒屋

そしていよいよ、第三回目の企画が発表になり、公演日が近づいてきた。今回の舞台は、学芸大学駅から徒歩5分という大衆居酒屋なのだそう。『見上げたらメンチカツ』なるタイトルで、必然的にメンツカツを食べながら観ることを妄想する。食堂ミアゲテゴラン…ってどんな居酒屋なのだろうか。居酒屋という店を活かした、どんな笑いが用意されているのか。

もう艶∞ポリスは劇場でやらなくなってしまったのか?と心配するファンの声に岸本さんはこうコメントしている。

「チケット代が三千円代で、お酒飲みながら、ご飯を⾷べながら、60分の笑えるお芝居だったら、行く? 今、演劇の敷居を下げるために、求められてるのはそんな演劇だと思っています。劇場で観られる演劇だけが、すべてではない。だから私は劇場と⼀般のお客様を結ぶ架け橋になるような、作品作りをしたい。それが満⾜に達成されたら、私はちゃんと劇場に戻って、お芝居を作ります」

居酒屋を舞台に芝居をする、そこにある想い。作り手の心意気を受け取って、演劇という贅沢で奥深きエンターテインメントに触れる入り口から、一歩足を踏み入れてみよう。

5月17日(金)から30日(木)の期間内、全13ステージ。作・演出はもちろん岸本さん。そしてまた魅力的な役者たちが集結する。上質な笑いを、気軽に、気楽に体験できるチャンス、ぜひ足を運んでみてほしい。

『見上げたらメンツカツ』

作・演出/岸本鮎佳

出演/今林久弥、アサヌマ理紗、尾形存恆、岸本鮎佳、篠原あさみ

公演日程/2024年5月17日~30日 ※詳細はHPにて

会場/呑処 食堂ミアゲテゴラン(東京都目黒区鷹番3-3-18 川島共同ビル3階)

料金/全席自由・日時指定・税込 【一般】¥3,700(別途1ドリンク制)、【VIP】 ¥3,0000(飲み放題+軽食付き)

※VIP席は上記の価格で最大3名着席可能。飲み放題の時間は開場から公演終了後1時間まで。

※上演中はオーダー不可。

https://tsuyapolice.net/next.html

TEXT=GINGER編集部

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