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歴代アカデミー作品でめぐる、豪華絢爛なセットデザイン。

  • 2016.2.23
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2月28日(現地時間)に開催される「第88回アカデミー賞」授賞式。インテリアに関心がある人なら、最も優れた空間を手掛けた美術監督に送る「美術賞」もチェックしたいところ。1939年の受賞作品から2014年の受賞作品まで、映画史に残る豪華絢爛なセットデザインをプレイバック! 歴代を振り返ってみると、今年の受賞作品も見えてくるかも?

『風と共に去りぬ』(1939年受賞)映画史上に変革を与えた大スケール。

言わずもがな、アカデミー賞の「美術賞」を語る上で外せない作品といえば『風と共に去りぬ』。南北戦争という「風」とともに、黒人奴隷制度を根底とした貴族文化が過ぎ去った時代をい描いた不朽の名作である。1939年の第12回アカデミー賞では、13部門に最多ノミネート。そして、作品賞、監督賞、主演女優賞など9部門を獲得という結果に。完璧な配役と、約3年の歳月をかけて製作されたという映画史上空前のスケールとこの受賞数は映画界に変革を与えた。

美術監督は、アメリカのライル・R・ウィーラー。なかでも、主人公スカーレット邸のクラシカルなフェデラル様式にご注目! 大邸宅の正面玄関の吹き抜けにある長い階段が、この映画のスケールを物語っているようだ。ヨーロッパ文化に触発されたかのように、優雅で洗練された装飾が施され、重厚でビクトリアンな雰囲気もたっぷり。

二度と同じものは作れないであろう隅々にまでちりばめられた美とこだわりは、半世紀以上たった今でも全く古さを感じさせない。この豪華なセットで現代まで語り継がれる映画を見ずにアカデミーを語らずにはいられないだろう。

『赤い靴』(1947年受賞)バレエを引き立たせる、幻想的な舞台美術。

バレエ映画の金字塔と言われる『赤い靴』。恋愛と踊りの狭間で葛藤するダンサーが主人公である。一度履いたら死ぬまで踊り続けなければならなアンデルセンの童話『赤い靴』を題材に新作バレエの主役に抜擢。バレエという芸術の才能を背負う宿命について描かれた、哀しくも美しい踊り子のストーリーだ。

中盤に約17分ほど主人公が『赤い靴』の演目を踊り続ける舞台シーンは、極めてセンセーショナル。無色彩の背景となるセットデザインはまるで、ダリが生み出したシュルレアリスムのよう。

それもそのはず、この映画の美術監督に起用されたのが、画家であるハイン・ヘックロッス。画面に映えるトゥシューズの赤色が鮮烈に心に刻まれる。バレエが肉体を使った最高の芸術であることをこの映画の舞台を通して物語っている。

『恋の手ほどき』(1958年受賞)隅々までキュート! 真似したい小技がたっぷりなインテリア。

第31回アカデミー賞で作品賞、監督賞、美術賞など10部門を総なめにした『恋の手ほどき』。パリ社交界にデビューすべく、おてんばな女の子が教育され、レディになっていく過程を陽気なメロディにのせながら描かれたミュージカルコメディだ。当時の人々のハートをつかんだのはストーリーだけでなく、2時間見入ってしまう豪華絢爛な世界観だ。

 アメリカの美術監督、ウィリアム・A・ホーニングが美術監督を務め、主人公ジジ邸宅は豪華ながらも、乙女心くすぐる要素がたっぷりな空間に。一面レッドの壁紙に覆われたリビングには重厚感あるゴールドの照明や花瓶を、ブルーの小花柄の壁紙で覆われたバスルームにはきらびやかな小瓶や花刺繍の布地などを配置し、小物一つとっても彼のこだわりを垣間見ることができる。区切られた空間で雰囲気ががらりと変わるのも見所だ。真似したくなるインテリアのエッセンスが隅々までたっぷりちりばめられた作品は、何度も観たくなる!

『ムーラン・ルージュ』(2001受賞)悲劇の舞台に魔法をかけたファンタジーな世界観。

1899年、夜のパリを彩る魅惑のナイトクラブ「ムーラン・ルージュ」。ニコール・キッドマン演じるトップ・ダンサーのサティーンと、イギリス人の作家を志望する青年の愛の物語を描いたミュージカル大作だ。監督はバズ・ラーマン。そして、空間を手掛けたのは、これまでバズ・ラーマン監督のすべて作品に衣装、美術監督として携わってきたキャサリン・マーティン。

オープニングから歌い手がきらきら輝く世界に連れて行き、まるで遊園地の中にいるかのような錯覚に。豪華で華麗なショーや衣装もこの映画を語る上で外せないけれど、要となるのはVIP客のみに許される「象の部屋」。真っ赤な壁紙にハート形などゴールドの装飾があしらわれている。一歩間違えば、悪趣味になりがちだが、そこは二人の腕の見せどころ。幻想的かつ猥雑さがあふれる画面の中で、ただの悲劇の舞台ではなく、ロマンティックな空間が広がっている。

『華麗なるギャツビー』(2013年受賞)きらびやかな輝きに酔いしれるエンターテインメント。

舞台は、好景気に浮かれる1920年代のNY。小説『グレート・ギャツビー』をもとに、レオナルド・ディカプリオ演じるギャツビーの名声と恋愛、そして転落を描いたストーリーが映画で復刻。

プラダやミュウミュウのきらびやかな衣装にも目を奪われるが、インテリアも見所たっぷり! なかでも、「遊園地みたい」とゲストの口から漏れたセリフが印象的だったギャツビーの大豪邸。毎週末、豪華絢爛なパーティが繰り広げられ、大舞踏室や玄関ホールではゲストが夢心地に踊っている。

観る者を当時の世界観に引きずりこむ空間を手がけたのは、前述の『ムーラン・ルージュ』でアカデミー賞衣装デザイン賞、美術賞の2冠を獲得したキャサリン・マーティン。ギャツビーの邸宅には、ジュエリーのみならず、インテリア小物までもがティファニーできらびやかに飾られている。磁器やスターリングシルバー製のカトラリーなどが輝きを放ち、スケールの大きいギャツビー邸が一層豪華絢爛に彩られている。ブランドで受け継がれるクラフツマンシップの伝統と卓越性によって、見事に小説の魅力を新たな価値とともに再現した。

『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014年受賞)まるで絵本。中毒性たっぷりなポップな色彩。

米国映画における「ポストマーティン・スコセッシ」と評されている気鋭の監督、ウェス・アンダーソン。『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(01)、『ダージリン急行』(07)でファッションやインテリアなど独自の世界観で話題を呼んだが、『グランド・ブダペスト・ホテル』では見事に美術賞を獲得! 伝説のコンシェルジュが、長年のお得意様である伯爵夫人を殺害した容疑者として疑われ、愛弟子のベルボーイと事件の謎に挑もうとするミステリーをコメディタッチに描いている。

この映画のセットデザインでウェス・アンダーソン監督とタッグを組んだのは、美術監督のアダム・ストックハウゼンだ。ウェス・アンダーソン手法の、テーマカラー以外の色を排除するという特徴を生かし、どこを切り取っても「絵本」のよう。

例えば、ミニチュア感満載のピンク色のホテルの外観にお菓子ボックス、真っ赤なエレベーターなど夢のような色彩が私たちの目を楽しませてくれる。この遊び心をくすぐる中毒性を秘めていて、何度も観たくなる仕上がりだ。

参照元:VOGUE JAPAN

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