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【女子旅 三重県】 地域で育まれた食文化に触れるグルメ旅

  • 2024.5.3

その土地で育まれた食を楽しみ、食文化に触れることを目的にしたガストロノミーツーリズムに積極的に取り組んでいる三重県。伝統的な製法で作られるかつお節や、古くから続く海女漁でとる魚介、生産者がわずかな希少な伝統野菜など、豊かな食材がたくさんあります。その食材が生まれた背景も一緒に味わうことができるスポットを紹介します。

かつお節の歴史を見て食べて体験する「鰹の燻し小屋」

三重県志摩市にある太平洋を遠州灘と熊野灘を分ける岬・大王埼の突端にかつおの天ぱくの「燻し小屋」があります。この波切という地域は、かつて伊勢神宮への献上物であるかつお節の一大生産地でした。今この地でかつお節の生産を続けるのはわずか3軒しかないそうです。

天ぱくは、江戸中期に完成した伝統的な「手火山製法」にこだわり、かつて朝廷や伊勢神宮への献上物だったかつお節の源流ともいえる「波切節」を継承している数少ない生産者です。この古式製法は、かつお節を釜の上にのせて、職人が手で温度を確かめながら、火加減を調整し、ゆっくりと燻していく方法で、手間も時間も大変かかります。この燻し小屋では、火入れをしているタイミングではもくもくと煙が出ている様子や、火入れ後にかつお節を休ませている状態を見ることができます。

ツアーではまず、かつお節の歴史についてパネルなどをまじえて解説があります。1500年前から伊勢神宮では、朝夕に天照大神に食事を奉納しており、そのなかに「御食(みけ)つ国」とうたわれた三重県志摩のかつお節があったそう。神々に捧げ、共に食する和食という、日本の食文化のルーツを知ることができます。

話を聞いた後には、鰹と昆布の一番出汁が提供されます。芳醇な香りと凝縮された旨みが口いっぱいに広がりました。そして、削りたてのかつお節を、土鍋で炊いたごはんにかけ醤油をたらした「おかかごはん」の試食も。ほかほかの炊き立てご飯の上で踊るかつお節、美味しすぎて何杯も食べたくなります。

お土産に、こだわりのかつお節を購入することもできます。料理のトッピングにぴったりな軽軽削りの鰹節「波頭(なみがしら)」46g ¥864。

かつおの天ぱく「鰹の燻小屋」

三重県志摩市大王町波切393
TEL : 0599-72-4633
燻し小屋見学は毎週金曜日の午前中
完全予約制で、5名以上で催行
(予約受付は見学日の4日前まで)

海女さんの話を聞きながら新鮮な魚介を味わう

三重県志摩町の越賀にある海女小屋体験施設さとうみ庵。海女さんが漁で疲れた体を休めたり、火を焚いて体を温める海女小屋を模した木造の小屋で、現役や引退した海女さんたちから海女漁や海の話を聞きながら食事ができる施設です。

海女さんは午前と午後の一日2回漁に出るので、その間に海女小屋で暖を取りながら、おやつを食べたり、食事をしたり雑談をしたりして過ごすそう。この体験小屋でも中央にある囲炉裏を囲んで海女さんの話を聞きました。

伊勢エビなど海の幸をふんだんに使ったランチやディナーのプランもありますが、今回は気軽に海女小屋体験ができる「おやつメニュー」を選びました(3名以上~お1人様 2,200円)。海女さんが最初に炭火で焼いてくれたのは、ヒオウギ貝。虹色貝とも呼ばれる殻の色が特徴的な二枚貝で、水揚げすると一日しか持たないので、産地の近くでしか流通しない希少なものだそう。ぷりぷりと弾力がありとても美味しかったです。

炭火で焼いた香ばしいお餅を入れたぜんざい。海女さんも食べるおやつメニューだそう。甘くて体も温まります。

固い生の"あられ"を専用の炒り器を使い炭火で炒る「志摩あられ」。志摩の漁師や海女さんたちの定番のおやつとして親しまれています。

話をしてくれたのは海女歴50年の大ベテランの林さん。15ⅿの深さまで潜ることができるそうです。この越賀地区の海女組合には、25年位前には100名在籍していた海女さんも今は9名まで減ってしまい、平均年齢は70歳と高齢化しているそうです。

海女小屋体験施設 さとうみ庵 三重県志摩市志摩町越賀2279   0599-85-1212 11:00~20:30(最終19:00スタート)

希少野菜「虎の尾」栽培もする絶景キャンプ場

おわせむかい農園がある、尾鷲市向井地区は、熊野灘(尾鷲湾)が一望できる豊かな森や山の斜面に数多くの段々畑がある独特の地形で、自然豊かな里山の風景がある場所です。尾鷲湾岸には、中部電力の火力発電所が60年稼働しておりこの地域の産業となっていたのですが、2018年に廃止となりました。このおわせむかい農園を経営する会社も元々は発電所の仕事をしていましたが、「鉄から土へ」をスローガンに、農業の道へと転換。耕作放棄されていた段々畑を借りて、ブルーベリーや甘夏、地区特産の伝統野菜「虎の尾」などを栽培しています。30年間使われていなかった畑なので、結果的に無農薬、無肥料の有機栽培ができているそう。

形が虎のしっぽに似ている青唐辛子「虎の尾」は、この尾鷲向井地区で数軒の農家さんのみが栽培している希少な伝統野菜です。古くから地元漁師が定置網の船に「虎の尾」を常備して、刺身の薬味としてワサビの代わりに食べていたそうです。

この日は特別に、虎の尾や甘夏など、農園で採れた食材を取り入れた郷土料理のランチを提供していただきました。鯖を入れた味ごはんのおにぎりに、熊野地方の名物である高菜で巻いためはり寿司、甘夏を入れたサラダに、虎の尾を刻んで入れた卵焼き。ピリッと辛い虎の尾がアクセントになり、とても美味しかったです。

尾鷲湾に養殖場があり特産品でもあるブリをたっぷり贅沢に刺身でいただきました。ワサビの代わりに虎の尾を薬味として一緒に食べるのがおすすめの食べ方です。古漬けともいわれる伊勢のたくあんもきざんでトッピングに。

おわせむかい農園は収穫体験などができる観光農園のほかに敷地内にキャンプ場「minore(ミノレ)」も展開しています。甘夏が実る段々畑にあり、海をのぞむ景色が最高のキャンプ場です。フリーのテントサイトがメインですが、断熱材を吹き付けており夏は涼しく冬は暖かいインスタントハウスにはベッドも装備、グランピングも楽しめます。

おわせむかい農園 三重県尾鷲市字向井4488-1  080-9552-1155(0597-23-1230)

photograph: Chiaki Tanabe & Liniere.jp text:Liniere.jp
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