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高山一実さん、乃木坂46卒業後、30歳を迎えて変わった心境「自分のためではなく、誰かのために生きたい」

  • 2024.5.10

累計30万部を突破したデビュー小説『トラペジウム』が、5月10日(金)よりアニメーション映画化される、乃木坂46の1期生・高山一実さん。乃木坂46時代はアイドルとしての夢を追いかけてきた高山さんですが、2021年にグループを卒業してからどのように心境が変わったのでしょうか。頑張ることへの思い、年齢を重ねた今の心境を伺いました。

子育て中の同級生に、「忙しい」と嘘をついた

――歌やダンス、パーソナルプロデュースなど、アイドルはさまざまな面で努力が必要な仕事です。夢を持てば、自分にとって厳しい現実を直視しなければいけない瞬間も。「そこまでして頑張る必要はない」と考える人もいるかもしれませんが、高山さんはどのように思いますか。

高山一実さん(以下、高山): みんなが頑張らなければいけないとは思わないけれど、心のどこかで「本当はもっと頑張りたい」と思っている人は、実は多いのではないでしょうか。「このままでいいのかな」とか「私も頑張らなきゃ」といった言葉をよく聞きますが、それは裏返すと「もっと頑張りたいのに今の自分はそうできていない」という不満の証。自分に頑張りたいという願いがあるのなら、グチや文句を適度に言いながらでも頑張ってみればいいと思います。

私にとって頑張りたい大きな夢といえば、やっぱりアイドルでした。アイドルが大好きだからこそ、全力で取り組みたかった。もちろん「とりあえずグループに所属していればいいや」と考えることもできたけれど、頑張っていない自分を見て嫌いになりたくなかったんです。朝から晩までアイドルのことを考える生活。言ってみれば「頑張ること」を頑張っていました。

朝日新聞telling,(テリング)

今はそこまで情熱をかけられるものがないけれど、それでも「頑張らないと」とは日々思います。グループを卒業してから自由な時間ができて、いろいろな職業に就いている友人と会う時間も増えたんですが、会うたびに、何かに向かって努力している人たちの姿って本当に魅力的だなと思うんです。そういう素敵な人たちの友達としてふさわしくありたいから、私も頑張っていたいです。

――頑張っていないと取り残されるような焦りもあるのですか。

高山: それもあります。東京にいるとバリバリ働いている人にたくさん会うし、地元に戻ると結婚して子どもを育てている同級生も多いんです。子どものために一生懸命時間を注いでいる姿を見ると「すごいなあ……」と尊敬することばかりで。つい、なんだか自分が全然頑張っていないように思えてきて、仕事もないのに忙しいふりをして、自分だけ先に帰ったこともありました。そんな嘘をつくくらいなら、やっぱり何かに打ち込んでいたいと思うんですよね。

「結婚したい年齢」が29歳だったワケ

――キャリアや家庭といったさまざまな生き方の選択肢を前にして悩む女性は多く、特に30歳を前にして焦ることもあると言われます。高山さんは今年30歳を迎えましたが、年齢の節目は意識していましたか?

高山: 29歳から30歳になるタイミングは、強く意識していたように思います。会話の中で何気なく「もうすぐ30なのに、これができないなんて恥ずかしいよね」とか「イタいよね」なんて言い方をしてしまうこともありました。

朝日新聞telling,(テリング)

子どもの頃に流行ったプロフィール帳に、「結婚したい年齢」を書く欄があったと思うんですが、そこにも「29歳」と書いていたんじゃないかな。なぜそう書いたのかというと、子どもの頃から漠然と「29歳までは自分のために生きて、30歳になったら誰かのためにも生き始める」というイメージがあったからです。

ただ今思えば、そのイメージは間違っていなかったかなと思います。

朝日新聞telling,(テリング)

――どういうことでしょう?

高山: 30歳を節目に、自分の考え方が少しずつ変化してきたような感覚があるんです。自分の夢や願いのために頑張るだけではなく、誰かのために生きたいと思うようになったというか。

ちょっと卑近な例なんですけど、近所に行列のできるパン屋さんがあるんですよ。アイドル時代には、その行列に並ぶことはできるだけ避けていたんです。「もし誰かに気づかれて、握手を求められたらどうしよう」と心配して。

高山だってバレるのはいいんですよ。むしろ嬉しいくらいなんだけど(笑)。でも、アイドルの私には握手会に来てくださる方がいて、その方たちはお金を払って会いに来てくれている。今、ここで握手してしまったら、その人たちは嫌な気持ちになるだろう。かといって握手を求められて断るのも……。「アイドルとしてどうあるべきか」ということばかり考えていたんですね。

そういうとき優しい友達が「一実ちゃん、私が行列に並ぶから車で待っていなよ」なんて言ってくれるので、つい甘えてしまっていました。

朝日新聞telling,(テリング)

でもアイドルを卒業して2年。今はもう、いくら友達がいいよと言ってくれるからと言って、友達を自分の代わりに並ばせてしまってはいけないなと思います。自分が守りたいアイドル像や、自分を応援してくれる人たちだけを守るのではなく、もっと本当の意味で他者を大事にしていきたいと思うようになったんです。

――自分の夢や願い、それを支えてくれる人たちばかりを見るのではなく、もっと違うところに視野が広がったんですね。

高山: はい。具体的に誰のためにというのは、実は今いろいろと考えている真っ最中です。ただ漠然と思うのは、自分より若い世代のために何かをしたいということです。暗いニュースも多く、生きづらい世の中だからこそ、これからを生きる子どもたちや10代の人たちが希望を感じながら歩めるように、私にできることをしたい。30歳を節目にその思いは強まっています。ある意味では、子どもの頃の想像通りに生きているなと思います。同じ「頑張る」でも、自分のためだけに頑張るのではなく、これからは誰かのために頑張っていきたいです。

ヘアメイク:入江美雪希 スタイリスト:Toriyama悦代(One8tokyo)

■塚田智恵美のプロフィール
ライター・編集者。1988年、神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後ベネッセコーポレーションに入社し、編集者として勤務。2016年フリーランスに。雑誌やWEB、書籍で取材・執筆を手がける他に、子ども向けの教育コンテンツ企画・編集も行う。文京区在住。お酒と料理が好き。

■北原千恵美のプロフィール
長野県生まれ。東京都在住。ポートレート、ライフスタイルを中心にフリーランスで活動中。 ライフワークで森や自然の中へ赴き作品を制作している。

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