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群れで形を変えるカタツムリロボット!新たな探索手段の提案

  • 2024.5.9
群がって崖を登ったり降りたりできるカタツムリロボット
群がって崖を登ったり降りたりできるカタツムリロボット / Credit:Robotics & AI Lab – CUHK Shenzhen(YouTube)_[Nature Communications] Snail-inspired robotic swarms(2024)

雨の日には、様々な場所にカタツムリが大量に出てくるものです。

カタツムリが壁や斜面を難なく移動しているのを見かけたこともあるでしょう。

また彼らが、交尾や水分保持などの目的で、仲間同士群がっている様子も観察できます。

香港中文大学(CUHK)理工学部に所属するティン・ルン・ラン氏ら研究チームは、そんなカタツムリたちにインスピレーションを受けたロボットを開発しました。

強磁性の殻と戦車のような履帯で構成されたそのカタツムリロボットは、単体でも行動できますが、群れで協力することで、様々な地形を移動したり、腕のように物をつかんだりできます。

研究の詳細は、2024年4月29日付の科学誌『Nature Communications』に掲載されました。

目次

  • 有能なカタツムリにインスピレーションを受けた科学者たち
  • カタツムリロボットの群れが協力して「梯子」になったり、「腕」になったりする

有能なカタツムリにインスピレーションを受けた科学者たち

その見た目や動きから、苦手な人も少なくない「カタツムリ」ですが、科学者たちは彼らから多くを学んでいます。

例えば、アメリカのペンシルベニア大学は、2021年にカタツムリの粘液から着想を得た「超強力接着剤」を開発しています。

また、カタツムリが足から分泌する粘液は、様々な地形を歩く際に役立っています。

もともとカタツムリでは、筋肉でできたお腹全体が足の役割を担っており、彼らはこの「腹足」を波打たせるようにして動かし、どんな地形でも歩くことができます。

壁を登ることもできるカタツムリ。よく群がっている。
壁を登ることもできるカタツムリ。よく群がっている。 / Credit:Robotics & AI Lab – CUHK Shenzhen(YouTube)_[Nature Communications] Snail-inspired robotic swarms(2024)

彼らは、濡れていて滑るような場所でも、ごつごつした岩の上でもバランスを崩しません。

壁を這い上がったり、天井を逆さまになったまま横断したりすることさえ可能なのです。

さらにカタツムリは、腹足を吸盤のように用いて吸着力を高め、その場で静止することもできます。

今回、香港中文大学に所属するティン・ルン・ラン氏ら研究チームは、そんなカタツムリからインスピレーションを得て、新しいタイプのロボットを開発しました。

カタツムリロボットの群れが協力して「梯子」になったり、「腕」になったりする

カタツムリにインスピレーションを受けたロボット
カタツムリにインスピレーションを受けたロボット / Credit:Tin Lun Lam(CUHK)et al., Nature Communications(2024)

新しく開発されたカタツムリロボットは、上部に強磁性の殻を持っており、その中にバッテリーやマイクロプロセッサ、その他の電子機器が収まっています。

そして機体の底面には、カタツムリの腹足の代わりに、ゴム製の履帯(キャタピラーという登録商標が有名)が2枚備わっています。

カタツムリロボットはこの戦車のような履帯により、平坦な地形だけでなく凸凹の地形でも難なく移動できます。

またそれぞれの履帯の内部には磁石が埋め込まれています。

吸盤を作動させて、他のロボットの上に固定できる
吸盤を作動させて、他のロボットの上に固定できる / Credit:Tin Lun Lam(CUHK)et al., Nature Communications(2024)

さらに2本の履帯の間には電力によって作動する吸盤が装備されています。

これら2つの要素により、カタツムリロボットは群れとして協力できるようになっています。

あるカタツムリロボットは、磁石入りの履帯により、別のカタツムリロボットの殻の上を簡単に登ることができます。

そして目的に位置に到達すると、吸盤が下がって作動し、より強い力で殻に吸着。2台のロボットがしっかりと固定されるのです。

この機能により、カタツムリロボットの数を増やして任意の形状を作り出すことができます。

協力して「梯子」を作ったり、「橋」を作ったりする
協力して「梯子」を作ったり、「橋」を作ったりする / Credit:Robotics & AI Lab – CUHK Shenzhen(YouTube)_[Nature Communications] Snail-inspired robotic swarms(2024)

しかも吸盤を作動させたまま胴体だけを旋回させることが可能なので、関節を持つ「1本の腕」のように自由自在に動かすこともできます。

ロボットたちが集まって腕のようになり、1つの荷物をつかんで降ろすことも可能なのです。

協力して崖から降りたり、「腕」になって、荷物を降ろすことができる
協力して崖から降りたり、「腕」になって、荷物を降ろすことができる / Credit:Robotics & AI Lab – CUHK Shenzhen(YouTube)_[Nature Communications] Snail-inspired robotic swarms(2024)

また複数のロボットを使って、なんとか1体を崖の上に届けたとしても、「その1体がどれだけのことを行えるのか」気になるところですね。

しかも現段階では、それぞれのロボットは人間が遠隔操作しなければならず、1つ1つの作業を考慮すると、あまり実用的ではないかもしれません。

被災地などの危険な場所で協力しながら活動するカタツムリロボット。イメージ
被災地などの危険な場所で協力しながら活動するカタツムリロボット。イメージ / Credit:Tin Lun Lam(CUHK)et al., Nature Communications(2024)

しかし将来的には、AIを導入してカタツムリロボットの群れが自律的に移動したり、互いに協力したりすることが想定されています。

研究チームとしては、いずれカタツムリロボットの群れが、災害現場で生存者を捜索したり、危険な環境を偵察したりするのに役立つと考えています。

確かに画像のように、大量のカタツムリロボットが自律的に行動するなら、様々な働きや効果を期待できるでしょう。

ただ、この光景は、「雨の日に出てくる大量のカタツムリ」を連想させるものであり、人によってはゾッとする未来なのかもしれませんね。

参考文献

Video: Iron-shelled robo-snails swarm together for off-road tasks
https://newatlas.com/robotics/swarm-robotic-snails/

元論文

Snail-inspired robotic swarms: a hybrid connector drives collective adaptation in unstructured outdoor environments
https://doi.org/10.1038/s41467-024-47788-2

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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