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「アジカン」のドラマー、伊知地潔さんが語る、料理とキャンプと音楽と

  • 2024.5.9

ASIAN KUNG-FU GENERATION 伊知地 潔さん

プロフィール/1977年、神奈川県生まれ。ASIAN KUNG-FU GENERATION、PHONO TONES、Name the Night のメンバー(ドラム)。ミュージシャンきっての料理好きとしても知られている。得意なジャンルは定番料理からアレンジをきかせたオリジナル料理まで幅広く、中でも一番の得意料理は「カレー」。フジファブリック・金澤ダイスケさんとの人気料理連載を書籍化したレシピ本「SESSION IN THE KITCHEN」(ぴあMOOK)が好評発売中!YouTube公式チャンネル「KIYOSHI'S KITCHEN」も好評。

出身地の土地柄、幼少期から海と山に親しむ

――アウトドアで遊ぶようになったのはいつ頃からでしたか?

伊地知 潔さん(以下「伊地知」):家が湘南で、海から近いんですよ。 だから遊ぶとしたら、まずは海や砂浜。鎌倉エリアは山もあるので、 ちょっと散策してから海に降りてくるみたいなこともできるんです。自然が豊かな場所なので、小さい頃からそと遊びに触れていましたね。

――自然が身近にあったわけですね。キャンプもされていたんですか?

伊地知:小さい頃はしてなかったですね。でも父がすごく登山好きで。キャンプギア……というより、山岳ギアですかね。そういうものが家にあって「これってどう使うのかな」みたいな。興味津々でいじっていたりはしていました。でも、実際に登山に行ったのは小学校の高学年くらいだったのかな。

――初登山は楽しい思い出でしたか?

伊地知:初めて丹沢山に登ったときは、「意外にしんどいな」と(笑)。やっぱり自分は、山より海だなと思った気がします。高校3年生ぐらいまでサーフィンをやっていて、その後はヨットに傾倒していきました。

アウトドアならではの制限や条件が、料理をおもしろくする

――アウトドアで料理する楽しさはどんなところにありますか?

伊地知:外で料理するって、いろいろな制限があるじゃないですか。食材が痛みやすいので、衛生管理も大切ですし。あと、火がいつも通り使えないという状況。それをどう楽しむか、なんですよね。

最初の頃はバタバタしてしまって、 まともなものがつくれないし、片付けは大変だし。これもまたしんどいなと思っていたんですけど、その代わり「料理にじっくり時間をかけられるな」とも思ったんです。

そういえば、時間をかけてつくるような料理って、普段あまりしていないな、と。じっくり弱火で火を通して、大きな肉を焼くとか。ゆっくりとした時間が流れる、アウトドアならではの料理の楽しみ方があると思いました。

――制限があったり、臨機応変に対応するのも楽しみの一つ、というような…。

伊地知:僕にとって、キャンプ飯はまさにそうだと思います。たとえば現地で採れた野菜をその場で調理するだとか。主役はそこにあるものであって、 用意していくものではないんです。海だったら、現地で釣った魚だったり。それに合わせて何をつくるか決めていくのが醍醐味だと思っていて。「どこでつくるのか」ということをイメージしながら料理を考えるって楽しいんですよ。

船舶免許を持っているので、海釣りを絡めたキャンプをすることもあるのですが、本当に何が釣れるかわからないんです。で、釣れたときに、この魚ならアクアパッツァみたいな蒸し料理にしようかなとか、 揚げてみようかなとか。

――では、料理ギアはどんなことにも対応できるように、多めに持っていくわけですね。

伊地知:いえ、僕は少なめなんですよ。ギアにはそれほどこだわっていなくて。その辺に落ちている木だとか石だとか、そういうものでなんとかするほうが好きですね。

僕は「これがないとできない」というのは良くないと思っていて。その場やその条件でだからこそ味わえることってあるじゃないですか。そこで工夫することが楽しいんです。

――バンド活動のライブなども、同じ感覚ですか?

伊地知:音楽に関しては、いつも使っている楽器じゃないとダメなんですよ。何かが5mm、1cm違うだけでも気になります。目をつぶっていても、ほんの少しの「ズレ」がわかってしまうんです。なので、毎回同じ設定でないと。

――料理とは逆をいく感じですね。

伊地知:ただ、頭の使うところは似ていて。料理は食材があり、調味料があり、それを使って、さまざまにつくり変えていきます。それは 音楽だと、たとえばボーカルが弾き語りで持ってきた曲に対して味付けをしていく感覚。リズムを付けたりしながら、曲をつくっていくわけです。その過程がちょっと料理と似ているんですよ。脳の同じ部分を使っているような気持ちになりますね。

相手に寄り添った料理をつくりたい

――料理づくりで大切にしていることや楽しみは何でしょうか?

伊地知:やっぱり食べてくれる人がおいしいって言ってくれたときが1番うれしいですよね。なので、自分好みで料理をつくり、ただ自分のお腹を満たすためだけに食べるというのは、あまり楽しくないんですよ。

つくる相手と会話をしながら、今日はこういう感じなんだとか、この人はお酒がすごく好きだから、味付けはちょっと濃いめにしたほうがいいかなとか、ラーメンが好きな人もやっぱり濃いめにしておこうかなとか(笑)。

――外でワイワイやるキャンプなんて、まさにコミュニケーションが取りやすいですよね。

伊地知:そうですね。「今日は若い人が多いから、ちょっと油を多めにしておこう」なんて(笑)。そんなふうに探りながらやっていくのが醍醐味だと思っています。相手に寄り添った柔軟性のある味付けやつくり方は、すごくおもしろく感じますし、重要どころでもあると思うんですよ。

実際に、自分がそうやって料理を出されたら、「わかってるな」って思うんです。僕のことを理解して出してくれたことに気づくと、感動してしまいますから。

その瞬間を楽しむ、野外フェスの醍醐味

―― ご自身もたくさん出演されている「野外フェス」は好きですか?

