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フェースの方向に球が飛ぶのは本当…?“新飛球法則”を研究者が解説!

  • 2024.5.2

ゴルフはスポーツのなかでも、とくに意図した動きができないといわれる。
その原因が「細胞や脳に関係する」とわかり、自身も素早く100切りを達成した研究結果をレポート。
レベルアップを目指すゴルファーに新しい上達のヒントをもたらす!

※「MOS」とは「memory of the senses」の略で、距離感やフェースの状態などを具体的な感覚量として“小脳で記憶”すること。高い再現性を得ようという新しい理論

フェースの方向に球が飛び出すのは本当か?

フェースの方向に球が飛ぶのは本当…?“新飛球法則”を研究者が解説!
9種類の弾道分類の真価が発揮されるのは、恐らく、なぜ意図しない結果になってしまったのか見当がつかないビギナーだろう。しかし、結果を見てスイングを部分修正しても本当の解決にはならない。必要なのは絶対に狙ったところに打つという意思とインバースキネマティックスによる正しいフェースコントロールだ。

話が複雑になるため詳しい説明は避けていましたが、出球の方向はフェース方向であるという話をしてきました。しかし、実際はフェースをターゲット方向に向けてインテンショナルスライスを打ったときは、出球方向はやや左に出て右に戻ってくる弾道になります。では、フェースの方向に打ち出されるのは間違っているのかというと、物理法則としてフェースの法線方向に垂直に打ち出されるのは間違いではないのですが、フェースがスライドしているとこのような現象が起こります。

よくある物理の例えになぞらえて、鉄橋の上を走る列車からボールを落としたときのことを考えてみましょう。落した当人から見ればボールは真下に落ちているように見えますが、ボールも列車に乗っているので鉄橋の脇から見ている観察者からは、ボールには横方向移動が加わり放物線を描くように落下して見えるはずです(イラスト/放物線)。

これはゴルフのインパクトでもまったく一緒で、真うしろから打った場合以外は、なにかしらの横方向のスライドが入り、短時間とはいえボールは潰され変形し、フェース面に留まり横移動が与えらます。このときスライドの速度と量に依存して、スライドした向きに斜めに打ち出されることになるのです。

当然、このようなスライドによる出球のかたよりは、テニスのトップスピンやスライス(逆回転)を打つ際にも生じていて、たとえばトップスピンでは、上方スライドの影響で持ち上げられて弾道が意図したものより高くなるのですが、これを考慮してフェースの仰角をわずかに抑えることをほぼ無意識で行なって、求める弾道を打っています。こういった経験に基づいた無意識の出球方向の調整は、自然に行なわれているものなので、打っている当人は「ボールはフェースの方向に打ち出されている」と考えているところはあると思います。

新飛球法則によって やっと正された挙動解釈

さて、テニスのそれとは異なり、ゴルフではボールはスイング軌道方向に打ち出されるものだとされていて、レッスン本などでイラストのような図を1度は目にしたことがあると思います。ゴルフの弾道は「プル・ストレート・プッシュ」の3種類、出球方向はそれぞれの弾道に対して「フック・ストレート・スライス」の3種類、計9パターンがあるとされ、9弾道法則(9 Ball Flight Laws)と呼ばれています。

ここでの弾道法則というのは「ボールはスイング軌道の方向に打ち出されるものである」。そして「ボールの曲がりはフェースの向きによって決まる(フェースの方向には打ち出されない)」となっています。前号で触れた一般的なインテンショナルスライスもこれを前提としていて、ターゲットの左方向にスタンスを向け、フェースだけをターゲットに向けることで、スタンス方向に打ち出されたボールにスライスがかかり、曲がって戻ってくるとされています。ところが、ハイスピードカメラや計測機器の進歩によってフェースとボールの挙動があきらかになり、最近になって9弾道法則が完全否定されるようになりました。スイング軌道方向にボールが打ち出されるというのは、じつは正しくなく、ボールはフェースの法線方向に打ち出されていたのです。そこで修正を加えて登場するのが新飛球法則(New Ball Flight Laws)なる ものです。9つの弾道パターンはそのままですが、基本法則が見直されていて「球はフェースの方向に打ち出される」「球の曲りはフェースの向きとクラブ軌道の角度差で決まる」という基本原理が適用されます。

そもそも9弾道法則は、フェースがコントロールできないビギナーのための指針という印象なのであまり興味はなかったのですが、新飛球法則になると本連載で繰り返し説明してきたインパクトの三要素「フェースの方向にボールは打ち出される」「スライド方向とスライド量でスピン方向と強度が決まる」と同じことをいっているのがわかりました。ただ「スピンはフェースの向きとクラブ軌道の角度差で決まる」という部分は観念的でわかりにくいので、やはり「スピンはスライド方向、スライド量で決まる」と言い換えたほうがシンプルで理解しやすいと思います。なお、巷ではこの新飛球法則が出てきたことで、これまでの前提が変わりゴルフレッスンに大きな影響を与えるという人もいますが、新飛球法則が示していることはテニスでは常識であり、私にとっては何を今さら、というところはあります。しかし、これを機にまかりとおってきた机上論が一気に訂正され、ゴルフの理論や上達法がさらに洗練されたのは、非常にプラスになったと思います。

さて、今回はインテンショナルスライスでは飛球線より左側に、インテンショナルフックで飛球線の右側に実際は打ち出されていることを確認しました。スポーツ、ゴルフも物理学ではあるので、正しい挙動の理解というのは極めて重要なのです。

いかがでしたか?ぜひサンドラー博士の解説を参考に、クラブとボールの挙動を理解しゴルフの上達に繋げてみてください。

イラスト・文 = サンドラー博士

●ゴルフ好きの研究者 。ゴルフの専門家ではないが、ゴルフ理論は「教える側」という「外側からの視点で組み立てられているから難しい」ということに気づいてからは、「それをどう解決するか」の研究に没頭。出た答えを多くのアマチュアに伝えたく、毎月レポートする。

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