伊地知:もちろん好きですよ。景色が変わっていくのは外でライブすることの醍醐味ですよね。 土砂降りや雷雨の中でのライブありましたけど、雲が流れていって、急に晴れ間が差したりとか、そういう瞬間に心を揺さぶられるものがあります。

キャンプもそうですよね。変わりゆく自然の何か楽しむという。キャンパーはそれを体験しに行っているのではないですかね。

――印象に残ってる野外フェスを教えてください。

伊地知:やっぱりフジロックが1番です。バンドを始めたときからフジロックに出ることを目標にやってきたので。 まず「ROOKIE A GO-GO」という場外で開催されるオーディションみたいなステージに出て、そこで合格するとメイン会場でライブができるようになるんです。

「ASIAN KUNG-FU GENERATION」として最初に出た「ROOKIE A GO-GO」のステージが2003年。その印象がいまだに強烈に残っています。

最後の出番だったんですが、かなり時間が押していて。もう最終日の明け方。お客さんも疲れて帰ってしまっているのではと思っていたら、意外と多くの人が残ってくれていて。すごく盛り上がったんですよ。

伊地知:フジロックのお客さんも、今はちょっと年齢層が上がってきている感じがします。でも当時は20代のお客さんがメインだったんですよ。

だから盛り上がり方も今とは少し違うんです。初日の午前中でドロドロになってる人や靴がない人がたくさんいて、この人たち、この後どうなってしまうんだろうと(笑)。

とにかく「今」を楽しむみたいな、ああいう野外の過ごし方って、 年を取るごとになくなっていくんですよね。でも僕はあの感じが素敵だとも思うんです。今でもフジロックのステージ立つと、その頃の様子を思い出しますね。

今年も「麦ノ秋音楽祭」に出演! 料理も音楽も、期待値高まる!

2024年5月11日(土)、12日(日)に開催される「麦ノ秋音楽祭」用に考案した唐揚げには、S&Bのカレー粉スティックをトッピング。ライブだけでなく、飲食ブースも楽しみです。

――お客さんとして行きたいフェスもありますか?

伊地知:海外のフェスは行ってみたいですね。コーチェラとかグラストンベリーとか。あれもキャンプフェスですよね。一度は行ってみたいです。

――キャンプフェスというと、今年もCOEDOビールが主催する「麦ノ秋音楽祭」に出演されますね。どんなところに魅力を感じていますか?

伊地知:まず、ビールが大好きなんです。だから、あんなにおいしいビールを飲みながら キャンプを楽しめるのは、最高だと思うんですよ。キャンプなのに生ビールが売っていますからね。いつも飲みすぎて大変なことになっちゃうんですけど(笑)。あと、すごく居心地がいいロケーション。会場がフラットなので、初心者でも楽しみやすいと思います。

伊地知さんがプロデュースする「KIYOSHI’S KITCHEN」のオリジナルカトラリーセット。本来廃棄されるはずの、コーヒーを抽出した後に残った豆かすを使用すること(リサイクルコーヒーグラウンド)で、廃棄物の削減や合成樹脂の使用量を抑えたアップサイクル製品。

――「麦ノ秋音楽祭」への意気込みを教えてください。

伊地知:僕は「Name the Night」というバンドでライブをしますので、そこはがんばりたいと思っています。ただ前回、料理教室をやりまして、それが1番盛り上がってたんですよね。ライブより料理教室の方が盛り上がるという(笑)。 なので、今年も「伊地知潔 料理教室」をやります。出演している他のアーティストもゲストで登場しますよ。

――飲食ブースもプロデュースされていますよね。

伊地知:KIYOSHI’S KITCHENというお店を出します。今回は唐揚げが登場しますよ。S&Bさんのカレー粉スティックをかけて食べるスタイルなんですが、ビールととても相性がいいんです。どのCOEDOビールが一番合うか、そのペアリングをみんなで考えているところです。

ただの流行で終わらないシーンづくりを

5月11日、12日に開催される「「麦ノ秋音楽祭」の会場、気持ちいい麦畑が広がるCOEDOビール醸造所を下見!?

――野外フェスやキャンプシーンの今後について、思いを聞かせてください。

伊知地:どちらも、一度盛り上がったあとに落ち着いて、また今盛り上がってきたという状況だと思うんです。だから、流行りものでは終わってほしくないという気持ちがあります。

キャンプギアなんかも昔に比べてずいぶんコンパクトで便利になりましたよね。欲しいと思うものもたくさんあるのですが、同時に昔からずっと使っているランタンとかもすごく大切にしたい気持ちがあって。「流行りで終わらない」というのは、そういう要素も重要じゃないかなと思います。

――文化としてちゃんと根付いてほしいということですね。

伊地知:そうですね。やっぱり長く大切に使えるモノ、長く楽しめるコトって、人の時間を豊かにすると思うんですよ。キャンプギアもそうじゃないですか。たとえばダッチオーブンなんて、長く使えば使うほど、料理がおいしく仕上がるようになるものですから。

撮影/薮内 努 衣装協力/グラミチ、ワイルドシングス

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